NewJeans、奴隷契約、シャーマン…HYBEに対するミン・ヒジン代表“9つの反論”は本当に妥当なのか【徹底検証】

HYBE(ハイブ)とADOR(アドア)のミン・ヒジン代表による法的攻防が始まったなか、ADOR側が再反論に乗り出している。

ミン・ヒジン代表の記者会見で言及された内容を9つの争点に整理して再反論し、重ねて立場表明に出たわけだ。

では、「憶測と誤解の解消に役立ててほしい」というADOR側の主張は、はたしてすべて妥当なのだろうか。

これに先立ち、ADORは5月2日に法務法人セジョンを通じて、HYBEとの今回の葛藤と関連した主要な争点9つに対する立場を明らかにした。

ADOR側が明らかにした9つの争点とは、△経営権奪取疑惑、△金銭的補償、△内部告発および監査の過程、△最初のガールズグループとしてデビューさせるというHYBEの約束、△デビュー時にNewJeansのプロモーションをするな伝えた部分、△奴隷契約ではなかったという主張、△そのほか株主間契約と後続報道、△シャーマン(呪術師)がただの知人だという事実、△HYBEはNewJeansを惜しまないという事実関連内容だった。

そこで今回、9つの争点を通じて再反論に出たミン・ヒジン代表側の主張に誤りがないかを調べてみた。

1.経営権奪取は「実体のない虚しい主張」なのか

ミン・ヒジン代表側は、HYBEが提起した経営権奪取疑惑と関連して「実体のない虚しい主張だ。根拠として提示した資料は経営権奪取を目的としたものではなく、HYBEとの継続的な葛藤のなかで出てきた“想像”だ。それに関連するいかなる具体的な計画も、実行もなかったことを改めて明確に申し上げる」と強調した。

しかし、今回の疑惑に対する見方はさまざまだ。

「想像」は頭の中の考えであり、「私談(サダム=私語)」は個人間の私的な対話を意味する。

一つの会社の代表と経営陣が交わした経営権奪取の謀議を、単純な想像と見ることができるだろうか。

さらに、今回の監査で把握された文書は、言葉ではなく考えが整理されたものと見なければならないという意見だ。HYBE側が実際に数カ月間の計画と実行を立証する根拠を対話録と文書で確認したと明らかにしただけに、事実関係は今後の捜査過程で明確になるものと見られる。

これと関連し、内部文書を作成したと名指しされたL氏に対して「尻尾切りに遭うのでHYBEに協力しろという懐柔を受けた」という主張は合理的なのだろうか。

HYBE経営陣は、L氏が尻尾切りの被害者になることについて懸念を表明したのかもしれない。HYBEは、ミン・ヒジン代表が経営権奪取計画に対してL氏に「私談で処理せよ」と指示した文書も確認したと知られただけに、この部分もやはり尻尾切りを試みた情況と解釈することもできる。

また、ミン・ヒジン代表側はL氏と関連し、「該当文書を作成した当事者の副代表L氏は被告発人から除外されたことを確認した。HYBEは対話が交わされた内容の前後の文脈を考慮せず、当初の目的が経営権奪取であるかのように悪意的に組み込み、意図的に言論に大々的に報道した」と主張した。

(写真提供=OSEN)ミン・ヒジン代表

ミン・ヒジン代表側の主張と異なり、L氏は登記役員ではなく、HYBE側から告発がなされなかったことが明らかになった。

HYBE側は、経営権奪取行為を計画及び実行した疑惑を受けているADORの登記役員(ミン・ヒジン代表、シン·ドンフン副代表)を告発した。L氏は登記役員ではなく、今後の捜査過程で被疑者に転換される可能性があると伝えられている。

さらに、ミン・ヒジン代表側が今回の疑惑と関連した文書を「私談」や「想像」などに意味を縮小しているという指摘もある。

ミン・ヒジン代表も記者会見において、今回の事案とかけ離れた内容のモバイルメッセンジャーの対話の一部や中間を削除した状態で、選択して公開したことがある。

2.金銭的補償の金額が問題ではなく「決定の基準」が問題なのか

ミン・ヒジン代表は先日の記者会見で、「ADOR設立後2年で335億ウォン(日本円=約33億5000万円)の営業利益を達成し、インセンティブ20億ウォン(約2億円)を受け取った」と明らかにした。

