岩手県内、運送業者の運賃改善道半ば 運転手残業規制強化1カ月

物流の構図

 トラック運転手の残業規制強化で輸送力の低下が懸念される「物流の2024年問題」を巡り、岩手県内の運送業者が荷主との運賃引き上げ交渉に苦慮している。物価上昇で取引先の経営も厳しさを増す中、人手確保や待遇改善の原資を十分得られずにいる。規制強化から1カ月。長距離輸送を減らすなど工夫を凝らして対応に当たるが、国が掲げる「適正な価格転嫁」は途上にある。

 「引き上げに応じてくれたのは半数ほど。その中でも満額回答はほんの5、6社だった」。家具の配送などを手がける大昭運輸(紫波町)は荷主70社と交渉したが、黒沢信代表取締役は難しさを実感する。現在は関東や関西方面の運行を減らし、限られた人員を県内に振り向けて業務を回す。

 運転手の待遇改善や企業の収益維持には、運賃引き上げが鍵を握るというのが国を含めた共通認識だ。政府は「適正な価格転嫁で賃金を大幅に引き上げる」とし、3月に運賃水準を平均8%上げる新たな標準的運賃を告示した。運賃の目安となるが、強制力はなく、荷主に対して立場が弱いとされる運送業者が交渉してもなかなか前に進まないのが実態だ。

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