登場怪獣ほぼフル紹介!『ゴジラxコング 新たなる帝国』で描かれる史上初(!?)健康トラブルや山崎貴監督リスペクトほかトリビア徹底解説【前編】

『ゴジラxコング 新たなる帝国』©2024 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

今年は『ゴジラ』(1954年)公開70周年! そんなめでたい年にふさわしく『ゴジラ-1.0』が第96回アカデミー賞でアジア映画史上初の視覚効果賞を受賞! さらに昨年11月3日に公開された『ゴジラ-1.0』から、わずか半年しか経っていない現在、ゴジラとキングコングという日米のレジェンド怪獣が遂に本格タッグを組む『ゴジラxコング 新たなる帝国』が絶賛公開中! という、ゴジラ70周年をこれ以上ないくらい盛り上げてくれるイベントが開催されている。

そんなわけで今回は、『新たなる帝国』のリピーターが続出してゴジラ70周年がさらに熱いものになってくれるように、本作の見所や元ネタを徹底解説して、微力ながらブームを援護射撃したいと思う。

※物語の内容に一部触れています。

アダム・ウィンガード監督の反省点と改良点とは

監督は前作『ゴジラvsコング』(2021年)に引き続きアダム・ウィンガードが担当。『』は、特にクライマックスの香港大決戦シーンは何度も観てしまうほど素晴らしい映画だと思う。しかし、当のウィンガード監督は、「人間の登場人物をたくさん出しすぎた。あまりにも多くのエピソードを盛り込みすぎて、怪獣の登場シーンが少なかった」と猛烈に反省したという。

あんなにゴージャスな映画だったのに……と思うのだが、ウィンガード監督的には納得がいかないご様子で、今作『ゴジラxコング 新たなる帝国』では新たな方向性を提示している。

まずは登場人物の数を絞る。さらに、記念すべきモンスター・ヴァース映画第1弾『GODZILLA ゴジラ』(2014年)以来初めて、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019年)のエコテロリスト集団のような“人間のヴィラン”を出さないことにした。

今回のストーリーを作るうえで、常にシンプルさを目指した。登場人物の数を減らせば、観客は彼らと過ごす時間が多くなり、よりストーリーを親密に感じてくれる。それに怪獣の登場シーンも多く描けるしね。

その結果、モンスター・ヴァース作品の中でトップクラスに<東宝チャンピオンまつり>風味が濃厚なゴキゲンかつチャイルディッシュな映画に仕上がっている。まあ、本作の人間キャラクターたちがモンスター・ヴァース作品の中でトップクラスに、というか不気味なほど物分かりが良すぎるので話がサクサク進んでいく、という意見もあるが、おかけでグッとくる怪獣シーンがたくさんあるから無問題!

ダン・スティーヴンス参戦! 新旧登場人物紹介

今回登場する人間側の主役キャラは、前作から続投する怪獣の調査機関モナークの人類言語学者アイリーン・アンドリュース(レベッカ・ホール)、髑髏島の先住民イーウィス族の少女で、アイリーンの義理の娘であるジア(ケイリー・ホトル)、ポッドキャストで怪獣絡みの陰謀論をシャウトし続けているバーニー・ヘイズ(ブライアン・タイリー・ヘンリー)、モナーク所属の怪獣専門ドクターで本作が初登場となるトラッパー(ダン・スティーヴンス)の4人。

なお残念なお知らせだが、前2作では主役級の扱いで「この方がモンスター・ヴァース・シリーズを背負って立つキャラなのかな?」と思われた、『ストレンジャー・シングス 未知の世界』(2016年~)のイレヴン役でおなじみミリー・ボビー・ブラウン演じるマディソンは登場しない。しかしウィンガード監督は「マディソンは今回の物語には登場させることができなかった。でも、今後のモンスター・ヴァース作品に戻ってくるかもしれないよ」と語っている。

物語は、地球征服を狙う謎の怪獣スカーキングの新たな野望を阻止するため、アイリーンたちとコングが、ゴジラに助けを求め共闘する、というもの。そんな『ゴジラ対メガロ』(1973年)を思わせるシンプルなお話の中に、ウィンガード監督のゴジラ愛&オタク趣味が豪快にトッピングされた見せ場がふんだんにある。

