今井翼、音楽と共に示すエンターテイナーとしての人生 「Venus」などセルフカバーも披露したワンマン公演

4月26日、KT Zepp Yokohamaにて今井翼がワンマンライブ『ROUTE283』を行なった。同公演は今井翼にとって約2年半ぶりのライブ。先日公開されたインタビュー内で「今回のライブのテーマとして、“ファンと歩んできたこれまでの道を、歩みを止めずに辿る”というのが1つのポイントになっています」と語っていた今井。そんな彼の軌跡が詰まったライブをレポートする。

開演前、すでに客席から「翼コール」が鳴り響き、一刻も早く今井がステージに立つ姿を見たいという気持ちがひしひしと伝わってきた。そんな中、暗転してオープニングSEが終わると、ステージ中央に白いスーツにサングラスをかけた今井が登場する。「Never Ever」がスタートした途端、歓声はさらに大きくなっていく。今井も久しぶりのステージを心から楽しんでいるような笑顔を見せ、丁寧に歌い上げた。続いて飛び出したのは、タッキー&翼の「Venus」。スタンドマイクで歌う今井の後ろには女性ダンサー2人がついていたが、彼女たちに勝るとも劣らないキレのあるダンスを披露していたのは流石だ。爽やかな青い照明に切り替わると、「Chance to Dance」と懐かしの楽曲が続く。観客も一緒にクラップをしてこの瞬間を心底楽しんでいる様子。今井から「OK、みんなも一緒に!」という言葉が飛び出すと、〈One time, dance! Dance! Dance!〉で会場中の手が上がってさらに一体感が高まっていた。

鳴り止まない歓声に笑顔になる今井。「ありがとうございます。みんな、ようこそ。こんばんは」と改めて挨拶をし、「(2年半前のライブは)コロナで声が出せなかったけど、今は声も出して、体を揺らして、ともに楽しめる」とワクワクした様子を見せた。「今回は『ROUTE283』ということで、僕の歩いた道を辿ることがテーマになっていまして。デビューしてからの曲だけではなく、デビュー前からやっている曲とか、思い入れのある楽曲も歌わせてもらいます」と期待を高めたところで、「日本一アツい夜にしようよ」とニヤリ。「次のナンバーはデビューしてから大事にしている曲で。2人のナンバーをスローでお届けします」という曲紹介で始まったのは、「愛想曲」(セレナーデ)だ。

バラードアレンジがされており、原曲とはまた違った良さを伝えていく。積み重ねてきたものがある今井だからこその渋みが加わっていたのではないだろうか。ダンサーによるパフォーマンスを挟んで黒のナポレオンジャケット風の衣装の今井がステージに戻ると、ダンス曲が続いていく。まずはヘッドセットマイクにチェンジして、「AXEL」でガシガシ歌って踊る。今井のダンスはとにかく姿勢と所作が凛と美しい。続いたのは、「Get Down」。ガッツリ踊るのはもちろん、軽くステップを踏むだけでもかっこいい。さらに「DO ME CRAZY」、「!Make it Happy!」と続き、観客も一緒に踊って大盛り上がり!

あまりのノリの良さと振りの完璧さに、今井も「すごいですね、みんな」、「言うことないくらい」と観客を称賛。「僕はセットリストを作る時はギフトを選ぶような気持ちで、どうしたらみんなに喜んでもらえるかなと思いながら考えているんですけど、予想を上回るくらいみんなが踊れるんでびっくりです」と笑顔を見せる。ここからはファンとの対話タイム。「Venus」はダンサーに今井自身が振り入れをした話、それにあたってDVDを見返して自宅で練習した話、川野直輝と映画『TELL ME ~hideと見た景色~』で共演する何年か前に偶然会ってカラオケに行きhideの曲を歌った話、『ROUTE283』を毎年行ない、新曲を携えてできるだけ多くの場所を回ることが目標であることなど、客席からの声に答えるようにたっぷりと会話を楽しんでいた。

バンドによるインタールードが終わると、今井はデニムにノースリーブ、サングラスというロックな出で立ちにチェンジ。「みんな、そろそろ行こうか。日本一アツい夜にしようぜ」と再び客席を煽ると、「BACKBORN」が始まる。さらにお馴染みの沢田研二のカバー曲「勝手にしやがれ」、堂本剛提供曲の「虜」と続き、近藤真彦の「愚か者」も情熱的に歌い上げた。

「僕もマッチさんのように長く歌い続けられるように頑張ります」と決意表明をし、「ここからは僕たちの曲でもうちょっとみんなと歌い、踊りたいなと思うんですけど、イケますか?」。会場からレスポンスが返ってくると、「久しぶりに歌います」と「夢物語」がスタートする。イントロで上がったボルテージがさらに上がり、会場が一体となって歌い、踊り、楽しんだところで「もうちょっと2人の曲、行きます!」と「カミラ◆タマラ」が続く。

ペンライトが大きく揺れたところで最後のMCタイムへ。「2年半ぶりにこの日を迎えることに、期待と不安があったんですけど、でも応援してくれている、待っていてくれるファンと大切にしてきたものを大事にしたいという思いで今日は歌わせていただきました」、「生きていれば楽しい時とか、苦しい時とか、色々あるかもしれないけど、必ずこうやって一つになれる時間があるっていうことを忘れないでくれたら嬉しいなと思います」、「僕にとってファンは宝物です」と自身の気持ちを伝えていく。そしてラストは「見果てぬ夢」。あたたかな空気の中、ペンライトが今井へエールを送るかのようにこれでもかと大きく揺れているのが印象的だった。最後は「また必ず会いましょう。愛してます」と投げキスをして、本編に幕を下ろした。

アンコールに応えて再びステージに表れた今井の手には、アコースティックギターが。「一緒にクラップして歌いましょう」と「風の詩」を披露する。さらに「季節は春ですけど、この曲行っちゃいます」と「ひと夏の...」で盛り上がり、ラストは「生きてる証」。最後は「みんながいるから僕がいるわけで。今日、僕たちの歌を何曲か歌わせてもらいましたけど、これも僕にとってずっと忘れない宝物なので。これからも大事にしてくれたら嬉しいなと思います」、「いろんな支えがあって、最高な時間を過ごすことができて。僕の方がみんなにギフトをもらいました。ありがとう」と感謝を伝えてステージを後にした。

インタビューの中で「ライブはずっと応援してくださっているファンの方はもちろん、初めていらっしゃる方も含めてみんなで創り上げて楽しむ空間」と語っていた今井。まさにその言葉を体現した、楽しくもあたたかなライブであった。

(文=高橋梓)

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