不条理と向き合い、権利守り40年…「多様な意見 伝える役割」 女性初の日弁連会長・渕上玲子さん

「女性会長として多様な意見を述べていきたい」と話す渕上会長=東京都、弁護士会館

 75年の歴史を持つ日弁連で4月、女性初の会長に就任した渕上玲子さん(69)=長崎県西海市大島町出身=。全国4万5千人余りの弁護士のトップに立ち、長崎新聞の単独取材に応じた。「日本最大の法律家団体であり人権NGOとして、法制度に関して多様な意見を述べることが役割。男女共同参画や性的少数者(LGBTQ)への理解を深めることを中心に据えていきたい」と抱負を語った。

 生まれ育った大島町は当時、本土との行き来は船しかない島だった。全国各地から鉱業の専門家らが集まった炭坑が栄え、華やかな雰囲気に包まれていた。
 法曹を志した時の記憶をたどると、地元の風景が目に浮かぶ。出生時の名前届け出の際、父が町役場で「玲」の字はないと言われ「冷子」と登録。小学校に入学する前、長崎家裁佐世保支部で名前の変更手続きをした。「あなたの名前を書いてごらん」。担当裁判官に促され、自らの手で「玲子」と記した。裁判官に憧れを抱くきっかけとなった。
 島を出たのは、閉山が近づいていた15歳の秋。関東の高校を経て、一橋大法学部へ進んだ。「外に出て、多くの人と会う弁護士の方が向いている」。司法修習生時代、志望を変え、1983年に弁護士登録した。
 男女共同参画の発想もない時代、女性弁護士は就職さえ困難だった。同期の男性弁護士との経験差や収入差に打ちのめされながらも「いろんな事件をより好みすることなくやってきた」。社会の不条理と懸命に向き合い、市民の権利を守り40年余り。だからこそ、女性が活躍できる基盤づくりへの思いは強い。
 
 【略歴】ふちがみ・れいこ 西海市大島町出身。一橋大法学部卒業後、1983年に弁護士登録。東京弁護士会会長、日弁連副会長、日弁連事務総長を歴任し、2024年4月から現職。趣味は太極拳。信条は不撓(ふとう)不屈。

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