「アンフィールドを離れて活躍している」錚々たる顔ぶれに南野拓実の名も! クロップ体制での最高額補強選手を回顧した専門メディアが再脚光

今季限りでリバプールの監督を退任することが発表されているユルゲン・クロップ。56歳のドイツ人智将にとって、プレミアリーグ、チャンピオンズ・リーグ、クラブワールドカップと全てのビッグタイトルを勝ち取った「レッズ」での挑戦は終わりを告げることとなる。

2001年に母国のクラブ、マインツで監督業をスタートさせた彼は、2008年にはドルトムントに移り、斬新なカウンター戦術「ゲーゲンプレス」を駆使して2011年からブンデスリーガ2連覇を果たして名将の地位を手に入れた彼は、2015年から世界最高峰リーグであるプレミアリーグで、さらにその地位と価値を高めた。

そのキャリアは、偉大なスター選手との共闘の歴史でもあり、またクロップ監督自身が多くの原石をまばゆい輝きを放つ宝石に磨き上げてきた。日本人選手では、香川真司(現セレッソ大阪)もその恩恵を受けたひとりであり、2010年に育成補償金35万ユーロ(約4000万円)でドルトムントに加入し、ここでのMVP級の活躍によって2年後には1600万ユーロ(約19億円)の移籍金を残してマンチェスター・ユナイテッドに新天地を求めた。

英国のサッカー専門サイト『PLANET FOOTBALL』は、(それまで財政難の影響で補強に消極的だったドルトムントが本格的な強化を始めた)2009年以降、クロップ監督率いるチームが獲得した最も高価(移籍金)な選手を以下の通り、シーズンごとに挙げて、それぞれの獲得の経緯や現状にも言及している。

2009-10:マッツ・フンメルス(←バイエルン/現ドルトムント)
2010-11:ロベルト・レバンドフスキ(←レフ・ポズナン/現バルセロナ)
2011-12:イルカイ・ギュンドアン(←ニュルンベルク/現バルセロナ)
2012-13:マルコ・ロイス(←ボルシアMG/現ドルトムント)
2013-14:ヘンリク・ムヒタリアン(←シャフタール・ドネツク/現インテル)
2014-15:チーロ・インモービレ(←トリノ/現ラツィオ)
2015-16:マルコ・グルイッチ(←レッドスター/現ポルト)
2016-17:サディオ・マネ(←サウサンプトン/現アル・ナスル)
2017-18:フィルジル・ファン・ダイク(←サウサンプトン/現リバプール)
2018-19:アリソン(←ローマ/現リバプール)
2019-20:南野拓実(←レッドブル・ザルツブルク/現モナコ)
2020-21:ディオゴ・ジョタ(←ウォルバーハンプトン/現リバプール)
2021-22:ルイス・ディアス(←ポルト/現リバプール)
2022-23:ダルウィン・ヌニェス(←ベンフィカ/現リバプール)
2023-24:ドミニク・ソボスライ(←RBライプツィヒ/現リバプール)

錚々たる顔ぶれの中、同メディアが「おそらく、クロップの監督キャリアにおいて最高の補強だろう」としたのが、レバンドフスキだ。「ドルトムントがこのポーランド人FW獲得に費やした金額はわずか450万ユーロ(約7億円)で、得点を量産してリーガ連覇に貢献した後、2014年にバイエルンに売却する際には約4250万ポンド(約82億円)を稼いだ」(同メディア)。
そして、ここに日本人選手として唯一名を連ねたのが、2019-20シーズンの南野拓実である。同シーズンのチャンピオンズ・リーグでリバプールとザルツブルクが対戦した際に1ゴール・1アシストの大活躍を見せたことが決め手となり、2020年1月にクラブ史上初のアジア人選手としてレッズの一員となった彼は、2021年2月からのサウサンプトンへのレンタル期間を含め、2シーズン半で55試合に出場して15得点を記録した。

同メディアは、「2019-20シーズンは、すでに強力な主力選手が揃っていたため、リバプールは補強にあまり力を入れず、わずか720万ポンドで獲得した南野が最も高価だった。この日本人プレーメーカーは、特にカップ戦で才能の片鱗を見せたが、アンフィールドでのチャンスは限られていた。2022年に退団した後、リーグアンのモナコでベストフォームを取り戻すのに成功。アンフィールドを離れて活躍している、元リバプールの選手のひとりである」と、南野について綴っている。

クロップ監督は、南野がカップ戦で結果を残し続けていた時期、他に優れた選手を多く擁しているがゆえに、この日本人選手にチャンスを与えられないことに心を痛めていることを告白したり、彼の退団後にもしばしばその名前を出したりしていたものである。

明らかな成功を収めた香川と比較すれば苦労の多かった南野だが、このドイツ人指揮官にとっては十分に印象に残る選手のひとりだったのではないだろうか。

構成●THE DIGEST編集部

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