【復興臨時支局・飯舘村編】小さな花見山に福島県内外から見物人 多田直正さん宅

新たにアジサイの苗を植える多田さん。地域を花で彩り、古里の景観を守る思いを持つ

 小さな花見山―。スイセンやハナモモ、アジサイ、レンゲソウ、サクラなどが植えられた福島県飯舘村草野の多田直正さん(73)宅の敷地は地域住民らに、そう呼ばれている。県内外から見物人が訪れている。多田さんは「地元の活性化に役立ててうれしい」と話し、手入れに励んでいる。

 敷地は2013(平成25)年6月から半年ほどかけて除染された。村内の工場に勤務しながら花卉(かき)などを栽培していた畑では表土が削り取られ、殺風景になってしまった。

 「(何か植えないと)土地が荒れてしまう」。8年ほど前に花を植え始めた。庭に残ったスイセンを株分けし、敷地内に植栽していった。年々、花の種類が豊富となり、約2ヘクタールの広さを彩っている。4月中旬には色彩豊かな光景が人々を引き付け、県内や仙台市などから約50人が足を運んだという。

 1日には畑にアジサイの苗を植えた。さらに今後は、持ち主が村外に避難し、手つかずとなっている近隣の畑でも花を育てたいと考えている。「数年後には、もっと立派になるだろう」と将来の風景に思いをはせた。

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