憲法記念日

 元日は〈年のはじめを祝う〉日、春分の日は〈自然をたたえ、生物をいつくしむ〉日。祝日法には、年に16日ある祝日のそれぞれに込められたメッセージが記されている▲きょう5月3日の憲法記念日は〈日本国憲法の施行を記念し、国の成長を期する〉日。新しい憲法と一緒に再スタートのラインに立ったのだ-という決意が読み取れる。では、憲法とは何か。施行から77年を経てどこまで成長できたか▲憲法学者の木村草太さんは、憲法について「国家権力がしでかした失敗から作られた張り紙のようなもの」と説く。弾圧や独裁、無謀な戦争…その失敗を繰り返さないための反省のリストが憲法だ▲ところで、憲法には危うい読まれ方をしている条文がいくつかある。〈婚姻は、両性の合意にのみに基づいて…〉とあるから「憲法は同性婚を禁止している」と主張されたり、法律の手続きによって〈生命を奪はれ〉る可能性が記されていることが「死刑が廃止できない」ことの根拠にされたり▲誰かの改憲論や、政治家の改憲への意欲を耳にするたびに思う。どこかの文言を書き換えたり何か書き足したりする前に、考えるべきことはまだまだある▲憲法は自由や権利のために〈国民の不断の努力〉を要求している。じっくり読み返す-そんな努力も少しずつ。(智)

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