福島のコメを宇宙へ ガス気球で種もみ打ち上げ計画 福島県須賀川市の和田晃司さん、県内農業者と構想

県産米種もみの宇宙打ち上げを目指す和田さん

 福島のコメを宇宙へ―。福島県須賀川市の農業和田晃司さん(40)は県内農業者と連携し、県産米種もみの宇宙打ち上げを目指すプロジェクトに乗り出した。将来的に「宇宙を旅したコメ」として育て、福島県の新たな特産品として売り出す計画だ。既に約30市町村の若手農業者らが趣旨に賛同。東京電力福島第1原発事故に伴う根強い風評など厳しい環境が続く中、「わくわくするような農業の新しい可能性を子どもたちに感じてもらいたい」と前を向く。

 和田さんは須賀川市出身。須賀川桐陽高、東京電機大情報環境学部卒。2016(平成28)年から地元でコメを育てている。原発事故後、風評が広がると、農業本来の楽しさが子どもたちに伝わらないのではないかと不安を抱いた。2021(令和3)年にプロジェクトの構想を練り始めた。知り合いの若手農業者らに声をかけると、同じ思いを抱く仲間が県内各地から声を上げてくれた。

 構想では、スペースバルーン(ガス気球)にコメの種もみを積んで宇宙に飛ばす。スペースバルーンの打ち上げ実績がある北海道に県産米の種もみを運び、自分たちで打ち上げを行う。

 国土交通省によると、気球を飛行または浮揚させる場合、航空機の飛行に影響を及ぼす恐れのある行為として、航空法に基づき国土交通大臣の許可または通報が必要となる。他の航空機と衝突の恐れがない飛行方法や安全措置を講じる必要もある。

 和田さんは現在、スペースバルーン打ち上げに向けた手続きなどの調査、予算確保に取り組んでいる。「コメ作りは決して難しい問題ばかりを抱えているわけではないと次世代に伝えたい。このプロジェクトが農業の魅力を知ってもらうきっかけになればうれしい」と話した。

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