イタリア人が「違う世界にいるよう」と感動 不思議な体験で魅了された日本の国宝とは

大学院で多岐にわたる研究をしているイタリア人のジャンルカ・プルソーニさん【写真提供:ジャンルカ・プルソーニ】

外国人観光客が日本で見たいもののひとつが、歴史や文化を感じる建造物。芸術などさまざまな分野を学んでいるイタリア人は、日本の現代建築の巨匠による作品や、世界遺産にもなった歴史的建造物に深く感動したようです。

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日本を代表する建築家の作品に「魔法のよう」

日本に魅了され、3度の訪日経験があるイタリア人のジャンルカ・プルソーニさん。ペルージャ大学で人類学を学んだのち、ミラノの出版社に就職しました。その後、フィンランドやアメリカの大学院で、人類学や哲学のほか、文学、歴史、美学、映画、メディアなどを学び、現在は論文の執筆をしているそうです。

ジャンルカさんが初めて日本を訪れたのは2018年。東京、京都、神戸、淡路島などへ足を運びました。そこでは、動画やテレビでイメージしていたのとは違う、日本の街並みの美しさや文化、日本人の人間性に強い興味を覚えたそう。さらに翌年には1か月間、日本に留学もしました。

芸術に深い造詣があるジャンルカさんには、日本で感動した建造物が2つあるそう。ひとつは淡路島で見た、日本の現代建築の巨匠といわれる建築家の作品で、計算し尽くされた光景が印象的だったと話します。

「安藤忠雄さんが設計した『本福寺水御堂(ほんぷくじみずみどう)』は、地下の空間が美しい。地下への階段の途中では、ハスの花の池が水平に視界を切るように見えてくる。また、光が壁に反射して、寺の中が赤く染まっていたのが印象深く、忘れられない。自然光が隙間から差し込んできて、仏壇の仏様が魔法のように浮かび上がって見えたんだ」

独学で建築を学び、多くの代表作がある安藤忠雄さんは、世界的にも評価が高い建築家。淡路島では「淡路夢舞台国際会議場」のほか、さまざまな作品を手がけています。ジャンルカさんはそれらが見られる場所にも足を運び、日本を代表する建築家による現代建築を堪能したのだとか。

「美しい庭園は迷宮のよう」 日本初の世界遺産のひとつに感動

ジャンルカさんを感動させたのは、現代建築だけではありません。奈良・法隆寺とともに日本で初めての世界文化遺産に登録された、歴史的建造物のひとつにも魅了されたそう。それは、日本の国宝として名高い姫路城です。

ジャンルカさんは姫路城を見て、デジャブのような感覚になったそう。「映画がとても好きだから、既視感を覚えたのかも。黒澤明の『影武者』や『乱』の舞台にもなった、ユネスコの世界遺産だけにとても感動した」と当時を振り返ります。

さらに、美しい城を眺めるうちに幻想的な気持ちになったようで、「不思議な体験をした」と明かしました。

「美しい庭園は迷宮のようで、スパイラルに空に上がっていくようだった。駅を降りると、白い山のようにそびえる城が見える。城がみんなを見下ろしているような気がして、違う世界にいるような気持になった」

世界遺産にも登録されている国宝・姫路城【写真:写真AC】

シラサギが羽を広げたような優美な姿から「白鷺城」ともいわれる姫路城は、漆喰の美しい白壁と連立式天守が特徴。そのなかでも目を引く大天守は、1609年に建築されたもので、歴史的価値も高い日本が誇る建造物です。

ジャンルカさんが既視感を覚えながらも、異世界にいるような印象を持ったのは、城の長い歴史をわずかな時間で一気に感じ取り体感したからかもしれませんね。

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