「火の鳥」直筆原稿や創作エピソード紹介 輪廻の世界体感を 手塚治虫記念館で企画展

会場に展示された「火の鳥」のイラスト=宝塚市武庫川町、市立手塚治虫記念館

 漫画家の手塚治虫さん(1928~89年)が輪廻(りんね)転生をテーマに描いた長編大作「火の鳥」の企画展が、兵庫県宝塚市武庫川町の手塚治虫記念館で開かれている。会場には手塚さんの直筆原稿やイラストなど約120点が展示。過去と未来の歴史を往来しながら、時空を超えたロマンあふれる物語が楽しめる。(西尾和高) ### ■直筆原稿など120点展示

 「火の鳥」は、手塚さんがロシアの音楽家ストラビンスキー作曲のバレエ「火の鳥」を鑑賞したことがきっかけで着想。「人間の想像できないエネルギーが生き物という有機物質に吸収され、『生きる』という現象になるのかもしない」との思いを抱き、火の鳥を狂言回しに、人間の生への執着、葛藤を問うた。

 作品は1954年、「漫画少年」で「黎明(れいめい)編」の連載が開始。その後、雑誌の廃刊などで連載は2度中断したが、67年に手塚さんは月刊誌「COM」を創刊して描き続けた。

 「未来編」「乱世編」などの独立した全12編は、発表した順に振り子のように時代を行き来しながら、現代に近づいていく。最後は現代の話で一つにつながる壮大なドラマに仕立てようとしていたという。手塚さんは「今度こそ完結させてライフワークの一つとして残したい」などと強い決意を示していたというが、手塚さんが最終段階に取りかかる前に亡くなったため未完となった。

 会場には鮮やかな「火の鳥」のイラストのほか、創作初期に描かれた「漫画少年版黎明編」の貴重な直筆原稿などが並ぶ。「鳳凰(ほうおう)編」など各編の物語の内容が紹介され、手塚さん自身が「火の鳥」の創作エピソードを語る場面を漫画にした作品もある。

 1994年にオープンした同記念館の30周年を記念し、同市などが20年ぶりに企画展として「火の鳥」を取り上げた。同記念館は「手塚流輪廻の世界を体感してほしい」としている。

 6月23日まで。大人700円、中高生300円、小学生100円。午前9時半~午後5時。月曜休館(5月6日は開館)。同記念館TEL0797.81.2970

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