没後15年【5月2日は忌野清志郎の命日】いつまでもキヨシローに頼るんじゃない!  5月2日は忌野清志郎の命日です。バンドマンであり続けたキヨシローの魅力を解説

常にバンドマンであり続けた忌野清志郎

5月2日は忌野清志郎の命日。清志郎が彼の地へ旅立って15年が経ったが、その影響力が衰えることはない。今も世の中に不穏な空気が流れると、「こんな時、清志郎ならどんな発言をするのだろう?」というようなコメントをSNSで見かけたりする。

時にはシニカルに、世の中の矛盾を突く的を射た発言は、多くの人の心の拠り所になっているだろう。確かにこういった側面も魅力であるが、清志郎は常に、当事者であれ、自発的であれと促していたはずだ。だから僕は “そんなに清志郎に頼るんじゃない” とも思ってしまう。それと同時に清志郎は常にバンドマンであり続けた。その本質をしっかりと感じ取っていたいとも思う。

清志郎は生涯 “バンドマン” という呼称にこだわり続けた。シンガーでも、ミュージシャンでもない。バンドマンだ。RCサクセションをキャリアのスタートとして、活動休止後のザ・タイマーズ(以下:タイマーズ)にしても2・3'sにしてもLittle Screaming Revueにしても圧倒的なバンドサウンドであったし、それぞれのグルーヴの中で清志郎のヴォーカルは、多彩な表情を見せた。タイマーズで行動を共にしたベーシスト、“BOBBY” こと川上剛は、そんな “バンドマン清志郎” について、以前、こんなことを語っていた。

「初めてのタイマーズのライブの時、興奮気味だった僕と章ちゃん( “PAH” こと杉山章二丸 / Dr)のリズム隊のテンポが走ってしまった。これはマズいと思って終演後にボス(清志郎)に謝りに行った。 “スミマセン、今日走っちゃいました!” と。そうしたらボスは “何言ってんだ。バンドだから一緒に走ろうぜ!” と言ってくれてね…」

これが清志郎の本質だ。川上はこの時、清志郎に一生ついて行こうと思ったそうだ。

叫びたい言葉があって、聴いて欲しいメロディがある

1988年、RCサクセション名義でリリースされたカバーアルバム『COVERS』の発売中止騒動をきっかけに清志郎は、RCサクセションでは歌えないことを、出来ないことを… という思いからタイマーズを結成する。政治的な批判も含めたラジカルなタイマーズの歌詞は社会現象として取り上げられ注目を浴びるが、やはりそこには歌詞を際立たせるメロディ、そして、音楽で自分たちのアティテュードを示すというバンドマンの矜持があった。そうやってタイマーズは走り出した。

“曲先” “詞先” という言葉があるように、多くのソングライターはメロディと歌詞を別々に作り上げる。しかし清志郎は、メロディと歌詞が同時に浮かび上がるという。叫びたい言葉があって、聴いて欲しいメロディがある。そこにバンドのグルーヴがあって、転がり続けていく。これが清志郎というバンドマンだ。

バンドマンの軌跡をたっぷりと堪能できるベストアルバム

2024年3月6日に発売されたベストアルバム『忌野清志郎 / ロックン・ロール~Beat, Groove and Alternate~』にはそんな清志郎のバンドマンの軌跡をたっぷりと堪能できる1枚になっている。

CMソングにもなり、日本中の誰もが知っているモンキーズの日本語カバー「デイ・ドリーム・ビリーバー」で感じることができる儚くも美しい普遍的な愛の世界も、生前最後のスタジオアルバム『夢助』に収録され、盟友チャボ(仲井戸麗市)との共作「激しい雨」の “RCサクセションがきこえる” という、この時期に敢えてのフレーズも、そこには聴かせたい歌をダイレクトに届ける清志郎の姿があった。

そして、タイマーズや2・3's、Little Screaming Revueはもちろん、海外ミュージシャンとの共演作にも注目だ。古くは、ロンドンへ渡りブロックヘッズのメンバーや元クラッシュのトッパー・ヒードンらと作り上げた『RAZOR SHARP』からの収録曲、「RAZOR SHARP・キレル奴」や、清志郎が敬愛するブッカー・T&ザ・MG’sと共演を果たした名盤『Memphis』からの「カモナ・ベイビー」など、グルーヴに身を任せながら圧倒的な存在感を見せる清志郎の凄みをたっぷりと感じ取って欲しい。

心のドアをノックし続ける清志郎

RCサクセションを離れても、清志郎はバンドにこだわり、バンドを愛し続けた。そうやって、常に当事者としてあらゆる事象と向き合いながら旅を続けていたのだと思う。名曲「JUMP」の中で清志郎はこんな風に歌っている。

 Oh くたばっちまう前に 旅に出よう  Oh もしかしたら君に会えるね

僕らは人生という旅の途中で清志郎に出会った。そして、その歌声は今も頭の中でも、心の奥でも響き続けている。そしてその声は当事者であれ、自発的であれと心のドアをノックし続けている。

カタリベ: 本田隆

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