「コング対ワートドッグ」とハリウッド版メカゴジラのトリビア

「この映画の実質的な主人公はコングだよ」とウィンガード監督が語るように、本作も『ゴジラvsコング』に続きコングのシーンから幕開けする。

前作でメカゴジラを破壊した後、地球の地下空洞世界で暮らしていたコングが、狼やハイエナを醜くしたようなルックスの怪獣<ワートドッグ>(直訳:いぼ犬)の大群に追われている。このシーンで、コングが地下空洞世界内の縄張りのあちこちにジョン・ランボーばりの極悪かつ真心をこめたブービートラップをこしらえていた、という頭脳&器用さのオーナーであることが判明する。

ワートドッグはモンスター・ヴァース作品初登場の怪獣。本作に登場する怪獣のデザインを担当したのは、『ゴジラvsコング』、『ランペイジ 巨獣大乱闘』(2018年)、『ミュータント・タートルズ』シリーズ(2014年/2016年)等の作品でクリーチャー・デザインを担当したジャレッド・クリチェフスキー。彼はワートドッグをデザインする際、『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』(2002年)に登場した醜悪なルックスの狼怪獣、ワーグからインスピレーションを受けたという。

余談になるが、クリチェフスキーは『ゴジラvsコング』のメカゴジラをデザインした人物でもあり、驚くべきことに『レディ・プレイヤー1』(2018年)に登場したメカゴジラのデザインも担当している。つまり、ハリウッド映画に登場したメカゴジラのデザインは全部この御方の仕事! 作品の方向性によってタイプが違うメカゴジラをデザインできるスキルには頭が下がる。ちなみに『ゴジラvsコング』版メカゴジラは企画段階では、モンスター・ヴァース版ゴジラに似た顔とプロポーションのデザインも検討されていた。

そんなメカゴジラは今作には登場しないが、DCコミックのヒーロー・チーム<ジャスティス・リーグ>とモンスター・ヴァース怪獣たちとの激闘を描く、という夢がありすぎるコミック「Justice League vs. Godzilla vs. Kong」には登場している。しかも、『ゴジラvsコング』で破壊されたメカゴジラの残骸を入手したレックス・ルーサーによって作られた、という燃える設定で! さらに、バットマンがフラッシュやサイボーグと共に操縦するバットマン型巨大ロボ、グリーン・ランタン・ロボ、『超時空要塞マクロス』(1982~1983年)に登場したガウォークバルキリーのような形態に変形するバットウィングと戦う……という、イイ意味でクレイジーな作品なので、ぜひ日本語翻訳版を!

コング誕生から91年目にして初めて描かれる、まさかの健康トラブル

話題を戻すと、映画の冒頭で描かれるワートドッグとのチェイスシーンでは、コングが真っ二つに引き裂いたワートドッグから流れる緑色の血を全身に浴びて、『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』(1966年)に登場した怪獣ガイラ風なカラーリングになる――という、ウィンガード監督ならではの小粋なサービスもある。

そんなコングは、モンスター・ヴァース作品に初登場した『キングコング:髑髏島の巨神』(2017年)の時(※舞台設定は1973年)は身長約32メートルだったが、今回はなんと102メートルに成長! それに伴いデザインでは、ヒゲを延ばし、全身の毛が少し灰色になった。

さらにCG技術の発達により、コングの表情の豊かさもバージョンアップ! 本作はモンスター・ヴァース作品の中では最も”怪獣だけのシーン”が多い作品なのだが、コングの顔を見ていれば何を言いたいのかが伝わる、世界中のどこの国の方が鑑賞しても楽しめる言語を超越した映画に仕上がっている。

その後も映画は、ワートドッグの群れを壊滅させたコングの日常を追う。返り血を浴びた身体を滝で洗い流すコング。殺したワートドッグを召し上がるコングなど、ゴリラ・ファンおよびエイプ系怪獣が三度の飯よりも好きな方にはたまらないシーンが続く。が、しかし! ワートドッグの肉に食らいつこうとしたコングが顔をゆがめた……。

どうしたの? と思ったら、コングの立派な犬歯がハードコアな虫歯になっていた! という、『キングコング』(1933年)誕生から91年経った今年、まさかのコング史上トップクラスに厄介なお悩みを抱えていることが判明‼️ 一体どうなるのか!? 大作モンスター映画の主役怪獣が、怪獣映画的にはどうでも良さそうなトラブルに見舞われているとは……。ちなみに、この冒頭シーンでは『ゴジラvsコング』に初登場した、ワニを太らせたような怪獣<ダグ>も登場する。

