準々決勝で露呈した「弱点」と準決勝の「完勝」【祝優勝「パリ五輪に挑む」U23日本代表が抱える「日本病」】(1)

大仕事を成し遂げたU‐23日本代表だが、まだ学ぶべきことがある 。撮影/中地拓也

U-23日本代表が、パリ・オリンピック出場を決めた。出場権がかかったAFC U23アジアカップでは厳しい戦いも強いられたが、見事に8大会連続で五輪行きの切符を手にした。決勝戦ではウズベキスタンを破って優勝したが、サッカージャーナリスト大住良之は、手放しでは喜べないと感じている。「日本病」とでも呼ぶべき問題とは? その解決の必要性を訴える。

■ワールドカップよりも「狭き門」

8大会連続のオリンピック出場…。すごい記録だ。韓国は自国開催の1988年大会(年齢制限のなかった最後の大会)以来、9大会連続出場の大記録を持っていたが、今年のパリ大会のアジア予選(AFC U-23アジアカップ)では準々決勝で敗退し、「10大会連続」を逃した。

「ワールドカップ出場」は、サッカー選手にとって夢と言っていい最高峰の目標である。しかし、実は「オリンピック出場」はワールドカップとは比較にならないほど難しい。次回は48チームという巨大大会になるワールドカップと比較すると、わずか16チームという「小さな」大会だからだ。今大会の「出場枠」を見ると、欧州は開催国フランスを含めて4、アフリカとアジアがともに3.5、南米と北中米カリブ海がともに2、そしてオセアニアが1。

オセアニアは、ワールドカップではこれまで0.5枠だったので、オリンピックのほうが出場が楽だったと言える。だが他の地域では、悲惨なほどの「狭き門」となっている。アジアでも、従来は4.5枠、現在行われている2026年大会の予選では8.5枠にもなるワールドカップ予選と比較して、3.5枠はいかにも少ない。欧州にいたっては、ワールドカップが従来は13枠、2026年からの16枠に対し、オリンピックはわずか4枠と厳しい。

ついでにいえば、通常23人、2022年大会は26人の選手登録枠があったワールドカップに対し、オリンピックは通常18人。メンバー入りの面でも「門」は狭い。

■世界の強豪も「予選敗退」を体験

オリンピックが「23歳以下」の大会になったのは、1992年のバルセロナ大会から。以後、今夏のパリ大会で9大会目になる。韓国がパリ大会の出場権獲得に失敗したことで、その全大会に出場するチームは皆無となった。9大会中8大会出場が、韓国と日本のアジア2か国。それに次ぐのが、スペイン、アルゼンチン、ブラジル、そしてメキシコの6大会である。こうした世界の強豪たちも、「パリ2024」までの9大会で3回の「予選敗退」を経験しているのだ。

厳しいオリンピックのアジア予選を1996年から8大会も連続して勝ち抜いたことは、日本のサッカーが大いに誇っていい偉業だ。これは日本のサッカー界が、いかにオリンピックに真剣に取り組んできたかの証明であり、そして何よりも、Jリーグの全面的な協力姿勢の賜物と言っていい。

■「実力通りではなかった」大岩ジャパン

ただ、今予選のU-23日本代表(大岩剛監督)の戦いぶりは、けっして実力どおりだったとは言えない。このチームで主力となってきた「欧州組」の選手が何人も出場できなかったこともあるが、それ以上に、煮え切らない試合ぶりに陥ることが多く、とくに準々決勝のカタール戦ではファンをやきもきさせた。

この試合、開始早々に1点を先制しながら、その後プレーが消極的になって同点ゴールを許し、相手GKの退場で前半のうちに「数的優位」に立ったものの、後半立ち上がりに勝ち越し点を奪われた。そして、あまり時間をかけずに同点に追いついたが、その後は圧倒的にボールを支配しながら相手の守備を崩しきれず、延長戦に入って相手が疲弊しきってから、ようやく2点を奪って4-2で勝利をつかんだ。

続く準決勝のイラク戦では打って変わって積極果敢な試合で2-0の完勝に持ち込み、本来の「強さ」を発揮してオリンピックの出場権をつかんだ。しかし、私はカタール戦などで起きたことをしっかり考えなければならないと考えている。

「日本病」と、私は呼んでいる。

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