トイレットペーパー“長巻タイプ”は本当にお得? 価格を検証、メーカーに聞いた実際のコスト感

日々の暮らしになくてはならないトイレットペーパー【写真提供:丸富製紙】

物価高騰による値上げが相次ぐなか、少しでも日用品の価格を抑えたいという声が高まっています。生活必需品の代表格として、日々の暮らしになくてはならないものの一つがトイレットペーパー。最近では2倍巻きや3倍巻きといった長巻タイプも販売されていますが、一般的なものと比較するとどちらがより経済的なのでしょうか。使用感やデメリットも含め、メーカーに話を聞きました。

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2016年、業界内で初めて「200メートルの壁」を突破

スーパーやドラッグストアでトイレットペーパーを選ぶ際、ふと目に留まるのが「2倍巻き」や「3倍巻き」の文字。価格は一般的なトイレットペーパーと比較し、それぞれおおよそ2倍、3倍に設定されています。なかには5倍巻きや6倍巻きといった超ロングタイプで、「たった2ロールで通常12ロール1パック分に相当」とうたった商品も。にわかには信じがたいですが、本当にそれだけ長持ちするのでしょうか。

「一般に、4人家族が1か月に使う量が通常の50メートル巻きで16ロールと言われています。一人暮らしの場合、1ロール300メートルの6倍巻き製品なら、交換頻度は月に1回にも満たないでしょう」

そう語るのは、家庭用トイレットペーパーとしては国内最長となる300メートルの6倍巻き製品を扱う丸富製紙の担当者。国内の家庭用ホルダーの最大径は12センチという基準があり、一般的な従来の設備では3.6倍巻きの180メートルが限界でしたが、同社では2016年、業界内で初めて「200メートルの壁」を超えた5倍巻きロールを開発しました。21年には6倍巻きを発売、昨年12月には特許も取得しています。体積を大きく変えず何倍もの長さを出すために、さまざまな工夫が施されているといいます。

「まずはより薄く、それでいて破れにくい強度を持った紙の開発にとりかかりました。また、軸によりきつく巻きつけることで、密度を高めています。製品を手に取ってみれば、一般的なトイレットペーパーよりも重く、中身が詰まっていて堅いことが分かると思います。通常のトイレットペーパーはまず長い棒状の芯に紙を巻きつけ、最後に製品の幅に合わせて裁断していくんですが、超ロングタイプはあまりに紙の密度が高く堅いため、カッターの刃がきれいに通らない。設備面からすべて見直し、特別な製法で製品サイズにカットします。使用感には好みもありますが、パルプを使用しており、肌ざわりの柔らかさも従来品と遜色ありません」

素材や設備を見直し、試行錯誤の末にたどり着いたという超ロングタイプのトイレットペーパー。「かさばらない」「長く使える」という利点から、防災備蓄やアウトドアでの使用にも適しており、包装用ビニールや芯、輸送時のCO2削減の観点から、環境負荷の少ない製品でもあるといいます。

気になる価格面では、同社で扱う一般的な長さのトイレットペーパー「Hanataba」の希望小売価格は12ロールでシングル、ダブルとも398円。同じく12ロールの「Hanataba」2倍巻きはシングル、ダブルとも728円、超ロングタイプの「ペンギン」5倍巻きはシングル4ロールで798円、6倍巻きはシングル2ロールで498円となっています。398円の「Hanataba」12ロール分と同じ600メートルあたりに換算すると、2倍巻きは364円、5倍巻きは479円、6倍巻きは498円。2倍巻きはお得な一方、設備投資のかかっている超ロングタイプではわずかに割高という結果になりました。

それでもスーパーの袋に入る大きさで、圧倒的な買い替え頻度の少なさは大きな魅力。同社の担当者は「強いてデメリットをあげれば、なかなか減らず買い替える機会がないので飽きる、という声がありました。コスパのみならず、タイパ(タイムパフォーマンス)やスぺパ(スペースパフォーマンス)を重視する方からご好評をいただいております」と話しています。

ちなみに、一般的なシングルタイプと2枚重ねのダブルタイプとでは販売価格とのべ長さが同じであっても、シングルの方が破れにくいよう厚めの紙で作られており、原材料も多く使用されているとか。巻く時間がダブルの倍かかるため、生産コストはシングルの方が圧倒的に高いということです。

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