「農民画」に新たな命吹き込む若き女性作家 中国吉林省

「農民画」に新たな命吹き込む若き女性作家 中国吉林省

4月28日、自作の農民画を紹介する銭璐さん。(四平=新華社配信)

 【新華社長春5月4日】中国東北部の農村の様子を色鮮やかで大胆な筆致の「農民画」で描き出し、ライブ配信の活用や農民画家の養成で村民の収入増も実現している女性がいる。銭璐(せん・ろ)さん(25)。春の農作業を迎えたこの時期は、種まきや施肥などが題材の春耕図をアトリエで実況解説しながら描く。視聴者からは「あなたの絵を通して農村を知り、農村に親しみを感じるようになった」といったコメントが寄せられている。

 銭さんが生まれた吉林省四平市梨樹県は、黒土の広がる中国有数の穀倉地帯で、歴史ある農耕文化を育んできた。多くの農家が作業の合間に筆を執り、日々の仕事や暮らしを描いていたことから、1991年には「中国現代民間絵画の郷」に認定された。だが近年は農民画を描く人も減っていたという。

「農民画」に新たな命吹き込む若き女性作家 中国吉林省

4月28日、農民画を描く銭璐さん。(四平=新華社配信)

 かつては都会で暮らしたいと考えていた銭さんだが、伝統が消えようとしていることに心を痛め、大学卒業後、故郷に戻り市級無形文化遺産の農民画を伝承することに決めた。農民画を伝えていくためには、絵画を通じて地元の人々を豊かにしなければならないとも考えた。2019年には両親の支援を受け、同県孤家子鎮に梨樹農民画館を設立。文化事業による貧困者支援を始め、農家の人々が地元で仕事を見つけるのを後押しした。

 銭さんは家族とともに農民画家を無償で養成し、無形文化遺産の要素を取り入れたクリエーティブ商品を開発。農産物の包装にも農民画を取り入れ、農民画家が一定の利益を得られるようにした。農民画をプロモーションするため、各種の展覧会への出品も積極的に進め、多くの農民画家が賞を受けている。「昨年の杭州アジア大会では梨樹県を代表して長さ6メートルの農民画を寄贈した。杭州アジア大会博物館で展示・収蔵されている」と銭さんは話す。

「農民画」に新たな命吹き込む若き女性作家 中国吉林省

4月28日、故郷の農民画を紹介する銭璐さん。(四平=新華社配信)

 農民画館と農民画の人材育成拠点を開いた銭さんは政府の支援も受け、特色ある農村ツーリズムの推進に貢献している。銭さんの施設は地元の観光の目玉となり、休日には多くの観光客が訪れている。

 この2年でライブ配信も開始し、伝統的な農民画と新技術を融合させた。「私たちのライブ配信で田舎のありのままの生活が見られたというファンもいる。農民画に新たな命が吹き込まれたと感じる」と銭さんは語る。

 ライブ配信を始めて農民画の知名度が上がっただけでなく、農民画のクリエーティブ商品をオンラインで販売できるようにもなった。関連商品の販売額は年間80万元(1元=約21円)を超え、契約農民画家の年収は5千~4万元に上るという。(記者/邵美琦、司暁帥)

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