陸上自衛隊で大活躍! カワサキKLX250 ベースの『偵察用オートバイ』を徹底解剖

「働くバイク」と言えば、白バイや配達用のスーパーカブやジャイロを思い浮かべますが、陸上自衛隊でもバイクを活用しています。特にダートバイクは小型・軽量で機動力を活かし、戦闘時の偵察や部隊伝令、災害時の被害状況把握など、さまざまな用途に使用されています。民間用のスタンダードモデルとどう違うのか。二台を比較しました!

カワサキKLX250が偵察隊に配備されている

現在、陸上自衛隊ではカワサキKLX250(2008年型〜)が使用されています。二台を比べると同じ緑系でもライムグリーンとOD色(オリーブ・ドラブ)では印象が異なりますね。敵情を把握するために機動性の高いダートバイクで地上偵察を行うなど詳細な情報を収集します。時にはゴムボートに搭載して離島に運搬したり、ヘリコプターに搭載して空輸することもあるそうです。

フロント

KLX250は、2008年にキャブレター仕様からインジェクション仕様に変更されたのを機に、エッジが効いたデザインにモデルチェンジしました。自衛隊仕様はフロントまわりを落ち着いたデザインに変更。スタンダードモデルにはオプション設定されていないナックルガードも装着されています。

ヘッドライト

ヘッドライトはバルブ式のようです。ウインカーの下の丸い装置は赤外線センサーで、後方のスイッチで切り替えます。暗視ゴーグルと併用することで無灯走行が可能。自衛隊らしい装備ですね。

メーター

メーターやハンドルバーは、スタンダードモデル同様。ウィンカーは旧モデルのシンプルなタイプに変更されています。なお、保安部品は訓練や有事の際に取り外されます。

足回り

フロントフォークやホイールはブラックアウトされていますが、基本性能はスタンダードモデルと同じ。純正でも足回りはモトクロスのようなジャンプでも耐えられるクオリティが担保されているようです。

スタンダードモデルのリアアクスルが前押しタイプなのに対し、自衛隊仕様はスネイルカムを採用しています。それによってスイングアームも変更。メンテナンスしやすくなっています。

フロントのバルブキャップに注目。バルブコアを外すための部品を兼ねています。私もバイク屋のオヤジさんから貰って取り付けています。スポークと干渉せずにバルブコアを外すことができる優れモノで、とっさのパンク修理をスピーディーにてくれます。

エンジン

エンジンもブラックアウトされただけでスタンダードモデルと同様。敵部隊への偵察行動の際には銃撃をうけることがあるため、バイクに立ち乗りして小銃射撃を実施したり、バイクを盾にして銃弾を避けながら状況把握や反撃することもあります。訓練のたびに塗装がボロボロになるため、その都度缶スプレーでリペイントしているそうです。

キャリア

KLX250らしいスタイリッシュなデザインは鳴りを潜め、オーソドックスなリアまわりに変更されています。フェンダーまでせり出したキャリアは、ツーリングでも重宝しそう。ちなみに自衛隊が運行する車両は、道路運送車両法の「適用外車両(一部のバス、乗用車などを除く)」のため、ナンバーは不要。他の自動車と明らかに識別するために番号及び標識を付けています。

サイドカバーが廃されて、ボックスの取付ステーを設置。むき出しになったバッテリーが金属製ボックスで守られています。スタンダードモデルの総重量は136㎏と軽量ですが、自衛隊仕様は銃や通信機などを装備するため、結構な重量になります。

ダートバイクは絶滅寸前!

KLX250は、2016年にファイナルエディションが発売され、現在は生産終了となっています。本格的なフルサイズのダートバイクが姿を消す中、自衛隊の車両はどう変わっていくのでしょうか。各バイクメーカーさん、何とかしてください。

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