定年後は働かずのんびり暮らしたいのですが、今の生活レベルは落としたくありません。あと5年でいくら貯めると安心ですか?

65歳以上の人の68.5%が家計に心配がないと回答している

内閣府の「令和4年版高齢社会白書(全体版)」によると、65歳以上で経済的な暮らし向きについて「心配がない」と回答した人が全体の68.5%とのことです。心配がないとは、家計にゆとりがあって心配なく暮らしている状態を意味します。

なお、68.5%のうち「家計にゆとりがあり、まったく心配なく暮らしている」と回答した人の割合は12.0%で「家計にあまりゆとりはないが、それほど心配なく暮らしている」と回答した人の割合は56.5%でした。

それに対し、全体の31.2%が家計にゆとりがないと回答しているとのことです。「家計にゆとりがなく、多少心配である」と回答した人の割合は23.7%ですが、残りの7.5%は「家計にゆとりがなく、非常に心配である」と回答しています。

定年退職前にどのくらい貯蓄に取り組んだかなどによって、家計のゆとりは異なるところです。しかし、家計にゆとりがなくて心配であると回答する人もいることから、定年退職前から老後に備えて貯蓄をしておくことは重要になるといえるでしょう。

60~69歳(二人以上の世帯)の毎月の消費支出額と収入

総務省統計局の「家計調査 家計収支編 二人以上の世帯 年報 年次 2022年」によると、二人以上の世帯の消費支出月額は、世帯主の年齢が60~69歳の場合は29万9362円、70歳以上になると23万7203円です。

厚生労働省の「令和4年簡易生命表」では、平均寿命について男性が81.05歳、女性が87.09歳である旨を伝えています。平均寿命を目安として、消費支出がどのくらいになりそうかを事前に想定しておいてもよいでしょう。そのうえで、収入や年金額から差し引くなどすれば、大体どのくらい貯めておけば安心できるのかが分かります。

例えば、世帯主が60歳の二人以上の世帯が80歳になるまでに必要な消費支出は、以下のとおりです。

__●60~69歳:29万9362円×12(ヶ月)=359万2344円
●70歳以上:23万7203円×12(ヶ月)=284万6436円__

平均給与

国税庁の「令和4年分 民間給与実態統計調査」では、定年退職後と想定できる60~64歳、65~69歳の給与所得者1人当たりの平均給与を図表1のように伝えています。

【図表1】

※国税庁「令和4年分 民間給与実態統計調査」より筆者作成

例えば60歳で定年退職をした場合、働かずにのんびりと暮らすにしても年金の受取開始時期である65歳までに5年間もかかります。生活水準を落としたくないと考えるのであれば、再雇用や再就職などで働いて収入を得るのも方法の一つです。

もらえる年金額

将来的にもらえる年金額は、国民年金が月額6万8000円(令和6年度・満額受給の場合)厚生年金は被保険者期間や標準報酬月額がどのくらいなのかによって違いはあります。参考までに、厚生労働省の「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金受給者の平均月額は14万4982円(65歳以上の男性:16万7388円、65歳以上の女性:10万9165円)です。

定年後の暮らしを想定して早いうちから貯金をしよう

定年退職後は、のんびり暮らしながら自分の趣味を楽しみたいと考える人も多いでしょう。働いているうちに、老後の生活費はどのくらいかかるのか、平均寿命を考えたら総額でどのくらいになるのかを事前に考えたうえで、貯金の目標額を設定してみてください。

もしかしたら、定年退職後すぐにのんびり暮らすのではなく、数年間は再雇用や再就職しなければならない状況になるかもしれません。また、定年退職まであと5年しかない状況ならば、貯金を先延ばしにするのではなく今すぐ取り組むことが大切です。

出典

内閣府 令和4年版高齢社会白書(全体版) 第1章 高齢化の状況(第2節 1)
総務省統計局 家計調査 家計収支編 二人以上の世帯 2022年 表番号3
厚生労働省 令和4年簡易生命表の概況
国税庁 令和4年分 民間給与実態統計調査

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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