「ゴジラVSスキュラ」と、前日端コミックに描かれた驚くべき真実

コングが歯痛で苦しんでいる頃、ローマでは、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』に登場した、蜘蛛のようなボディと長い6本の脚を持ち、クトゥルフのような面構えをした怪獣<スキュラ>が絶賛蹂躙中。

そこにゴジラが現れると、格の違いを見せつけてスキュラを瞬殺……。前作で描かれた香港での対コング戦では四足歩行で相手を追い詰める斬新な戦闘スタイルを披露してくれたが、本作ではさらにアップ・トゥ・デートされた戦闘スタイルをアピール!

ここでのゴジラは、戦闘開始直後にスキュラの脚を掴んで力いっぱい投げつけ、ダッシュしながら跳び上がるとスキュラの上に着地してマウントを取り、至近距離から放射熱戦を吐いて試合終了! という王の貫禄あふれる戦闘スタイルを披露。このシリーズのお約束である、放射熱戦を吐く前に背ビレが順番に発光していく時の“ブォンブォンブォ~ン!”という音も、ファンにとってはライトセーバーの作動音並みに心地良い。今回のゴジラはモンスター・ヴァース版ゴジラ史上最も俊敏かつアグレッシブな仕上がりになっているのではないでしょうか?

今でも一部ファンの間では、『ゴジラ対メガロ』(1973年)のゴジラがドロップキックをするシーンが、「ゴジラがあんなことできるわけねえだろ!」と不評を買っているが、本作のゴジラなら余裕でできる!

今回の対スキュラ戦は唐突に試合開始になるが、本作公開前にアメリカでリリースされた前日端コミック「Godzilla X Kong: The Hunted」では、この戦いに至った経緯が描かれている。『キング・オブ・モンスターズ』のラストではゴジラに頭を垂れていたスキュラだが、実は下剋上の機会を目論んでいたのだ。

“王”に成りあがるための準備としてインドの原発、イギリスの核癒合エネルギーセンター、イタリアの米軍核ミサイル基地を次々に襲って体内に核エネルギーをチャージしたスキュラ。満タンになってローマでゴキゲンに大暴れしていたところを、ゴジラにアッという間にシメられてしまう……。怪獣が地上で調子に乗ったらゴジラに処理される、というモンスター・ヴァース界の不文律を描いた大事なシーンだ。

ちなみにこの前日譚コミックではコングの活躍も描いていて、これまた画期的に素晴らしい。怪獣狩りに命を燃やすハンターが開発した巨大人型ロボット<タイタンハンター>と激闘を繰り広げるという、『キングコングの逆襲』(1967年)の対メカニコング戦を彷彿とさせる――というか正味な話、そんな燃えるカードなら映画でやってくださいよ! と懇願したくなるようなエピソードが描かれている。

話を映画に戻すと、スキュラを倒したゴジラはそのままローマに滞在。『グラディエーター』(2000年)でラッセル・クロウがたくさんの思い出を作り、『ドラゴンへの道』(1972年)ではブルース・リーとチャック・ノリスのベストバウトが繰り広げられ、『ダブルチーム』(1997年)ではミッキー・ロークが自爆したことでもお馴染みの、イタリアはローマが世界に誇る名所、古代ローマの円形闘技場コロシアムを、勝手に寝床にして熟睡する。

ゴジラ的には『キング・オブ・モンスターズ』で芹沢博士(演:渡辺謙)によって木っ端微塵に破壊された、海底の古巣を思わせる場所だから居ついてしまったのだろうが、近隣住民的にはヒヤヒヤが止まらない。このシーンは、アダム・ウィンガード監督が自宅で一緒に暮らしている猫が、猫ベッドで寝ている姿から着想を得たという。

ジェットジャガーやヘドラも登場!「ゴジラの落書き」シーンに込められた山崎貴監督リスペクトとは?

コロシアムでの休息を終えたゴジラがローマを去るシーン。街中の塀に描かれたデフォルメされたゴジラの落書きが映るのだが、ここにぜひ注目してほしい。サングラス姿でピザを食べるゴジラ以外にも、特撮ファンならグッとくる落書きが散りばめられているので!