そして、「インセンティブ決定の基準とその決定過程の透明性について指摘した」と反論した。

しかし、ミン代表の問題提起に透明性を指摘する声も高い。

ミン・ヒジン代表は処遇交渉の間、自身がHYBEのパク・ジウォンCEOよりわずか10億ウォン(約1億円)多いインセンティブを受けるとして、暴言を日常的に行ったという主張も出ている。

パク・ジウォンCEOは就任以降、継続的な事業拡張と成長モデル構築、売上と営業利益など黒字経営を続けてきた。親会社のCEOより多くのインセンティブを受け取る傘下レーベルの代表が、インセンティブの透明性を指摘することが正当なのかという指摘だ。

3.内部告発と監査、世論戦は計画的だったのか

ミン・ヒジン代表は記者会見と5月2日の立場文を通じて、何度も内部告発関連の答弁と監査過程に対する問題を指摘した経緯がある。

ミン・ヒジン代表側は「4月22日午前10時、パク・ジウォン代表がADORの内部告発メールが返信されたという。同時に、HYBEは副代表のノートパソコンを押収するなど監査を始めた。それだけでなく同時に、ミン・ヒジン代表の辞任を求める株主総会招集を要求する公文書を送ってきて、数時間後にADOR経営陣に電撃的に監査権を発動したというニュースが報道された」とし、「実体が確認されていない内容まで編集し、リアルタイム中継のように報道した」と主張した。

これに先立ち、HYBE側が明らかにした立場によると、ミン・ヒジン代表が主張した疑惑提起のメールに対し、A4用紙6枚分の答弁書を4月22日に返信完了し、ミン・ヒジン代表は約2時間後に該当の答弁を確認したという記録がある。

その後、即時の監査措置が行われたのは、すでにミン・ヒジン代表がHYBEを誹謗する世論戦を計画(5月世論戦文書)したことによるものとみられる。

HYBE側が公開した内容によると、該当文書にはアーティストのカムバック時、本人たちの経営権奪取のためのHYBE誹謗世論を提起すれば、HYBEは身動きが取れなくなるという旨の内容があった。

さらに、監査は不正事実を確認次第着手することが原則であり、HYBE監査委員会の承認を得たものであること。検察の家宅捜索が事前告知されないよう、重大な不正に対する監査も証拠隠滅の恐れがあるため、当事者に事前告知なく速かに施行することわかった。

また、HYBEの構成員がクラウドで業務を進め、文書と資料をクラウドを通じて確認できただけに、PC回収と交換を「業務妨害」とみなすことは難しいという意見もある。

4.NewJeansはなぜHYBE最初のガールズグループになれなかったのか

ミン・ヒジン代表は先日の記者会見で、HYBEとNewJeansの関係について何度も強調した。

HYBEがNewJeansを最初のガールズグループとしてデビューさせるという約束を守らず、結局ミン・ヒジン代表が持分を放棄、ADOR設立を要請し、NewJeansメンバーを移動させてようやくデビューさせられたという内容だった。

しかし、この主張にも誤りはあった。

NewJeansがHYBE最初のガールズグループとしてデビューできなかったのは、HYBE側の立場によると、ミン・ヒジン代表がSOURCE MUSICではなく本人の別途レーベルでデビューさせると強く主張したためだ。

これに伴い、法人設立に相当な時間がかかった影響でガールズグループの人員をSOURCE MUSICで育成したため、譲受渡のために経営陣の同意などの手続きが必要だったわけだ。

5.HYBEはNewJeansのデビュープロモーションを阻止したのか

ミン・ヒジン代表は「HYBE側からNewJeansのプロモーションが阻止された」と主張した。

ミン・ヒジン代表側は、「HYBEはサクラがSOURCE MUSICに合流するという事実と、NewJeansのメンバー構成に対する情報もともに露出する恐れがあったというが、これは事実と違うだけでなく論理的にも合わない」とし、「当時、HYBEは市場に“LE SSERAFIMがミン・ヒジンのガールズグループである可能性もある”という混線を与えたかったし、それに伴い、ADORに“NewJeansのプロモーションをしないでほしい”と、パク・ジウォン代表が電話とSNSを通じて露骨に頼んできた事実がある」と主張した。

しかし通常、大型芸能事務所で新人のプロモーションにおける情報露出への懸念が大きいのはよくあることだ。

NewJeansのプロモーションだけを阻止したというよりは、NewJeansとLE SSERAFIM両グループの“ニュースバリュー”を保護するための要請と解釈できる。

