元「光GENJI」大沢樹生が語るグループ脱退と事務所退所「墓場まで持っていく話」

大沢樹生 撮影/佐賀章広

光GENJIのメンバーとして一世を風靡した大沢樹生さん。現在は俳優や歌手として活躍中だが、ここ数年、突如、東京・北区区長選に出馬するなど世間を賑わせた。出馬の真相や、その後に訪れた心身の変化、そして、55歳のいま、大沢さんが語るTHE CHANGEとは。【第2回/全5回】

きれいごとだけでは済まない現実もあった

今年で芸歴42年。光GENJIとしてデビューすると、一躍国民的スターに登りつめた大沢樹生さん。アイドルのトップに立つも、7年後には光GENJIを脱退。同時に事務所も退所し、俳優業・歌手活動に邁進した。ときおり私生活で好奇の目にさらされることがありつつも、近年は映画監督にも挑戦し高評価を得るなど、多彩な一面を開花させている。

もちろん、きれいごとだけでは済まない現実もあった。

「事務所を辞めたあと、やっぱりまったく仕事がないときもありましたが、大なり小なり、オファーをいただいた仕事は受けて、全力でやりきり、評価をいただき、常に次に繋げていくものだと思っています」

ーースポットライトを浴びていた場所から一転した、その落差、私たちには想像を絶するものです。

「自分で決断してその道へ行っているので、それはもう、しょうがないですよね。そういうときは、家族であり、長年ともにしてきたスタッフであり、そのときどきで支えてくださる人もいて、とてもありがたいです」

ーー大沢さんほどの方になると、支えてくれる人のほかに、いい顔をして近づいている輩もいると思います。

「僕は結構、信用しやすい方なので、利用されたり騙されたりはありましたけど、そういう人はだいたいわかりますよね。まあ、やっぱりあまり手を広げないことですね、よくわからないですけど(笑)」

そして「これまで、“やられた!”となった出来事はありましたか?」とおそるおそる聞くと、大沢さんはマネージャーさんに「もう時効だからいいよね?」とことわりを入れ、話し始めた。

「たとえば、自分は映画監督を2作品やらせてもらっているんですけど、クランクイン2日前に制作費が出資されないことが確実になるという、ハシゴを外されたり、ですかね」

クランクイン2日前にハシゴを外された

大沢さんは2015年に元光GENJIの諸星和己さんとW主演を果たした『鷲と鷹』と、2016年公開映画『THE ACTORージ・アクターー』で監督を務めているが、後者でトラブルが起きていたというのだ。出資者が音信不通となり、消えたのである。

「ずっと“この日までにお金を振り込む”と言われ続けて、先延ばしになり、クランクインがもう2日後に迫るまでになっていた。それで最終的に電話で、“振り込めない”と言われました」

ーーなぜ出資者はそんな動きをしたんでしょう。

「僕を潰そうとしたんじゃないでしょうか。ただ、僕たちも落ち度はあります。契約書を交わしていなかったし、お金をいただいてから進めなきゃいけなかった。それで、もうスタッフも準備に動いているし、役者も抑えている状況でした。そんな、クランクイン2日前にハシゴを外されたとあって、スタッフに冗談半分で“そのロープ、かけられそうなところあるかな?”なんて言ったら“いやいや、そんな場所ないです!”と言われて。ということは、諦めずになんとかしろということなんだ、となったんです」

立ち止まることも、投げ出すことも不可能な状況で、大沢さんは踏ん張ったのだ。

「短い時間で考えて、じゃあこうしようと。予算を大幅に減らして、ロケ地も減らして、極力経費を削るように進めたんです」

ーーそれでなんとか撮影を開始して?

「はい、なんとかクランクインできる状況にはなりましたが、当初の予算の3分の1くらいになってしまいましたね」

ーーその予算も自分たちで工面したんですよね。

「そうですね、僕と会社のスタッフで工面しました。そして撮影スタッフの方に台本を書き直してもらってね」

ーーみなさん、助けてくださったんですね。撮影に入ってからは順調に進みましたか?

「まあ、なんとか。事情を知っているのは一部のスタッフだけで、技術スタッフや俳優さんには事情は話していないし、そのあたりは見せずにやりきって。協力してくれた映画会社もありました」

裏切られても、裏切る側にはなりたくない

ハシゴを外した相手とは「それっきり会ってもいないし、連絡も取っていない」と話す大沢さんは「その出来事がいちばんパッと思い浮かんだ、“やられた!”ですね」と続ける。

ーーということは、きっとお話できないことはたくさんありますよね。

「そうですね。最近は暴露とか告発をされる方が多いですが、僕は墓場まで持っていきます」

ーー墓場まで持っていく話、一体いくつあるんでしょう。

「まあ……数個です。でも別に、根に持ったりしていないです。そのときはキツいですけど、そんなところにエネルギーを使うよりも、もっと前を見なければいけないから。映画のこともそうです。もちろんショックでしたが、そのあと編集作業もしなきゃいけなかったし、公開されるまでやることはたくさんあった。お金を払わなかった人のことを考えてもしょうがないんです」

ーー仕事をするうえで信頼関係はもっとも大切ですし、まず“信じる”がないと人は動かないこともあります。そのバランスをどうやって取っていますか?

「難しいですよね。僕はバランスを取ろうとか、計算をしたこともないですけど、でも、裏切られても、裏切る側にはなりたくないです」

「“次、行こう”マインドですよ」と話す大沢さん。いくつもの修羅場をくぐってきたことなど微塵も見せない爽やかな表情は、内にも秘めた美しさがにじみ出ているようだった。

大沢樹生(おおさわ・みきお)
1969年4月20日生まれ、東京都出身。1982年にジャニーズ事務所に所属すると、1987年に光GENJIのメンバーとしてレコードデビュー。1994年に光GENJIを脱退。俳優やミュージシャンとして活動。2006年に自身の会社を設立し、映画制作業にも乗り出す。2022年11月に東京・北区区長選挙への出馬を表明するも、翌4月5日に不出馬を表明した。

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