まずは『怪獣大戦争』(1965年)のX星人円盤、『ゴジラ対ヘドラ』(1971年)のヘドラ、さらに『ゴジラ対メガロ』(1973年)に登場した電子ロボット、ジェットジャガーの片腕と共に書かれた「Punch! Punch! Punch!」という文字。そうです! 映画の主題歌「ゴジラとジェットジャガーでパンチ・パンチ・パンチ」の歌詞まで描いてあるんです!

これだけでも凄いのに、他にも『パシフィック・リム』(2013年)に登場した巨大怪獣ナイフヘッドの頭部や、カメ型怪獣の骸骨まで描いてある――という、モンスター・ヴァース作品の今後を期待させる逸品になっています。

なお、この落書きを映画のために描いたのは、「Godzilla: Monsters & Protectors #4」や「Godzilla Rivals vs. Gigan #1」などのゴジラ・コミックでカバーアートを手がけた、クリスチャン・ゴンザレスによるもの。自身のインスタグラムで『ジャンボーグA』(1973年)や『ファイヤーマン』(1973年)などの特撮ヒーローたちのイラストも投稿している、後戻りできないくらいゴリゴリにオタッキーなゴンザレスの感性がスパークしているシーンを、ぜひ堪能してほしい。落書きが登場した直後、その建物がゴジラに踏み潰されるので……。

踏み潰すといえば、ウィンガード監督は本作完成前に『ゴジラ -1.0』(2023年)の予告編を観てグッときたので、急遽、ローマでのシーンにゴジラの脚のクローズアップをトッピングして、山崎貴監督へのリスペクトを込めたという。

『キングコング2』を彷彿させる珍シーン「コングの虫歯治療」

いよいよ歯痛が限界突破したコングは地下空洞世界から地上にワープして、アイリーンやジアたちにSOSを要請。ここから映画は全長約102メートルの巨大怪獣の虫歯治療という、怪獣映画的には人跡未踏ゾーンに踏み込んだ映像がお披露目される。詳しい言及は避けるが、ワゴン車級サイズのコングの犬歯を、大掛かりなマシンを使って治療するシーンは、『キングコング2』(1986年)で描かれたコングの心臓移植手術シーンを凌駕する素晴らしい珍シーンになっているので期待してほしい。

ちなみにこのシーンはウィンガード監督のアイデア。彼が『サプライズ』(2011年)の撮影中、原因不明の歯痛を我慢しながら監督業を遂行しなければならなかった、というハードな体験を経て虫歯の恐ろしさが骨身に染みた結果、「怪獣も虫歯になったら大変なはずだ……。それなら『ゴジラxコング』で、コングの虫歯を治療するシーンを描こう!」と、ひらめいたという。

『ゴジラxコング』は観客がカタルシスを感じる映画にしたかった。歯医者に行って虫歯を治療してもらう行為は、誰もが共感できるスリルとカタルシスがある。それを全長103メートルのコングで描くことができれば、観客は度肝を抜くはずだ、と思ったんだ。このシーンは、僕が本作の監督を引き受けた時から描きたかった事なんだよ(笑)。

ウィンガード監督の真心とオタク心が炸裂した登場人物たち

映画史上最もスケールがデカい虫歯治療シーンで主治医を担当するのは、本作初登場のキャラで、モナーク所属の怪獣専門ドクター<トラッパー>。演じるダン・スティーヴンスは、ウィンガードが監督した「ナメてた相手が、実は殺人マシンでした!」サスペンス・ムービー、『ザ・ゲスト』(2014年)で主人公の殺人マシンを演じた御方。

『ザ・ゲスト』の後もダンには、また僕の映画に出演して欲しいと思っていたんだけど、なかなか実現できなくて……。だから、今回のトラッパー役はダンにしか演じることができないキャラクターにカスタマイズした。80年代のアクション・フィギュアのムードを漂わせたキャラクターにしようと思ったんだ。

……という惚れ惚れするくらいチャイルディッシュな意見を述べるウィンガード監督は、これまで何度も映画やコミックになってきたアメリカの人気フィギュア・シリーズ「G.I.ジョー」に登場する、ドレスコードが常に軍パン&アロハシャツという陽気なキャラ、チャックルズをトラッパーのキャラ作りのベースにした。

