国立公園内の悪質スノーモービル対策難しく 青森県内 4月初摘発も「立件のハードル低くない」

十和田八幡平国立公園に設置されたスノーモービルの乗り入れ規制区域を示す看板(環境省提供)

 十和田八幡平国立公園の特別保護地区にスノーモービルで進入したとして、自然公園法違反容疑で津軽地方の男10人が書類送検された事件。毎年、青森県内の国立公園や国定公園でスノーモービルの悪質走行が目撃されているものの、乗り入れによる摘発は今回が初めてだった。環境省十和田八幡平国立公園管理事務所や県自然保護課、県警などの関係機関が1日、県庁で開いた対策会議では、広大な国立公園内での取り締まりや広報啓発の難しさが明らかになった。

 県警が4月26日に摘発したのは弘前市、黒石市、つがる市の男10人。男らは動画投稿サイト「ユーチューブ」やインスタグラムに走行の様子を公開していた。この動画を見た人が県に情報提供し、事件が発覚。県警は投稿者から事情を聴くなどして人物や発生日時を特定し、摘発につなげた。

 県によると、十和田八幡平国立公園や津軽国定公園の特別保護地区にあたる岩木山山頂付近での悪質走行に関する情報は毎年数件寄せられている。だが「立件のハードルは低くない」と県警生活保安課の佐藤伸一課長。青森県、秋田、岩手の3県にまたがる十和田八幡平国立公園は、今回進入があった十和田八甲田地域だけでも面積は約4万5千ヘクタールと広大。大半が車両乗り入れの規制区域で悪質走行を見つけ出すのは困難だ。

 仮に目撃者が動画や写真を撮影してもスノーモービルはナンバープレートがなく、特定には時間を要する。佐藤課長は「画像1枚では特定は難しい。複数の情報を組み合わせなければならない」と語る。

 この日の会議では、悪質走行の予防策について情報交換した。同公園内には乗り入れ禁止などを示す看板15基を環境省が設置している。だが、ありのままの自然を残す国立公園という特性上、「景観を害する」「看板が多すぎる」との声が寄せられているという。それだけに「むやみに看板を増やせない。犯罪抑止と景観保護のバランスをどう取るかだ」と担当者は苦しい胸の内を明かした。

 そんな中、県警は今回の摘発を追い風に関係団体の連携を強化し、再発防止につなげたい考えだ。冬に向けてスノーモービル販売店を対象にした周知活動や関係機関による合同パトロールで乗り入れ禁止を呼びかけていく。

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