【新装開店!ホンダ コレクションホール探訪④】乗る人の夢を叶えるために、斬新なデザインと性能向上に挑んだ時代:1980~90年代(3階南フロア)

ホンダの聖地のひとつ、ホンダコレクションホールが3月1日にリニューアルオープンした。その見どころを、6回に分けてお伝えする。パート3は2階の北フロアの展示内容について。デザイン性、実用性の新たな提案とともに「乗る人の夢を叶える」ためのスポーツカー開発に取り組んだ時代を、レポートする。

個性的なデザインを追求しながら「スポーツ」にも新機軸

「信頼性の極限」を象徴するモデルとして、真っ先に登場するのが初代レジェンド(写真は1985年式)だ。ホンダが謳う「初めてのフラッグシップ」に、国産車初のエアバッグシステムを搭載された。

第3幕は1985年に登場したホンダ初のフラッグシップたるレジェンドから始まる。

直4エンジンのみだったホンダが高級車へのステップとしてV6をチョイス。背景にはイギリスのBL(ブリティッシュレイランド)との提携に加え、アメリカでのアキュラブランドでの展開があった。このV6がその後のホンダをリードすることとなる。

次の展示は85年登場のアコードだ。リトラクタブルヘッドライトを採用してスポーティに仕立てていた。

3代目のアコードに設定された「エアロデッキ」は、ワゴンとは思えない端麗なスタイリングを実現していた。

ロングルーフでリアハッチを備えたシューティングブレーク風のエアロデッキともども個性が光っていた。アコードはアメリカのオハイオ工場でも生産され現地でも大人気となり、その後もクラスリーダーたり続けている。

そして90年にスーパーカー然としたNSXが現れる。ここで「開放するスポーツ」と謳うように、ホンダは誰もが乗れる快適な高性能車を作り上げた。

手前は1992年式のNSX-R。ただでさえ軽量なNSXをさらに徹底的に軽量化を進め、「軽さ」がどれほど走行性能に影響を与えるか・・・を追求した。まさに「ピュアスポーツ」の魂が息づく。

トランクやATの設定がそれを物語る。オールアルミボディの採用や、92年に追加されたタイプRなど話題に事欠かなかった。

そばにはNSXのGT仕様とグループA仕様シビックが並び、サーキットとイメージをオーバーラップさせている。そこには「夢を叶える」と記されていた。

ピュアスポーツカーであるNSXによるル・マン24時間レースへの挑戦は、市販モデルのオーナーが自分の愛車が「世界最高のスポーツカーである」ことを証明する「夢」に挑む戦いでもあった。

「生活を創造する」移動車両の新提案。そしてタイプRが・・・

ホンダの新たな展開を見せるのが次の一画、“クリエイティブムーバー”だ。

空前のRVブームに沸いていた90年代初頭の日本にあってホンダは、新しいファミリーカーの形を提案する「クリエイティブムーバー」を生み出した。低床設計など、驚くほど広く快適な室内空間は、さまざまな「カタチ」でその支持層を拡げていく。

94年登場のオデッセイはホンダ車として初の多人数乗車モデルとして、95年のCR-Vは初のクロカン4WDとして、96年のステップワゴンは初のミニバンとして相次いでリリース。ホンダ車に新たな地平を拓いたモデルたちである。

ホンダスポーツとしての極みが90年代後半に相次ぐ。それは出口近くに並ぶ。

まずは95年のインテグラ・タイプR。入念に組まれた1.8Lは200psを発揮し40kgの軽量化や専用サスペンションでスポーツカーに仕立てていた。この手法は97年のシビック・タイプRにも1.6Lで185psというスペックで受け継がれる。

インテグラ タイプR(1995年式)。「タイプR」の称号を、ライトウェイトクラスにも展開拡大。ホンダにとって伝統とも言える「FFスポーツ」としての理想を追求していく。
シビック タイプR(1997年式)。ホンダを代表するファミリーハッチバックにも、タイプRが設定された。NAエンジンながらパワーはリッターあたり116psに達し、低重心化やボディ剛性の向上などこだわりの純正チューニングが施されていた。
1999年にデビューしたS2000。ホンダファン待望のFR2シータースポーツは、1970年まで販売されたホンダS800以来のものだった。パワートレーンは2Lの直4DOHC VTECのF20C型で、1Lあたり125psというレーシングエンジン並みの性能を発生していた。

そして真打、99年登場のS2000である。かつてのSシリーズ以来のFRオープン2シーター、2Lで250psのパワーを6MTで引き出す醍醐味はホンダファンを大いに魅了した。

バイクは「レースを公道へ」で一世を風靡したNSR250、スーパースポーツのCBR900RR、長円形ピストン採用のV4マシンNR500、ビッグバイクのCB1000フォアと高性能マシンが揃う。加えてスクータータイプのPS250や、スタイリッシュな原付のソロなど身近なモデルも顔を揃えている。

バブル経済を挟んだ80~90年代はホンダにとっては新たな価値観を求めた時代でもあった。50周年記念で生まれたS2000はひとつの区切りだったのかもしれない。(文:河原良雄/写真:伊藤嘉啓/写真解説:Webモーターマガジン編集部)

独創的な楕円ピストンを採用した4ストロークV型4気筒エンジンで、2ストロークレーシングマシンに挑戦した「NR500」の市販モデルが「NR」(1992年型)。炭素繊維強化樹脂のボディカウルなど、軽量化も徹底されていた。

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