スマート農業推進へ 農機自動化の「基地局」、青森市が運用開始 位置情報を自動操舵などに活用

荒川市民センターに設置された基地局の設備=青森市
実演会で行われた農機の自動操舵。人の手がなくても正確に作業を行う

 青森市はスマート農業を推進するため、高精度の位置情報を使って農業機械の自動化を可能にする「RTK-GNSS基地局」を市内2カ所に初めて整備し、4月から運用を始めた。トラクターなどの自動操舵(そうだ)に活用することで、播種(はしゅ)や田植えなどの農作業が正確になり、省力化にもつながる。スマート農業は、農業の担い手不足や高齢化を打開する一手として期待が大きく、市の担当者は「多くの農業者に基地局を活用してほしい」と話す。

 基地局は荒川市民センターと浪岡野沢公民館に設置。位置情報は、衛星から受信機を搭載した農機と基地局にそれぞれ送られる。さらに位置の補正情報が基地局からも農機に送られるため、誤差はわずか2~3センチの高精度となる。

 電波の受信エリアは基地局から半径約5キロで、市内の農業者は市に届け出れば無料で利用できる。市は本年度、さらに奥内・後潟地区と浪岡の大杉・五郷地区の計2カ所にも基地局を増設する予定だ。

 同システムを使って農機を自動操舵することで、精密な播種、田植え、収穫などの農作業を行える。農業者の負担軽減、コスト減、収量増も見込める。

 市は4月22日に青森市荒川地区の圃場(ほじょう)で、基地局を活用した実演会を開催。地域の農業者らが、乾いた田に直接種をまく「乾田直播」のデモンストレーションを見学した。

 市農業政策課の坂本康人課長は「農業人口は減り、高齢化も進んでいる。基地局設置により若い人が農業に参入する契機となることを期待しており、スマート農業の便利さを感じてもらいたい」と強調。県内では西北五地域を中心に基地局の設置が進んでいるため「隣接する浪岡にも設置したことで、(スマート農業が可能な地域に)連続性が生まれたのでは。さらに各地で設置が広がっていけば」と語った。

 自動操舵システムは受信機やハンドル、モニターのセットを農機に後付けすることができ、価格は130万~250万円程度。市はこうしたスマート農業機器の購入に活用できる補助金(上限200万円、経費の2分の1以内)の申請を今月末まで受け付けている。

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