水川あさみ×櫻井翔、“夫婦”から“追われる”関係に 『笑うマトリョーシカ』への期待

7月期のTBS金曜ドラマ枠にて『笑うマトリョーシカ』が放送されることが決定した。水川あさみが主演を務め、玉山鉄二、櫻井翔が共演する。

早見和真の同名小説の実写化となる本作は、人間の欲望と謎が絡み合うヒューマン政治サスペンス。脚本を、『ROOKIES』(TBS系)や現在放送中の『ACMA:GAME アクマゲーム』(日本テレビ系)も手がけているいずみ吉紘と『うちの弁護士は手がかかる』(フジテレビ系)などで知られる神田優が担当する。プロデューサーはTBSドラマ『夕暮れに、手をつなぐ』『危険なビーナス』などを手がけた橋本芙美が務める。

水川が演じるのは、社会部で異様なまでの探求心を発揮する敏腕記者だったものの、あるスクープをきっかけに文芸部に異動させられてしまう新聞記者・道上香苗。未来の総理候補ともいわれる若き人気政治家・清家一郎を取材した道上だったが、清家とその秘書の関係性に違和感を覚えるのだった。

玉山が演じるのは、清家の政務秘書官・鈴木俊哉。清家とは高校時代からの付き合いで、当時から彼に政治家の素質を見出していた。そして現在は、有能な政務秘書官として清家を支え、総理大臣へ導くことにすべてを捧げている。そして物語を司る若き政治家・清家一郎を演じるのが櫻井。43歳の若さで厚生労働大臣として初入閣した清家は、国民から抜群の人気を誇る未来の総理候補だ。全てが完璧でクリーンなイメージのある清家だが、その裏で不審な死亡事故がいくつも起きていた。

『笑うマトリョーシカ』で注目したいのは、異様な関係の清家と鈴木、そしてそれを追う道上、3人の関係性とその変化だ。本作を担当する脚本家やプロデューサーがこれまで手がけてきたドラマは、簡単な言葉でまとめると、身近な人との関係性が変化することで、その人を取り巻く環境、そしてその人自身も大きく変わっていくものなのである。

神田優が脚本を務めた『うちの弁護士は手がかかる』は、敏腕な“元”芸能マネージャーと超天才な新人弁護士の異色バディの奮闘する姿を描いたもの。“元”芸能マネージャーの主人公・蔵前勉(ムロツヨシ)はパラリーガルになっても仕事がかなりでき、「香澄法律事務所」所属の新人弁護士・天野杏(平手友梨奈)は、蔵前と出会ったことで、仕事の成果を出せるようになった。これだけでも、一度挫折した人が再生する物語、または青年が成長する物語なのだが、それだけでは終わらなかったところがこのドラマの魅力的なところ。

蔵前は杏との仕事に満足していたが、過去の経験から、ふとしたことで発作的に「自分は必要とされていないのだ」という思いに苛まれることがあった。一方で杏は、自らの生い立ちが影響してか、大切な人の前ほど素直になれない性格だった。そのため、ふたりは一度、けんか別れのような形でバディを解消している。そしてその時にそれぞれの大きな力になったのが「香澄法律事務所」のメンバーたちだったのだ。

『笑うマトリョーシカ』で道上が清家を取材対象とするきっかけとなったのは、同じく新聞記者だった父が、長年追っていた事件の取材中に突如事故死したこと。その不審な死と、父が死の直前まで取材していた“ある事件”の背景に清家の秘書が浮上したのだ。つまり、本作でも早い段階から、父の死という出来事をきっかけに親子に“関係性の変化”が起こり、道上の環境が大きく変化してしまう。きっと高校時代の付き合いだったという清家と鈴木の間にもこのような“関係性の変化”があったことだろう。その過程が描かれるかは不明だが、想像するだけで少し不穏な感じがしてドキドキしてくる。

その一方で、道上と清家の関係がどのようなものになるのかは未知数だ。演じる水川と櫻井は、2004年に公開された映画『ピカ☆☆ンチ LIFE IS HARDだからHAPPY』でそれぞれ、弥生と忠を演じ、ふたりは夫婦だった。忠のタイマン中に彼に惚れた弥生は、年を経ても忠のことを誰よりも理解している女性だった。だが、『笑うマトリョーシカ』では一転して、追う者と追われる者。この複雑な関係をふたりがどう演じていくか、期待して放送を心待ちにしたい。
(文=久保田ひかる)

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