満を持しての国内初実写化!Netflix映画『シティーハンター』何が面白い?

Netflix映画『シティーハンター』は世界独占配信中 - (C)北条司/コアミックス 1985

鈴木亮平主演のNetflixオリジナル映画『シティーハンター』の配信がスタートした。さっそくSNSでは「シティーハンター」「鈴木亮平」「Get Wild」などがトレンド入りし、一種のお祭り状態になっている。何が多くの人の心をとらえるのだろうか。(文:大山くまお)※本文には一部内容に触れる部分があります。

「シティーハンター」とは?

北条司の「シティーハンター」は累計発行部数5,000万部を突破する人気コミック。1987年から始まったテレビアニメも大人気となり、劇場版アニメも5作品公開された。テレビアニメ第1シリーズのエンディングテーマに採用されたTM NETWORKの「Get Wild」は、シリーズを象徴する楽曲としてファンから絶大な人気を得ている。

「シティーハンター」の人気は世界に広がっており、過去にはジャッキー・チェン主演で実写映画化されたこともある。2019年にはフランスで実写映画化されて好評を博した。今回は満を持しての国内初実写化となる。

あらすじは?

Netflix映画『シティーハンター』は世界独占配信中 - (C)北条司/コアミックス 1985

東京・新宿を舞台に、裏社会の様々なトラブル解決を請け負うスイーパー、冴羽リョウ(鈴木)。通称“シティーハンター”。美女に目がなく、何かというと「もっこり」と叫ぶような男だが、スイーパーとしての腕前は超一流だ。

本作では、人間を凶暴化させる麻薬“エンジェルダスト”をめぐる争いによって相棒・槇村秀幸(安藤政信)を失ったリョウが、犯罪組織ユニオン・テオーペとの戦いの中で、槇村の妹・香(森田望智)を新たなパートナーにするまでの物語が描かれる。

原作コミックに準じたストーリーであり、全体の序章にあたる部分のため、ファンはもとより、原作コミックやアニメを知らない人でもハードボイルドとコミカルさが絶妙にブレンドされ「シティーハンター」の世界を十分楽しめるはずだ。

とにかく鈴木亮平に尽きる

なんといっても冴羽リョウを演じた鈴木の魅力、これに尽きるのではないか。これまで数多くの作品で、難しいと言われる二次元作品の実写化という重責を担ってきた鈴木が、完璧なまでに冴羽リョウを演じている。

Netflix映画『シティーハンター』は世界独占配信中 - (C)北条司/コアミックス 1985

均整のとれた細マッチョな身体つき、拳銃の扱いを含めたキレの良いアクションはもちろんのこと、本気になったときのシリアスな表情と「もっこり!」と叫ぶときの崩れた顔つきを瞬時に切り替えられるのが、本当に冴羽リョウらしさ満点である。声色もアニメで声優を務めた神谷明(本作にも声の出演)を思わせる響きを再現しており、さすがとしか言いようがない。

冴羽リョウの身長の設定が186センチ(アニメ版は191.4センチ)で鈴木の身長が186センチというのも、ちょっと出来すぎた話のように思える。「冴羽リョウを鈴木亮平が演じている」というより、「冴羽リョウが現実にいたら鈴木亮平」という感じだ。

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森田望智もすごい

鈴木の冴羽リョウぶりに目を奪われがちだが、槇村香を演じた森田のなりきりぶりも特筆すべきものがある。リョウが一見何を考えているのかわからないキャラクターである分、感情で物語を引っ張っていく香の存在が重要になる。

森田は、勝ち気で、おせっかいで、鈍臭くて、脆くて、熱い血が通っている香というキャラクターを見事に演じてみせていた。なにより、鈴木の冴羽リョウと並んでも、存在感、実在感が負けていないのが素晴らしい。

Netflix映画『シティーハンター』は世界独占配信中 - (C)北条司/コアミックス 1985

鈴木と森田、日本の映画・ドラマ界を代表するカメレオン俳優の男女2トップをキャスティングできたところで、『シティーハンター』の成功は約束されていたのかもしれない。

「完コピ」ではないが「リスペクト」

『シティーハンター』に「恋をしている」と言うほど大ファンという鈴木は脚本開発にも参加しており、リョウが引き受ける仕事の種類や、リョウが視聴者に嫌われないようジョークを修正したという。原作オタクとして「愛のある改変」を意識していたという鈴木は、「原作の完コピ」だけが実写化成功の道ではないことを示しているかのようだ。

Netflix映画『シティーハンター』は世界独占配信中 - (C)北条司/コアミックス 1985

たとえば、本作での冴羽リョウのファッションは、アニメでおなじみの袖まくりした水色ジャケットと赤いTシャツではなく、ベージュのタイロッケンコートとモックネックのニットに変更されている。ガンアクションの際は、バラクータのG9に着替えていた。銃を扱うときに肩の可動域が広くて動きやすいスウィングトップを着用するのは合理的だ。なにより、コート姿は現代の新宿・歌舞伎町にいる冴羽リョウが周囲から浮かないようにするための選択なのだろう。いずれも原作で披露しているファッションというのも重要なポイントだ。ちなみにラストシーンで香が着ているクロップドジャケットに赤いVネックのインナー、スキニーのデニムは、『劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>』での服装とまるっきり一緒である。

冴羽リョウが口走る「もっこり」にも原作へのリスペクトが表れている。「シティーハンター」に「もっこり」は欠かせない。アニメ化する際、「週刊少年ジャンプ」編集部の許諾が得られなくて困っていたプロデューサーが、偶然会った「シティーハンター」の担当編集者に「もっこり」の重要性を説かれたというエピソードがある。それぐらい大切なものなのだ。

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ただし、女性へのセクハラは許されないので、リョウは女性には直接触れず(目線は女性に向かうのだが)、積極的に自分で身体を張って「もっこり」をアピールする。たしかに下品ではあるが、嫌悪感を持たれるほどでもない。絶妙なラインを守りつつ、原作マンガ、アニメへのリスペクトを実現しているのだ。

冴羽リョウ無双

重要な見せ場であるアクションは、韓国映画のような痛みが伝わるリアルなものというより、爽快感重視のものになっており、荒唐無稽なアクションを見せていたマンガ・アニメの実写化にマッチしていると言えるだろう。

Netflix映画『シティーハンター』は世界独占配信中 - (C)北条司/コアミックス 1985

とにかく冴羽リョウは強い。どこまでも“冴羽リョウ無双”だ。あるときは人を食ったような表情で、あるときは獲物を狙う鷹のような鋭い眼光で、敵を次々と倒していく無敵のスイーパー。ファンが見たいのは冴羽リョウのスカッとしたアクションであり、本作はそれに十分応えてくれている。

こうなったらファンとしては続きが見たくなるのは当然だろう。物語はまだ序章に過ぎず、1話完結のストーリーを次々と作っていけるフォーマットでもある。シリアスな話もコミカルな話も見てみたい。次はテレビシリーズがいいんじゃないだろうか。ぜひとも期待して待ちたい。

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