B2プレーオフ ライジングゼファー福岡対山形ワイヴァンズの見どころ——打ち合いか、長距離砲と堅守の激突か

5月3日(金・祝)に開幕する日本生命 B2 PLAYOFFS 2023-24のクォーターファイナル、ライジングゼファー福岡対山形ワイヴァンズの見どころをまとめる。このマッチアップは、通算成績では36勝24敗で西地区2位の福岡が31勝29敗で東地区3位の山形を上回っている。しかし直接対決では山形が2勝。しかも、福岡のホームである照葉積水ハウスアリーナで2度勝った。そんな「ねじれの構図」にある両チームの対戦はどんな結末になるだろうか。

ロングレンジの打ち合いになれば山形有利のデータ両チームには共通する大きな特徴がある。3Pショットを武器にしているという点だ。山形は今シーズン、3Pアテンプト数平均32.3本と成功数11.2本がリーグトップ。34.8%という成功率もリーグ3位というエリート・シューティングチームだ。個々にはアテンプト数5.2本でリーグ2位の成功率39.7%を誇るマイケル・フィンケと、チーム最多でリーグ2位の6.8本というアテンプト数で37.0%の成功率をたたき出したジェームズ・ベルが軸。アウトサイドで彼らを放っておくことはできない。

例えばフィンケのレンジいついて、大学時代に対戦したことがあるというアルティーリ千葉のデレク・パードンがシーズン中にこんなコメント残していた。

「とにかくレンジが広い。彼のレンジは、アリーナの駐車場まで追いかけて行ってディフェンスしなければいけなかったくらい広いんですよ(笑)」

山形はこのフィンケとベルの2人がトップスコアラー(ベルが17.5得点でチーム1位、フィンケが12.0得点で2位)であり、正真正銘、3Pショットのチームと言っていいだろう。

ショットメイカーとしての大きな信頼と期待に応えているマイケル・フィンケ(写真/©B.LEAGUE)

対して福岡も、3Pアテンプト数26.4本がリーグ3位で、成功数8.8本も3位タイ。成功率33.5%は同8位とリーグでは中堅の数値だが、スイングマンの谷口光貴が39.5%の成功率でリーグ3位に入っている。ボリュームシューターの加藤寿一(アテンプト数3.4本)が36.9%。ストレッチビッグのパブロ・アギラール(同4.4本)とポイントガードの兒玉 貴通(同2.9本)も34.1%で続く。「担当者」の確率は高いということだ。

主砲の爆発はすなわち勝利へのカギにもなっている。実際、56試合出場した谷口の3Pシューティングとチームの勝敗には相関性が感じられる。谷口は、出場して勝った34試合で平均6.3本の3Pアテンプトがあり、42.3%の成功率を残して12.0得点のアベレージだった。しかし負けた22試合では、アテンプト数は5.9本への微減に収まっているが、成功率は34.9%に大幅降下。平均得点も9.5と1桁になっていた。直感的に、打っているショットの質が違うのだろうという想像が働く。自身のコンディションから相手の対応まで、その要因は様々だろう。しかし、福岡が谷口にオープンルックを作れるかどうかは福岡にとっての勝利へのカギと思われるし、山形がそれを阻止するディフェンスをできるかどうかが、山形にとっての勝利のカギになるだろう。

両チームのシーズン中の直接対決は昨年末の12月30日と31日の2試合だったが、谷口はGAME1で3Pショット1/6の7得点、GAME2では3Pアテンプト自体なしでの5得点に終わっていた。山形ではフィンケが両日で5/12(成功率41.7%)、ベルが7/15(同46.7%)。ちなみにチーム全体の3Pシューティングは、山形が24/64で37.5%(両日ともに12/32で波もなかった)だったのに対し福岡が12/46で26.1%だった。勝因・敗因はもちろんほかにも見つかるだろうし、このような数値になった要因こそが真の勝因・敗因なのかもしれないが、いずれにしても「長距離砲の本数と精度で勝ったチームが勝った」のは事実だ。

本来のディフェンス力を発揮できれば福岡有利?3Pシューティングという共通の特徴がある両チームには、逆に好対照な部分もある。それは、福岡の平均76.0失点がリーグ3位の好成績(少ない方からの順位)であるのに対し、山形の84.2失点は多い方から5番目であるという点だ。ディフェンス・レーティング(100回攻撃された場合の平均失点)で見ても、福岡は106.4で5位(少ない方から)だが、114.9の山形はワースト3位(3番目に多い)だった。

ただし福岡は、2度の直接対決でどちらも80点以上の失点を喫している(GAME1が75-82、GAME2が83-85)。福岡は開幕からの12試合で11勝1敗というジャンプスタートに成功したが、その間の平均失点は72.4、最初の10試合ではさらに低く69.7だった。昨年の12月以降やや大きめの波に揺られながら過ごしたシーズンだったが、心機一転プレーオフで本来のディフェンス力を発揮でき、同時に谷口らシューターが躍動すれば福岡に分があるだろう。

山形は長距離砲でそれを打ち破りに来る。打ち合いになれば山形有利か。ホームの福岡がどちらの顔を見せるか、山形が「どんな顔をさせるか」によって、「ねじれマッチアップ」のシリーズの行方が変わりそうな気配だ。

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