【漫画】奥深き「デパート神社」の魅力とは? 休日に足を運びたくなる豆知識満載のSNS漫画に脚光

「高島屋」「三越」といった商業ビルの屋上にある神社。それを「デパート神社」と称し、さまざまなスポットを巡るエッセイ漫画『デパート神社に行こう』が2024年3月にXで投稿された。緻密な背景描写とともに描かれる、知られざるデパート神社の世界とはーー。

本作の作者・中埜縁さん(@NA_kano_en)は建築系の勉強をしていた人物である。本作を創作したきっかけ、デパート神社の魅力など話を聞いた。(あんどうまこと)

ーー本作を創作したきっかけを教えてください。

中埜縁(以下、中埜):散歩をすることが趣味で、よく散歩を題材にした漫画も読んでいました。自分も散歩をする漫画を描こうと思ったのですが、散歩の漫画はテーマを決めないと作品として成立させることが難しい……。

そのため自分がよく行くところで、他の人はあまり足を運ばないようなところをテーマにしようと思い、本作では「デパート神社」について描きました。

ーーデパート神社や商業ビルに関する情報量が多く驚きました。

中埜:建築系の大学を卒業したこともあり、もともと建築物が好きでした。建造物の歴史について詳しくはないですが、おおよそどこを調べれば建物に関する情報が出てくるのかはわかるので、デパートの歴史や豆知識を入れながら本作を描きました。

ーー日本橋三越本館屋上の、光と影の描写が印象に残っています。

中埜:うれしいです、このシーンは文句を言いながら描いていたので……。なぜこんな描くのが難しい場所を自分は描くことにしたんだと思いながら、背景を描いていました。

ーー中埜さんの印象に残っているシーンは?

中埜:とてもくだらないのですが……日本橋高島屋屋上「笠森稲荷」で登場する、人感センサー付きの手水舎ですね。正直あそこを描きたいという気持ちが、本作を創作した心情の7割ほどを占めているかと思います。

高島屋東館のポケモンセンターへ行く際に迷ってしまうエピソードも、普段そんなことを言える相手がいないので印象に残っています。

ーー緻密な背景描写も魅力的でした。

中埜:背景のほとんどは、自分で撮影した写真を見ながら描いています。デパートへ写真を撮りに行き、撮り忘れたところがあったのでデパートへ戻ったり……。そんなことを繰り返しながら描きました。背景を描く作業は好きなので、自分でパースを引きながら描いた背景もあります。

ーーデパート神社の魅力とは?

中埜:自分は高いところ、人間が普段行かないような開けた空間が好きで。また人工的なところに、神社といったスピリチュアルなものがあるというミスマッチな感じもいいなと思います。

3連休のとある1日にデパート神社へ訪れたのですが、そこには人がほとんどいませんでした。でも地上にある日本橋の神社には多くの人が列を成している……。デパートの上に神社があることを知らない人は多いと思い、本作を創作したという背景もあります。

ーー漫画を描きはじめたきっかけを教えてください。

中埜:もともと漫画を読むことが好きでした。自分でも漫画を描く苦労を味わってみたいなと思い、社会人になってから漫画を描きはじめました。主に短いページ数の漫画を描いていましたが、本作は少し長めの作品となりました。

ーー実際に漫画を描いてみて、どんな気持ちを抱きましたか?

中埜:漫画を見る目が変わりました。こんなに手間のかかるものを、今まで数百円で購入し読んでいたのかと思うと衝撃です。創作活動をしているすべての人への尊敬の念が湧くようになりました。

ーー大変さを感じつつも創作活動をつづける理由は?

中埜:最初はあんまり深く考えずに漫画やイラストを描きはじめました。ただ自分がふと思いついたどうでもいいこととか、少し倫理的によろしくないようなことでも、漫画なら表現できることがすごくいいなと思います。

普段なら言えないことも漫画の中なら表現できる楽しさ。そして漫画が完成したときに味わえる、山の頂上にたどり着いたときのような達成感ーー。それらが漫画を創作する魅力として感じています。

ーー今後の活動について教えてください。

中埜:まずは漫画を描くことを続けたいです。今のところ漫画創作を仕事にするつもりはありません。趣味として漫画を描き続けられるように、周りの反応にも一喜一憂せずに淡々と描き続けられたらいいなと思います。

しいて言えば、この前はじめて訪れたコミティア(一次創作物の即売会)が楽しかったので、いつか自分も出展できたらと思いながら、創作をほそぼそと続けていきたいです。

(あんどうまこと)

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