JO1 川西拓実、『バジーノイズ』に乗せた音楽への思い 「1人で歌うことの大変さが改めて分かりました」

川西拓実 クランクイン! 写真:小川遼

映画『バジーノイズ』が5月3日に公開となる。人と関わることもなく音楽だけに没頭する清澄(川西拓実)。そんな彼の閉じた世界が、清澄の音楽に惹(ひ)かれたという潮(桜田ひより)と出会ったことで少しずつ変化していく。呼吸をするように流れる音楽、みずみずしい映像が乾いた心にスッとしみ込んでいくような作品だ。繊細な清澄の心情を丁寧に演じていたのが印象的な川西。映画公開を控えた現在の心境、そして作品が彼に与えたインパクトについて聞いた。

■最高の音楽映画になったと思います

――映画の公開を控えた、今のお気持ちを教えてください。

川西:率直にすごく楽しみな気持ちが一番ですね。初めての主演映画なので、たくさんの方に届いてほしいですし、「見て後悔させない」という自信もあるので、皆さんに楽しんでいただけたらうれしいです。

――川西さんご自身は、完成した作品を見られていかがでしたか?

川西:演技をしている自分が映画のスクリーンに映っている姿を見るのは初めての経験だったので、最初は少し恥ずかしさもありました。でも、客観的に見ても映画としてすごく面白かったですし、音楽も素晴らしくて。音楽がかかるタイミングも映画とマッチしているんですよね。最高の音楽映画になったと思います。

――作品を見られて、新たにご自身の発見やギャップはありましたか?

川西:映画に限った話じゃないんですけど、映像って自分が思っている表情とちょっと違ったりしません?

――それは確かに。びっくりすることもありますよね。

川西:それをお仕事している上で感じていて。僕は片方の口角が上がってしまうことが多くて、それがちょっと出ていたなという発見がありました(笑)。でも、あまり自分を見ている…川西拓実とは思わなかったというか。

――出演作品として見るというよりも、一つの映像作品として見ていた?

川西:そうですね。僕のファンの方たちも、川西拓実のファンとして見るんじゃなくて、一つの作品として楽しんでいただきたいなと思っています。

――改めて、清澄を演じてみていかがでしたか。

川西:清澄はあまり言葉にして気持ちを伝えるタイプじゃないので、目の動きや表情で自分の思いを伝えるシーンが多かったんです。僕は伝えるときはしっかり言葉にして伝えるので、そこは難しかったですね。でも、僕も昔はわりと殻にこもっていた時期もあって。だからこそ、清澄がどういうことで悩んで、どんな痛みがあるのか理解できたので役には入りやすかったです。

■「本当に泣きそうになりました」最後のライブシーン

――「音楽映画」という言葉が先ほど川西さんからもありました。作曲や演奏シーンもありますが、大変だったこと、おもしろかったことはありますか?

川西:キーボードとドラムパットの練習を2~3ヵ月ぐらいしていたんですけど、やったことがなかったので難しかったですね。特にキーボードは、普段使わない指を動かすのが本当に難しくて…。めちゃめちゃ苦戦したんですけど、なんとかできました。

僕自身、作曲の勉強をしているので、キーボードもドラムパッドも今後に生かせそうだなと思っています。アーティストとしてやっていく上ですごく良い機会になりましたし、また新しい考え方ができるようになりましたね。

――ライブシーンも印象的ですよね。こだわって撮影されているんだろうなと。

川西:めちゃめちゃこだわってます! 演奏の仕方にも本当にいろいろな意味が込められているんです。例えば、わざとキーボードを交差して弾くシーンがあるんですけど、それは清澄と潮が重なっていくのをイメージして作ってくださっていて。そういうところはすごくオシャレな弾き方をしているし、客観的に見たときに格好いいなって。

――ライブに集中すると、感情面での演技も大変そうですね。そのあたりの演技の難しさは感じられましたか?

川西:弾きながら、そして歌いながらお芝居をしなくてはいけなかったので、本当に難しいの一言です。でも、最後のライブのシーンは「これが最後です」って言われてやったんですけど、「ここまで何回も練習してきたな」とか、いろいろな思いがよみがえってきて本当に泣きそうになりました。そこで泣いちゃダメなんですけど、目が潤んでいたのが(劇中で)ちょうど使われていて。それはそれで、そのときの清澄の感情と重なってよかったのかなと思っています。

――そんな清澄として、主題歌も担当されています。ご自身が歌われる「surge」について教えてください。

川西:(少し食い気味に)いや、いい曲だな、と思いました! さすがYaffleさん! って。JO1では11人で歌うことが当たり前だったので、1人で歌うことの大変さが改めて分かりました。自分の実力が足りない部分が見えてきたので、今後の成長にもつながる機会になりましたね。もちろん「surge」は完璧に録れたんですけどね…!

――本作は清澄の成長していく姿が印象的です。その成長にはさまざま要因があると思うんですが、川西さんご自身は、成長するのにどんなことが必要不可欠だと思われますか。

川西:やっぱり挑戦することですね。新しいことや苦手なことに挑戦しているときって、成長する何かを手にすることができるチャンスだと思うんです。例えば、僕トマトが嫌いなんですけど、頑張って一口トマトを食べてみるとか(笑)。本当に何かすごく小さなことでいいかなと思います。

――ちなみに、トマトを食べてみて変わった点はありますか?

川西:本当に味が昔からダメで。ピザに入っているトマトも嫌だったんですけど、最近は食べられるようになってきました。

――確かに成長されていますね…! 今回の作品も一つの挑戦かと思うんですけど、成長できた、変化できたなと思われる点はありましたか?

川西:成長したって自分で自信を持って言えることはないんですけど、お芝居をすることの楽しさや大変さを知りましたね。難しいからこそ、僕はすごく興味が湧いたし、これからも演技をやっていきたいなと思えました。

――最後に。「音楽だけがあればいい」という清澄のセリフがありますが、川西さんにとって「これだけがあればいい」というものについて教えていただきたいです。

川西:僕も音楽かもしれないですね。本当に常に聴いています。常に近くにあるもので、歌っていますし、聴いています。それこそ、こういう作品でも音楽があるのとないのとでは感情の入り方が違うなと思っていて。街でも音楽は流れていますし、音楽って大切だなと思います。

――この作品でも改めてその存在の大きさを感じられたんですね。

川西:そうですね。自分の好きな音楽をこれからも作っていきたいなと思わせてくれた大事な作品になりました。

(取材・文=ふくだりょうこ 写真=小川遼)

映画『バジーノイズ』は、5月3日より全国公開。

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