戦後は食糧難だった沖縄 米国から豚550頭を届け救った故安慶名良信さんが漫画に 出身地のうるま市が小中学校に配る

 沖縄県うるま市教育委員会は4月23日、同市役所で、食糧難に陥った終戦後の沖縄に米国から豚550頭を船で届けた同市出身の故安慶名良信さんを題材にした漫画「安慶名良信物語-豚がつないだハワイと沖縄-」をみどり町児童館の児童に贈呈した。地元の歴史を学んでもらうため、漫画は市内全小中学校に40冊ずつ配布される。嘉手苅弘美教育長は「歴史を学び、生きる知恵を育ててほしい」と期待した。同市が米国から沖縄に豚を届けた物語を漫画にしたのは初めて。(中部報道部・又吉朝香)

 安慶名さんは豚を送り届けるプロジェクトを企画した「ハワイ連合沖縄救済会」のメンバー。同会が豚の購入のためハワイで5万ドルを集めたことや、米国から沖縄への航海中に嵐や漂流する機雷と遭遇し、苦難の連続であったことなどが描かれている。

 同市教委の他に安慶名さんの故郷・具志川自治会、布哇(ハワイ)海豚顕彰会などが漫画制作に関わった。その中で豚を米国から運んだジョン・オーウェン号の全体像や米国紙で「550頭の豚が沖縄に運ばれる」と報道されていたなど、新たな資料も見つかった。

 B&G財団(東京)の「ふるさとゆかりの偉人マンガの製作と活用事業」で300万円の助成と、同市の一般会計予算の約55万円と合わせて計1500冊を発刊。7月からB&G財団のホームページでも公開される。

 漫画をもらった天願小3年の新垣奏太朗さん(8)は「うるま市の人が、沖縄のことを思って豚を贈ってくれた歴史があったと初めて知った。家に帰ってゆっくり読みたい」と話した。

うるま市みどり町児童館の新垣奏太朗さん(前列左から2人目)らに漫画を贈る同市教育委員会の嘉手苅弘美教育長(左)=4月23日、同市役所
うるま市教育委員会が発刊した漫画「安慶名良信物語-豚がつないだハワイと沖縄-」

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