そんなウィンガード監督の熱意に応えたダンは、さらに『ロマンシング・ストーン 秘宝の谷』(1984年)でマイケル・ダグラスが演じた無鉄砲な冒険家ジャックと、『ゴーストハンターズ』(1986年)のカート・ラッセルが演じた陽気かつドジっ子なトラック運転手ジャックのキャラクターの要素もスパイス。かくして所ジョージ風ファッションの、普段はトボけた人間だがピンチの時には超頼りになる、おいしい新キャラが誕生した。

人間キャラを作る際、イイ意味で幼稚な感性をスパークさせるウィンガード監督のセンスは、他のキャラクターにも発揮されている。特に顕著なのが、前作『ゴジラvsコング』からの続投となる、ポッドキャストで怪獣絡みの陰謀論をシャウトし続けているバーニー・ヘイズ(ブライアン・タイリー・ヘンリー)だ。

彼は本作の初登場シーンで、ロバート・ギンティ主演の正義の処刑人ムービー『エクスタミネーター2』(1984年)のポスターアートがプリントされたTシャツを着用! この映画、一般的にはスルーしても無問題だが、「ナメてた相手が、実は殺人マシンでした!」ムービー的には大事な作品。2024年にIMAXスクリーンで『エクスタミネーター2』のポスターアートをアピールして、この映画の素晴らしさを少しでも後世に残そうとするウィンガード監督の志の高さには頭が下がる思いです!

他にも、バーニーの部屋のシーンでは『GODZILLA ゴジラ』(2014年)で主人公フォード・ブロディ(アーロン・テイラー=ジョンソン)が少年時代に暮らしていたの日本の自室に飾ってあった、架空の怪獣映画『カニラ対ハブラ』のポスターが貼ってあることも確認できる。

「カラフルで楽しかった昭和のゴジラ映画のような作品を目指している」

ウィンガード監督の信用できるチャイルデッッシュ感性は当然、人間パートだけでなく随所にわたりスパークしている。怪獣方面での話は後でたっぷり解説するとして、まず紹介しなければいけないのは『ゴジラvsコング』でも楽しませてくれた、まるで夜の新宿歌舞伎町やゴージャスなクラブのようなカラフルでまばゆいネオンカラーが特徴的なカラービジュアル。特にクライマックスの夜の香港でのゴジラ対コング戦は、いまだに繰り返し観てしまうほどウットリする仕上がりだった。

本作も光の演出が見事。トラッパーやバーニーたち人間チームが地上から地下空洞世界へ旅立つシーンや、地下世界で妖しい光を放つクリスタル、金色の光をスクリーンいっぱいに放つモスラ、背びれや体表がピンク色に光るゴジラなど、うっとりしてしまうシーンが満載。

このカラフルでド派手なカラービジュアルについてウィンガード監督は、こう明かしている。

ビジュアルアーティストと話している時、この映画の色彩感覚は僕が子供だった頃、『戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー』(1984~1986年)、『地上最強のエキスパートチーム G.I.ジョー』(1983~1987年)、『サンダーキャッツ』(1985~1989年)などが人気だった、1980年代のネオンカラーに彩られていたオモチャ売り場のムードを手本にして、とお願いしたんだ。当時は『トランスフォーマー』や『G.I.ジョー』などのオモチャの黄金期で、それらの作品から学んだセンスが今も僕の精神に深く根づいている。ゴジラ映画に出会ったのもこの頃だよ。

当時は昼間のテレビでいつもゴジラ映画が放映されていて、『怪獣大戦争』(1965年)、『三大怪獣 地球最大の決戦』(1954年)、『怪獣総進撃』(1968年)といったクラシックなゴジラ映画を楽しんだよ。これらの映画のテクニカラーのサイケデリックなムードは、80年代にオモチャ売り場のネオンカラーを浴びていた僕にはとても心地良いものだった。この頃の体験が僕が映画を作ることになった原点で、そこで培った感覚をモンスター・ヴァースの世界観に取り入れて、カラフルで楽しかった昭和のゴジラ映画のような作品を僕なりに目指しているんだ。

文:ギンティ小林

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『ゴジラxコング 新たなる帝国』は全国公開中

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