福島県石川町の官製談合事件 携帯、供述逮捕の決め手 元土木会社の2人 周囲に不正認める話

 福島県石川町発注道路工事の指名競争入札を巡る官製談合容疑事件で、県警に公契約関係競売入札妨害の疑いで逮捕された、町内の土木会社「志賀建設」の元社員で無職関根徳夫容疑者(69)=石川町境ノ内=と元役員でコンサルタント業添田保雄容疑者(63)=平田村中倉字見上=の携帯電話データや任意での事情聴取内容などが逮捕の決め手となったことが2日、捜査関係者への取材で分かった。

 両容疑者は逮捕前、官製談合防止法違反と公契約関係競売入札妨害の疑いで逮捕された石川町長の塩田金次郎容疑者(76)=石川町形見字道橋=から不正に入札情報を得ていたことを認める趣旨の話を周囲にしていたことも関係者の話で判明した。

 捜査関係者によると、内偵捜査の過程で関根容疑者は昨年、添田容疑者は今年になって浮上し、複数回にわたり任意で事情を聴取した。両容疑者の携帯電話も押収していた。その通信記録やデータなどを解析し、事情聴取内容などと矛盾がないとして3人の逮捕状を請求し発付されたという。

 塩田容疑者の逮捕容疑は2022(令和4)年度の町発注道路工事に先立ち、町長として適正に入札を執行する義務があるのに、秘密事項である予定価格を志賀建設社員だった関根容疑者、取締役だった添田容疑者に教え、同社に落札させた疑い。関根、添田両容疑者は公正な入札を妨害した疑い。

 予定価格の基になる設計金額の決裁権者は塩田容疑者で、入札前に予定価格を知り得る立場にあった。県警は塩田容疑者が予定価格を漏らした目的や経緯、3人の関係性、金銭の授受などを詳しく調べている。

 ■塩田容疑者「スポンサーになってくれ

 石川町発注道路工事の指名競争入札を巡る官製談合容疑事件。工事を受注した町内の土木会社「志賀建設」に在籍していた元社員の関根徳夫容疑者、元役員の添田保雄容疑者と町長の塩田金次郎容疑者の接点はどこにあるのか。

 ■業者行脚

 塩田容疑者は2018(平成30)年9月の石川町長選で現職を破り、初当選を果たした。町議2期、県議4期を務めた政治経験に町民は期待を寄せた。

 歴代町長4人に仕えたという元町職員の70代男性は「(塩田容疑者が)町長になろうとしていた時期に『スポンサーになってくれ』と町内の土木と建設業者を歩き回っていた」と証言する。「援助してくれという意味だったのだろう」と補足した。

 自営業の30代男性は、塩田容疑者が支援者には物腰柔らかに対応する一方で、応援してくれない住民には素っ気ない態度を取っていたと感じた。「選挙のためなら何でもするような印象を受けた」という。

 ■40年来の関係

 関根、添田両容疑者は昨年7月に志賀建設を退社するまで、約40年間にわたる関係だった。2011年に先代社長が体調を崩し、両容疑者が中核となって経営を切り盛りするようになった。先代社長が2018年に亡くなり、息子に代替わりした後、2019年ごろに関根容疑者は取締役を外れたが、添田容疑者と引き続き入札業務を担っていたという。

 添田容疑者の近親者は、塩田容疑者が経営する塩田工業で長年にわたり勤務するなど近い関係にあったとされる。添田容疑者の亡父は、県議時代の塩田容疑者の政治活動を熱心に応援していたという。

 建設業関係者によると、添田容疑者は人付き合いが巧みで、信頼が厚かった。入札会場などに志賀建設の代表として顔を出すのは多くが添田容疑者だったという。

 関根容疑者は熱心な仕事ぶりで「裏から会社を支えていた」「実質的な経営者」との評判だ。ただ、同業者との懇親には積極的ではなく、社内でも身の上話をするタイプではなかったという。

 ■事業の行く末は

 4月27日に移転オープンしたばかりの町歴史民俗資料館は、町内の資源を生かしたにぎわいづくりを目指した塩田容疑者の肝いりだった。整備中の認定こども園は12月に開園する予定だ。公民連携事業で注目を集める道の駅は、2026(令和8)年3月の開業に向け現在は設計段階にあり、9月の着工を予定している。

 塩田容疑者の逮捕を受け、大型事業の行く末を懸念する声が上がっている。会社経営の60代男性は「多くの事業が頓挫する可能性がある。町内経済への影響は避けられない」とみる。道の駅整備を担当する町職員は「当面の方針が決まらないと正直、身動きが取れない」とこぼした。

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