運頼みのハーフチャンス? 横浜vs磐田戦で再確認させられた“古典的な攻め”の有効性【コラム】

日産スタジアムで5月3日に行なわれたJ1リーグ第11節で、横浜F・マリノスとジュビロ磐田が1-1で引き分けた。64分に均衡を破ったのは横浜で、FWアンデルソン・ロペスが、今季6点目を押し込んだ。粘る磐田は84分、FWマテウス・ペイショットが起死回生の同点ゴールを決めて、勝点1を持ち帰ることができた。

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横浜のハリー・キューウェル監督は試合後の記者会見で開口一番「Disappointed(がっかりした)」と苦渋をにじませた。攻撃サッカーが自慢のチームが18本のシュートを放ちながらも1点止まり。前半については「動きが受け身だった」「愚かなミスを犯していた」「創造性もなかった」と、否定的な表現ばかりが口をついて出た。

「能動的な自分たちのサッカー」という自負がある。仕掛けて得点チャンスを作り、「2点目、3点目を奪いに行くのが自分たちの良さであり、目ざしているスタイル」。それだけに「決めるべきチャンスを作り出していながら決め切れない」。そこに「悔しさ、歯がゆさ」を感じている。

キューウェル監督のプライドは、磐田の攻めを振り返った際にも表れていた。「ジュビロはゴール前50メートルやサイドから『頼むぞ』といった感じのボールを入れてくる」。その同点ゴールについても、半ば運頼みの「ハーフチャンス」と捉え、それがさらに悔しさを増幅させたのだろう。自陣左サイドからMF上原力也に上げられたクロスを、マテウス・ペイショットがヘディングで合わせた。

もっとも、磐田側からの見方は異なる。「(上原)力也のクロスはファーに流れてくることを日頃から感じていたので、そこにポジションを取った」とマテウス・ペイショット。ハーフチャンスではなく、普段からの練習で互いの特徴を把握し、しっかり構築されたプレーであることを強調した。

横浜の先制ゴールも、やはりクロスから生まれた。FWヤン・マテウスからのボールをアンデルソン・ロペスが頭で合わせ、GK川島永嗣が弾いたところを押し込んだもの。ピンポイントのクロスを長身センターフォワードの頭に合わせるという古典的な攻めが、ポゼッションや崩しがクローズアップされる現代サッカーにあって、依然として有効な手段であることを知らしめた一戦でもあった。

取材・文●石川 聡

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