地方創生10年福島県内市町村長アンケート 国の施策「不十分」8割 企業移転促進求める声

 国が人口減少の克服と地域経済の活性化を基本理念とした「まち・ひと・しごと創生法」を2014(平成26)年に施行し「地方創生」を打ち出してから10年の節目に合わせ、福島民報社は県内59市町村長に国の取り組みへの評価などを聞いた。国の施策を「十分でなかった」「あまり十分でなかった」としたのは合わせて50人(84.7%)となった。雇用創出策や少子化対策の効果が十分でなく、東京一極集中が是正されていないとの訴えが目立った。各市町村長は企業などの地方への移転促進などを進めるよう求めている。

 政府の政策への評価は【グラフ(1)】の通り。「十分でなかった」は30人(50.8%)。「あまり十分でなかった」は20人(33.9%)だった。本県の推計人口は今年4月1日現在175万349人。2014年4月1日現在の193万7530人から10年間で約19万人が減っており、市町村が人口減少に危機感を強めているのが浮き彫りになった。

 「十分でなかった」「あまり十分でなかった」と回答した市町村長に施策で「不十分」と感じる分野を聞いたところ(複数回答可)、「結婚・出産・子育て支援」を挙げたのは38人(76.0%)。会津美里町の杉山純一町長は経済的事情で結婚を諦める人への支援が不足していると指摘した。喜多方市の遠藤忠一市長は政府が子ども関連政策の司令塔として昨春に発足させたこども家庭庁が「機能していない」と批判した。

 「雇用創出や産業活性化など仕事づくり」に対しては37人(74.0%)が不満を示した。福島市の木幡浩市長は「経済活性化を目指す中小企業、起業を望む若者や女性に対する支援が不十分」と主張。矢祭町の佐川正一郎町長は結婚支援分野を含め「各地方の事情に即した支援でなく一元化したものだった」と断じた。

 国に望む取り組み(複数回答可)は【グラフ(2)】の通り。県内では20~24歳女性を中心に若年層の県外への転出が県内への転入を上回る「社会減」が続いており、人口流出の抑制が喫緊の課題となっている。いわき市の内田広之市長は地方で育てた人材や労働力が首都圏に流れている問題点を挙げ、「首都圏に、そうした恩恵分の税を課し、地方に還元する税法の整備が必要」と提案した。白河市の鈴木和夫市長は「税制や財政面で企業の地方移転を進める特別立法の策定が必要」と強調した。

 アンケートは4月中旬から今月初めにかけて全員から回答を得た。

【国の地方創生政策への評価の各回答の内訳】

・十分(0)

・おおむね十分(2町)

磐梯、広野

・あまり十分でなかった(20市町村)

会津若松、須賀川、喜多方、南相馬、桑折、大玉、鏡石、天栄、下郷、南会津、猪苗代、湯川、柳津、棚倉、玉川、浅川、三春、楢葉、富岡、川内

・十分でなかった(30市町村)

福島、郡山、いわき、白河、相馬、二本松、田村、伊達、本宮、国見、川俣、檜枝岐、只見、北塩原、西会津、会津坂下、三島、金山、会津美里、西郷、泉崎、中島、矢吹、矢祭、塙、鮫川、石川、小野、大熊、葛尾

・分からない(7町村)

昭和、平田、古殿、双葉、浪江、新地、飯舘

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