【J2「J1昇格戦線」】首位・清水、乾不在でもMF矢島の狙い撃ちコントロール先制点&新システム「4-4-2」機能で快勝の逞しさ(1)

攻撃の中心・乾貴士欠場でも勝ち続ける清水  撮影/中地拓也

■清水が5分、8分に連続弾!!

「超攻撃的」が爆発した。

J2リーグ第13節が5月3日に行なわれ、首位の清水エスパルスは16位の栃木SCと対戦した。ここまで4連勝の清水は、秋葉監督就任後初の5連勝を目ざす戦いとなる。ゴールデンウイークで好天に恵まれたこともあり、今シーズンのホームゲーム最多となる1万7400人の観衆が詰めかけた。

MF乾貴士が3試合連続でメンバー外の清水は、この日も4-4-2臨んだ。FW北川航也とMFカルリーニョス・ジュニオが2トップを組むシステムは、チームの新たなオプションとなりつつある。

開始早々にロングスローをきっかけとして際どいシュートを浴びたが、清水はすぐに押し返す。4分には右サイドのコンビネーションからMF宮本航汰がペナルティエリア内まで侵入してシュートを放ち、この一撃で右CKを獲得する。

MF矢島慎也の右CKは相手にクリアされるが、セカンドボールを2次攻撃につなげてゴールネットを揺らす。ペナルティエリア内右から、矢島が右足のコントロールショットをゴール左上へ蹴り込んだ。開始6分で先制した。背番号21は移籍後初ゴールだ。

さらに8分、右MFルーカス・ブラガがカットインしてペナルティエリア内へ侵入し、相手選手をハンドオフでブロックしながら左足でゴール左上へ流し込む。先制点に続いてのファインゴールで、清水はリードを2点に広げた。

いつもの3-1-4-2ではなく3-4-1-2の立ち位置を取る栃木に対して、清水は右SB原輝綺、左SB山原怜音が相手トップ下の横のスペースでフリーになる。彼ら両SBとダブルボランチが連携しながらビルドアップしていき、相手のボランチがチェックに出てきたらその瞬間に縦パスを刺し込む。

主導権を握りながら試合を進めていく清水だが、24分に失点を喫する。相手シュートがDFに当たってコースが変わり、GK権田修一にはセーブのチャンスが与えられなかった。

■終盤の連続弾で清水が5連勝を達成

1点差に迫られてからは、栃木にボールを握られる時間が増えた。栃木の左ウイングバック大森渚生のクロスに、何度か守備陣が慌てさせられる。好調のストライカー北川が、前半はシュートを1本も打てなかった。

後半に入っても、試合の流れは変わらない。栃木の攻撃をしのぎながら、清水は3点目を狙える瞬間を探っていく。栃木が59分にFW矢野貴章とFWイスマイラを投入してくると、清水陣内での攻防が増える。ギリギリで失点を防ぐシーンもあり、秋葉監督が動いた。70分、矢島と北川を下げ、MF松崎快、FWドウグラス・タンキを投入する。システムは4-4-2を維持する。

ファジアーノ岡山を1対0で退けた前節は、シーズン5度目のクリーンシートを記録した一方で、試合を決める2点目を取り切れないという課題が残った。2対1で推移する77分、秋葉監督は3枚目の交代カードとしてDF吉田豊を送り出す。ルーカス・ブラガとの交代で、システムは3-4-2-1に変更された。相手の2トップを3バックでしっかりと封じる狙いを持ちつつ、右の吉田、左の山原の両ウイングバックに高い位置を取らせ、攻撃に厚みを持たせることも意図していただろう。

果たして、選手交代が的中する。79分、ドウグラス・タンキがドリブルで突進すると、ペナルティエリア直前で倒される。しかし笛はならず、栃木が自陣からビルドアップを開始する。ここで山原が敵陣で横パスをカットし、一気にペナルティエリア左まで入り込む。そのまま左足を振り抜き、逆サイドネットへ突き刺した。サイドバックからウイングバックへポジションをあげた山原が、貴重な3点目をゲットしたのだった。

87分にはカルリーニョス・ジュニオのアシストから、松崎がペナルティエリア右からシュートする。利き足ではない右足の一撃が、至近距離からネットを揺らした。

終盤に攻撃力を爆発させた清水が、6試合勝利のない栃木を4対1で退けた。4得点は今シーズン最多だ。終わってみれば予想どおりの結果とも言えるが、栃木に押し込まれた時間帯に失点をしなかったことが、清水の勝利につながったと言える。このまま守備が安定していけば、チームの戦いぶりそのもの安定していくだろう。

就任後初の5連勝を達成した秋葉監督は、試合後のフラッシュインタビューで「大型連勝が続くためにも全員の力が必要。中2日しかありませんので、しっかり調整して(次節で対戦する)群馬を叩きたい」と話した。乾不在のなかで連勝を伸ばしている現在の戦いぶりは、まさに全員の力でつかみ取っているものであり、昨シーズンとは違う種類のたくましさを感じさせるものでもある。

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