6.株主間契約は「奴隷契約」なのか

ミン・ヒジン代表は先日の記者会見で、HYBEとの株主間契約によって一生会社から抜け出すことはできないという趣旨の発言をした。

2日の立場文では「競業禁止条項の必要性を否定するものではない」とし、「ただし、競業禁止の対象事業と期間が合理的でなければならないが、現在の株主間契約はそうではない」とし、不公平性を解決しようと立場を示していた。

競業禁止は、ともに会社を成功させる趣旨と解釈できる。

さらに、1~2000億ウォン(約1~200億円)台の莫大な補償を受けるレーベルの代表に対する一定の競業禁止は、契約慣例上で一般的だと知られている。

ミン・ヒジン代表はマルチプル30倍、追加持分5%に対するプットオプション適用など、補償額を増やそうとする追加条件を要求したことが明らかになったが、そうなれば持分価値は直に数千億ウォン台に増える。

このような天文学的な補償に、競業禁止のような制約がないのは常識的ではないという反応だ。さらに、第3者に口外することが禁止された株主間契約内容を記者会見で言及したことも問題になりうる。

7.現在の葛藤は「金銭的な動機」から始まったのか

ミン・ヒジン代表側は株主間契約関連の後続報道に対し、「HYBEはプットオプションと関連してミン代表が30倍数を主張したとし、あたかも現在の葛藤が金銭的動機から始まったものだとごまかしている。だが、30倍数は今後のボーイズグループ制作価値を反映した内容であり、さまざまな不合理要素を持っていた株主間契約を変更する過程での提案の一つに過ぎず、交渉優先順位にある項目でもなかった」と立場を伝えた。

しかし、まだデビューもしておらず、成果の測定が不可能なイベントを補償の根拠にすることが可能だろうか。

ミン・ヒジン代表側がボーイズグループの制作価値を反映した内容だと主張したが、これはまだ示現されていない仮定だ。この仮定でミン代表が得る補償を増やすことは、株主価値を毀損することになり得るのが事実だ。

8.「ただの知人」というシャーマンの経営介入はなかったのか

ミン・ヒジン代表側は、HYBEが主張した“呪術経営”に対する立場も伝えた。

ミン・ヒジン代表は記者会見内で、シャーマンについて「知人がシャーマンに過ぎない」と立場を示し、2日に公開した立場文でも「NewJeansの成功とADORが短期間で成し遂げた驚くべき実績は、合理的な経営意思決定に基づいたものだ。HYBEがADORの成功を貶め、否定するためのこのようなフレームを組んでいる」と主張した。

ただし、HYBEが指摘した部分は、ミン·ヒジン代表の知人がシャーマンであることから、該当の知人(シャーマン)が経営全般の細部に介入したという「行為」だ。

HYBE側が先月25日に明らかにした内容によると、ミン・ヒジン代表は人事や採用など重要な会社の経営上の事項について、女性シャーマンから“コーチング”を受け、履行していたことが明らかになった。

フォレンジックを通じて確保した対話録によると、シャーマンは2021年にミン・ヒジン代表に「3年後に会社を持って来い」と助言し、ミン代表もHYBE株式の売却のタイミングなどを議論していた。

9.HYBEはNewJeansを惜しまないのか

ミン・ヒジン代表は記者会見でも2日の立場文でも、HYBEがNewJeansを惜しまないという主張を繰り広げてきた。特に、NewJeansの5月のカムバックを控えて今回の話題を爆発させたと指摘した。

しかし、ミン・ヒジン代表の主張とは異なり、HYBE側はNewJeansのカムバックを支障なく進め、メンバーが動揺しないように最善を尽くして気を使うことを何度も強調してきた。これは「NewJeansを惜しまない」というミン・ヒジン代表側の主張と距離がある。

また、HYBEはアーティスト保護のために可能な限り言及を避け、ミン・ヒジン代表に提起した問題だけに集中した。ただ、ミン・ヒジン代表は記者会見中に継続的にNewJeansに言及したのはもちろん、「私の子どもたち」「お母さん」と表現するなどアーティストを引き込んだ。

NewJeansのメンバーの状態についても直接的に取り上げるなど、むしろより多くの注目を集めた。はたしてHYBEはNewJeansを惜しまないという一方的な主張が妥当なのか、改めて考えてみる必要があるようだ。

(記事提供=OSEN)

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