ロケットラボが「エレクトロン」ロケット通算47回目の打ち上げに成功 韓国の衛星とNASAの衛星を搭載

ロケットラボは2024年4月24日(日本時間・以下同様)、韓国の地球観測衛星「NEONSAT-1」とアメリカ航空宇宙局(NASA)の技術実証衛星「Advanced Composite Solar Sail System(ACS3)」を搭載した「Electron(エレクトロン)」ロケットの打ち上げミッション「Beginning Of The Swarm」に成功しました。今回の打ち上げはエレクトロンロケットにとって47回目のミッションでした。

■46回のミッションをまとめた画像

【▲ エレクトロン46回分の打ち上げをまとめた画像(Credit: Rocket Lab)】

こちらは2017年5月25日に実施されたエレクトロンの初飛行ミッション「It’s a Test」から2024年3月21日に実施されたミッション「Live and Let Fly」まで、過去46回のエレクトロンロケット打ち上げの様子をまとめた画像です。「Beginning Of The Swarm」ミッションの打ち上げに先立ってロケットラボが公開しました。

エレクトロンは全長18m・直径1.2mの2段式小型ロケットです。民間宇宙企業の小型衛星やNASAの衛星を打ち上げており、2019年以降はアメリカ国家偵察局(NRO)、アメリカ宇宙軍(USSF)、アメリカ国防高等研究計画局(DARPA)といった安全保障目的の衛星も打ち上げています。また、日本の民間宇宙企業ALE(エール)、キヤノン電子、Synspective(シンスペクティブ)、QPS研究所、Astroscale(アストロスケール)の衛星を軌道投入してきた実績があります。

■「Beginning Of The Swarm」ミッション打ち上げの様子

【▲ ニュージランドにあるロケットラボの射場から打ち上げられたエレクトロンロケット(Credit: Rocket Lab)】

韓国とNASAの衛星を搭載したエレクトロンは日本時間2024年4月24日、ニュージーランドのマヒア半島にあるロケットラボの発射場から打ち上げられました。発射約9分後、エレクトロンの第2段機体とキックステージ(複数の衛星を異なる高度の軌道へ投入する機器)を分離。NEONSAT-1は発射50分後に高度520kmの地球周回軌道へ投入、ACS3は発射1時間45分後に高度約1000kmの軌道に投入されました。

■韓国の地球観測衛星「NEONSAT-1」

【▲ 打ち上げに向けて準備が進められるBeginning Of The Swarmミッションのペイロード。キックステージ上部には韓国の地球観測衛星「NEONSAT−1」が搭載されている。またNASAの「ACS3」は黒い箱型の放出機構に格納されて打ち上げられた。(Credit: Rocket Lab)】

NEONSAT-1は韓国科学技術院(KAIST)の地球観測衛星で、災害対策利用や安全保障利用を目的としています。韓国は1機の試験機と10基の衛星から構成される衛星コンステレーション「New-space Earth Observation Satellite Constellation for National Security」の構築を目指しており、NEOSAT-1は衛星コンステレーションの試験機です。残りの10機は2026年と2027年に打ち上げられる予定となっています。

KAISTによると、衛星には解像度モノクロ1m、カラー4mで撮影可能な光学カメラが搭載されており、高度400〜500kmの太陽同期軌道から地上の観測を行います。衛星の開発はKAISTの衛星技術研究センター(SaTReC)が担当し、製造は韓国の衛星企業Satrec Initiativeが担当しました。

■NASAの「ACS3」

【▲ ソーラーセイルを展開した「ACS3」の想像図(Credit: NASA)】

ACS3はNASAの超小型衛星で、ソーラーセイルを搭載しています。ソーラーセイルは帆に当たった風を推進力として動くヨットに似ており、宇宙空間で広げた帆が太陽光を受けた時に発生する太陽輻射圧を推進力として利用する技術です。今回のミッションでは太陽光を受ける帆を展開する技術実証を行います。

衛星の搭載時は12Uサイズ(1Uサイズは10×10×10センチ)の超小型衛星ですが、帆が展開されるとその大きさは約80平方メートルになります。NASAによると、太陽とACS3の位置条件が合った場合、全天で最も明るい星といわれる「Sirius(シリウス)」ほどの明るさに輝く可能性があるとしています。

【▲ 打ち上げ前のACS3の様子。非常にコンパクトな状態で打ち上げられる。(Credit: NASA)】

NASAによると、技術実証で得られたデータはより大きいソーラーセイルの設計に使用されます。またソーラーセイルは太陽風など地球へ影響を及ぼす天体現象を観測する宇宙天気早期警戒衛星や小型天体の観測ミッションなどで使用される見込みです。また軽量かつコンパクトな収納方法は月面基地や火星基地の建設などで利用される可能性もあります。

関連記事
NASAが「宇宙ヨット」向けの次世代技術を実証へ 何が変わる?(2024年4月26日)

Source

  • Rocket Lab – Beginning Of The Swarm
  • Rocket Lab – Rocket Lab Successfully Deploys Satellites ~500km Apart to Separate Orbits For KAIST and NASA
  • Rocket Lab – Rocket Lab Signs Deal to Launch South Korean Satellite
  • NASA – NASA Next-Generation Solar Sail Boom Technology Ready for Launch
  • SpaceNews – Electron launches South Korean imaging satellite and NASA solar sail

文/出口隼詩 編集/sorae編集部

© 株式会社sorae