「懐かしいですね。あいつがフワっとしていた時が」川崎の大先輩・谷口彰悟の言葉から紐解く高井幸大の成長「これから引っ張っていく存在になる」【U-23アジア杯】

高い打点のヘッドで屈強な相手FWに競り勝ち、地上戦でも身体を張ったディフェンスで突破を許さない。正確なビルドアップも磨きがかかり、左右に蹴り分けて攻撃の出発点となる。隙あらば自らボールを持ち運び、積極的に縦パスを通す。1年前と比べれば、想像ができないほどのパフォーマンスだろう。それほどまでにU-23アジアカップでのプレーは際立っていた。

高井幸大、19歳。川崎フロンターレのアカデミーで育った192センチの大型CBは、飛躍の時を迎えようとしている。

パリ五輪のアジア最終予選を兼ねるU-23アジア杯で、高井はここまでグループステージ(GS)第2節のUAE戦(2-0)以外、先発で起用されている。GS最終節の韓国戦(0-1)から準決勝のイラク戦(2-0)までは3試合連続でフル出場。パリ五輪行きを決めたチームにおいて、欠かせない存在になっている。

仲間たちからも絶大な信頼を寄せられており、賛辞が止まない。

「僕がどうこういうのはあれですけど、高井は若いけど、ちゃんとグイグイこっちに要求してくるし、度胸もすごい。やっぱりフロンターレで出ているだけあって、技術も高いし、カバーリングのところもうまく対応してくれる」(MF山本理仁/シント=トロイデン)

U-20ワールドカップでもチームメイトだったMF松木玖生(FC東京)も「自分が言えることではないんですけど」と前置きしたうえで、「すごく成長していますし、一緒にプレーをしていて、高井がそこにいたらやられないだろうなって思っている。彼への信頼はすごくあります」と頼りにしている様子だ。

以前のように集中力を切らす場面が減り、最後の最後まで安定したプレーを見せられるようになっている。では、なぜここまで成長できたのか。川崎の大先輩でもある日本代表の谷口彰悟(アル・ラーヤン)は高井についてこう話す。

「プレーを見ても、責任感、自分が引っ張っていく、自分が締めるという想いを感じる。その気持ちというか、その状態が僕は大事だと思う。責任感とかリーダーシップを取ってやっていく。それをやり始めた方が絶対に伸びる」

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川崎を離れ、カタールの地にやってきて1年半。久しぶりに後輩と再会し、今大会も何度か観戦に訪れた。そこで見たのは、成長した高井の姿だった。

「(自分の性格に)合っている、合っていないとか、成功や失敗とか関係なしに、練習も試合も(その姿勢で)臨むことで確実に経験値が上がっていく。そういう状況で幸大はやれているというのは、見ていて分かった。やっぱり、あのサイズであの能力がある選手なので、これからどんどん引っ張っていく存在になる。そこは僕も期待していますし、この大会を通じてどんどんリーダーシップを取ってやってもらえればなと思います」

高井は成長の原動力として“考えること”とコーチングの量を増やしたことを挙げていたが、そうした変化はリーダーシップを取ろうとする姿勢があるからこそ。実際に今回のチームでも自ら言葉を発し、ロッカールームでも率先して「やろうぜ!」と発破をかけて仲間たちを鼓舞していたという。

「懐かしいですね。あいつがフワっとしていた時が」と懐かしそうに笑った谷口からも認められ、高井は右肩上がりで成長を続けている。

5月3日に行なわれるU-23アジア杯の決勝・ウズベキスタン戦ではどんなプレーを見せるのか。「昨年のU-20ワールドカップで経験したことだけじゃないけど、いろんな体験をこの1、2年でできた。自分もすごく成長できたと思うので今、示せているのは一番良いこと」と充実した表情を見せた背番号22は、深めた自信を確固たるものにすべく、ファイナルのピッチに立つ。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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