姫路城、外国人の入城者数は不正確? 配ったパンフでざっくり計算 他の観光地も把握に苦慮

桜が満開となった4月上旬。姫路城周辺は訪日客の姿が目立った=姫路市本町

 多くのインバウンド(訪日客)でにぎわう世界文化遺産・国宝姫路城(姫路市本町)で、実は正確な外国人入城者数が集計できていないことが隠れた課題となっている。市は外国語パンフレットの配布数を入城者数として公表しているが、家族連れが1枚しか手にしなければ「1人」と数えており「数字は正しいとは言えない」と市担当者。訪日客誘致の戦略に関わる重要な統計だが、名城がある他の自治体も同様の悩みを抱えており、解決策は見つかっていない。(田中宏樹)

 桜が見頃を迎えた4月上旬、姫路城は多くの訪日客の姿が見られた。大半は入城口横で英語や中国語などのパンフレットを手にするが、気付かずそのまま通り過ぎる外国人もいる。「グループで1、2枚しか取らない人もいる」。市姫路城管理事務所の遠周重樹所長(52)が声を落とす。

 日本人を含む全入城者数は有料券を基に算出しており、2023年度の147万9567人は正しい数字だ。一方で訪日客については4カ国語(英語、中国語、フランス語、韓国語)のパンフレット配布数を外国人入城者数として公表。23年度は45万2300人で過去最多を更新したものの、正確な人数とは言い難い。

 「混雑時に職員が目視で数えるのは難しい」と遠周所長。「一人一人のパスポートを確認すれば、さらに混雑しかねず、現実的でない。現状は良い策を見つけられていない」と漏らす。

 城を抱える他の観光地も、訪日客数の把握に苦心する。熊本市の熊本城では、入城券の購入者らが話す言葉や外見を基に、券売所の係員が集計する。ただ外国人と日本人が両方いるグループ客で、日本人が代表して券を買った場合は訪日客数に含められないという。

 23年度は外国人入城者数が約25万2500人と全体の約2割を占めたが、「肌感覚ではもっと多い」と同市熊本城総合事務所の担当者。「誘客に力を入れる中、情報発信のターゲットを定めるためにも正確な数字は必要だが…」と話す。

 長野県松本市の国宝・松本城も、配布したパンフレットの種類や入城者が使う言葉で判断し、外国人数をまとめている。同市松本城管理課の担当者は「集計の精度を高められる改善策は考えていきたい」とする。

 姫路市は、25年に控える大阪・関西万博や瀬戸内国際芸術祭を好機と捉え、さらなる訪日客誘致を目指している真っ最中。海外に向けて市の情報を発信する「姫路観光コンベンションビューロー」の浦上正寛さん(43)は「正しい人数のほか地域別の内訳も分かれば、効果的な観光PRに生かすことができる」と正確な統計の必要性を強調する。

© 株式会社神戸新聞社