デビュー戦のGAINER TANAX Zは波乱の一日を送るも、予選で速さの片鱗を披露

 2024年のスーパーGTで、注目の一台とも言えるのがGT300クラスに参戦するGAINER TANAX Z。ニッサン・フェアレディZをベースにGTA-GT300規定に則って製作されたマシンは、第1戦では走行できなかったものの、その後岡山でシェイクダウンを行い、5月3〜4日の第2戦富士に臨んだ。迎えた走行初日となった5月3日の予選日は、チームにとって波乱に富んだ一日となったが、予選でそのポテンシャルの片鱗を見せつけた。

 GAINER TANAX Zは、長年GT300クラスでタイトルを争うGAINERがベースから製作したGTA-GT300規定車両。ただ度重なる仕様変更により車両完成が遅れ、3月に2回行われた公式テストに参加できず。さらに4月の第1戦岡山でもサーキットに登場したものの、走行することができなかった。

 そんなGAINER TANAX Zだが、4月25日に岡山国際サーキットのスポーツ走行枠を使ってシェイクダウンを実施し、第2戦富士に持ち込まれた。ただ、予選日となった5月3日は9時から行われた公式練習で走行することができなかった。

 実は、事前にGAINERがファクトリーで計測した車幅の数値と富士スピードウェイの車検場で計測した数値に差異があり、3日までに修正を行ったものの、予選日朝の公開車検でさらに異なる数字になってしまったのだという。車検を通過していなければ走行ができず、チームは午前中を使って修正を行っていた。

 チームの必死の作業により、午前の段階で車検合格をもらい、午後の公式予選には参加できるようになったものの、予選がまさかの“ぶっつけ本番”になってしまった。「そんなに甘くはないですよ」と語っていたのは福田洋介チーフエンジニアだったが、午後2時43分にスタートしたA組に出走したGAINER TANAX Zは、思わぬ速さの片鱗をみせた。

 岡山でのシェイクダウンでは、車両を壊さないように足回りをかなり固めた状態で走っており、「本当に転がしただけ(福田チーフエンジニア)」とタイム計測もあまりできていなかった状態。しかも富士向けにはセットアップも満足に追求できていない状況だった。

 しかし、Q1に富田竜一郎のドライブで出走したGAINER TANAX Zは、3周目に1分36秒955を記録。さらに翌周には1分36秒484までタイムを伸ばした。その直前のB組のベストタイムがJLOC Lamborghini GT3の1分36秒084だったのだから、十分に戦えるタイムと言える。いち早くアタックを行ったことからタイミングモニターの最上位につけ、走行を見守っていた多くのファン、関係者を驚かせた。

「アタックラップのときだけ、コクピットのモニターにタイムが出なくなってしまっていたんです。分からないまま走っていたのですが、無線で聞いたら『5番手だよ』と。タイムも1分36秒484が出たと聞いて、自分でも驚きました(笑)」というのは富田。

「岡山のシェイクダウンで感じたポテンシャルの高さは間違っていなかったです。予選の直前に変えたセットアップも良い方向にいっていました。フィーリングも良かったです」とアタックを振り返った。

「少し跳ねている感じがあると思いますが、そこさえもう少し詰められれば、すごく良いクルマになると思います」

 これで予選Q2でもアッパー16に進出したが、石川京侍が乗り込んだQ2では、シフトが入らないトラブルが起きてしまい、出走はならず。予選上位につけることはできず、決勝ではピットスタートを強いられることになったが、チームも富田も、GAINER TANAX Zのポテンシャルに大きな期待を抱くことができた一日となった。

「いまがパフォーマンスとしては最底辺にある状況ですし、マイナートラブルもありますがそれは仕方がない。トラブルがあって遅かったらどうしようもないですが、昨日チームのみんなが夜中まで作業して、今日の午前は走れなかったけれど、予選であのパフォーマンスを出せたことは、チームとしてもすごくポジティブでした」と富田は語った。

 結果的にピットスタートにはなったが、今回の第2戦は成熟を目指すレースであることを考えると、GAINER TANAX Zにとっては逆に好都合とも言えるかもしれない。「良いクルマだと思います」と富田が称賛するそのポテンシャルの片鱗が発揮されたのが、今日の予選Q1だった。

2024スーパーGT第2戦富士 GAINER TANAX Z(富田竜一郎/石川京侍)

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