「ゆっくり見れば見るほど発見が」イッタラ展特集その2 デザイナーとガラス職人

日本でも人気の高い、イッタラの展覧会が高知市の高知県立美術館で開かれています。からふるではその魅力を3日間にわたってお伝えしています。2日目は『デザイナーとガラス職人』です。

1881年、フィンランドのイッタラ村にあるガラス工場で誕生したイッタラ。140年を超える歴史は、伝統的なガラス職人の技術と、時代を象徴する優れたデザイナーによるデザインの融合とともにありました。

イッタラを代表する作品の一つ、『アアルト・ベース』。デザインしたアルヴァ・アアルトは、フィンランドを代表する建築家であり、デザイナーでもありました。ガラス彫刻家だったティモ・サルパネヴァは、ガラス職人とともに工場に詰め、寝る間も惜しんで制作に没頭したといいます。イッタラを象徴する『i(アイ)‐ロゴ』を考案したのも彼です。

(県立美術館 長山美緒 主任学芸員)
「比較的身近なガラス製品、ガラス作品が展示してあることもありますし、同じデザイナーでもこのデザイナーはこのデザインもしてたんだという部分もあるかと思うのでゆっくり見れば見るほど、発見があるのではないかと思います」

会場では、イッタラのものづくりの原点を見ることもできます。

ガラスはエジプトやメソポタミアで発展し、フィンランドに製造技術がもたらされたのは18世紀でした。1881年にイッタラ社が創立したときにはすでに数十か所の小さなガラス工房があり、イッタラにも熟練した職人がやってきました。

どんなに美しいものでも、ガラスの性質上、表現することができないデザインもあります。イッタラのデザイナーたちはガラス職人とのコミュニケーションを大切にし、ガラスならではのデザインを発展させてきました。そしてデザイナーの思い描くイメージを、ガラス職人が形にしてきました。

こちらは、ガラス作品を作るための型です。型の内部にガラスを吹き込むことで形を作り、表面の質感が生まれます。イッタラの工場には型をつくる専用の職人がいるといいます。

型は、伝統的な木製のものと、耐久性のあるスチール製やグラファイト製のものがあり、同じ作品でも、型によって表情が変わります。ひとつひとつの作品がどのように作られているかを知ることができる、貴重な展示です。

(県立美術館 長山美緒 主任学芸員)
「なかなか自分の家で使うのは難しい部分があるかもしれないが、例え揃いでなくても一つ気に入った作品で日々過ごしていただくというのもちょっとした贅沢かなと思うので、そういった目で見ていただくのも身近に感じていただけるんじゃないかなと思います」

こちらのシリーズは『バード バイ トイッカ』。フィンランド出身の画家でデザイナーのオイバ・トイッカが1972年に最初の鳥を誕生させました。数々の作品を世に送り出してきたイッタラでは、カラーガラスを作る技術が優れていて、そこにトイッカの芸術的な創造性が融合して生まれた作品です。

制作は、チームで行われています。ひとりひとりの職人の専門知識、特殊技術をいかして、作品に命が吹き込まれます。実在の鳥と、創作の鳥をモチーフに、現在までにあわせておよそ500種類が制作されていて、会場では作品の製作工程を知ることができます。

『イッタラ展フィンランドガラスのきらめき』は高知県立美術館で6月16日まで開かれています。

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