青森県内のホタテ生産量の約半数を占める平内町漁協で、半成貝(1年貝)の水揚げが4月から始まり、5月の連休明けから本格化する。同漁協の4月の水揚げ実績は560トンと、前年同月の3440トンに比べて8割以上減少した。昨夏の記録的な高水温により稚貝が大量死したため今春に出荷する貝が極端に少なく、一部では貝の成長不良で漁を見合わせている。同漁協は「今年の水揚げ量は昨年の半分以下になるのではないか」と危惧している。
県が昨秋行った実態調査では、昨夏の高水温の影響で陸奥湾全体の稚貝が5割以上、同漁協では6割以上死んだ。稚貝は養殖後、半成貝にして出荷するため、今春の水揚げの激減につながっている。
さらに同漁協によると、例年秋に行っている稚貝の成長を促すための仕分け作業が、昨年は高水温の影響で1カ月ほど遅れた。このため、ホタテの成長が例年より進んでいない状況だ。
同漁協では全6支所のうち、小湊、清水川の2支所が4月の水揚げを見合わせた。ホタテが成長し、高値での取引が見込める連休明けから水揚げする予定だ。
同漁協の柴田操専務理事は「ホタテの成長が進み、もっと身入りが良くなれば単価が上がる。ホタテの数自体がそもそも少ない中で、少しでも高く売りたいというのが漁業者たちの思いだろう」と話した。
4月下旬、平内町の土屋漁港では水揚げされたホタテがトラックに積まれていた。
ホタテ漁師の田村奨(はじめ)さん(77)は「水揚げしたホタテの4分の1が死んでいて全然駄目。30年ホタテ漁をしているが、今年は最悪だ」、野坂祐樹さん(39)は「このままの状況が続けば、ホタテ漁をやめなければいけない人が出てくるのではないか」とため息をついた。
田村義夫さん(75)は「今年の稚貝がどれだけ確保できるかで、来年の水揚げが変わってくる。ほかの漁師とも協力して何とか頑張らなければ」と前を向いた。