岸田内閣総理大臣が3日来伯=ルーラ大統領と連携強化を確認=「2国関係を次のレベルに」

記者会見に臨んだ岸田内閣総理大臣(CanalGOV)

 日本の総理大臣として約10年ぶりにブラジルを公式訪問した岸田文雄内閣総理大臣は3日午前、ブラジリアの大統領府でルーラ大統領と会談した。両国首脳は、メルコスールとの経済関係強化を検討していくことで一致した他、日伯外交関係樹立130周年となる2025年を「日伯友好交流年」と位置づけ、文化や観光、スポーツの交流や、交流の基盤になる日本語教育支援等の様々な分野で協力を促進することを確認した。今回の訪問には日本企業46社が同行し、グローバルサウスの主要国であるブラジルと官民あげて連携を強化したい考えだ。

 今回は首脳共同声明として「日伯戦略的グローバル・パートナーシップの更なる強化に関する共同声明」及び「環境・気候・持続可能な開発及び強じんな経済に関するブラジルと日本のパートナーシップに係る共同声明」がが出された。
 正午から行われた署名式では国際協力機構(JICA)の田中明彦(あきひこ)理事長とブラジル農業関連大臣3人が署名した荒廃農地回復に関する覚書、マルコ・アントニオ・アマロ大統領府保安室長と林禎二日本国大使が署名したサイバーセキュリティ協力の覚書など計36の覚書が交わされた。

覚書の署名の様子(CanalGOV)

 その後の共同記者会見で、岸田総理大臣は「19世紀からの友好の歴史」を強調し、数々のナショナル・プロジェクト、セラード開発、デジタルTV日本方式採用などを振り返り、「今回の覚書は2国間関係を次のレベルに押し上げ、様々な分野で戦略的な関係を深める」と強調した。
 来年は日伯外交樹立130周年で大阪関西万博が開催されることに触れ、「世界最大の日系社会を持つブラジルと日本は特別な関係であり、ルーラ大統領と連携して関係強化していく」と宣言した。
 ルーラ大統領は最初にリオ・グランデ・ド・スール州が未曽有の大水害に襲われていることを振り返り、「ブラジルには世界最大の日系社会があり、日本の全ての首相、日本企業は一度ブラジルに来ないといけない」と前置きし、2004年の小泉総理大臣来伯時の逸話を披露した。
 「日本は地中海ミバエ問題から、ブラジルの果実を絶対に輸入しなかった。そこで私は小泉総理が来た際、テーブルに最高のマンゴーを用意して一切れ賞味してもらった。そしたら『これは美味い』と気に入ってくれ、4~5カ月後には初めて輸出できるようになった。人は知らないものは好きにならない。体験することは重要」と強調、「だから明日はサンパウロのリベルダーデに行って、ブラジル最高の日本食を食べてほしい」と会場を笑わせた。

岸田首相の後、談話を述べたルーラ大統領(CanalGOV)

 さらに、目の前の椅子に座っていたアルキミン副大統領に「あなたはサンパウロ州知事を務めた人だから、サンパウロで一番のシュラスカリアに岸田首相を連れていき、最高の牛肉をご馳走してくれないか。そうしたらブラジルの牛肉や豚肉が日本に輸出できるようになるかもしれない」と薦めた。
 ルーラ大統領は、昨年5月に日本が議長国を務めたG7サミットに招待してくれたことに感謝の言葉を述べ、「来年の大阪万博への招待状を今回もらったが、その場で承認し、必ず行くと答えた。2025年の日伯外交樹立130周年では、日本とブラジルですごいお祝いをやろう」との強い意志を示した。
 その上で「ブラジルは発展途上国から抜け出して先進国の仲間入りをする。デジタルTV日本方式を採用する際、ブラジルに半導体工場を誘致する話も出たのを憶えている。ブラジルは一人で発展するのではなく、グローバルサウスの国々と一緒になって大きくなる。ブラジルに投資することはこの国だけでなくもっと広範な影響力を拡大させることになる」との期待を述べた。

日本からの企業使節団(CanalGOV)

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