逆境にも負けず…『僕のヒーローアカデミア』の「壮絶すぎる環境」で育ったヒーローたち

© 堀越耕平/集英社・僕のヒーローアカデミア製作委員会

5月4日からアニメ7期の放送が始まり、ますます盛り上がりを見せている『僕のヒーローアカデミア(ヒロアカ)』。

本作には生まれ持った“個性”で活躍するさまざまなヒーローが登場するのだが、なかにはあまりにも過酷かつ悲惨な過去を背負い戦いに挑む者もいる。今回は壮絶すぎる環境で育ちながらも、逆境を跳ねのけ戦うヒーローたちについて見ていこう。

【※本記事には『僕のヒーローアカデミア』アニメ最新話までの重大なネタバレが含まれます。】

■父と母、そして兄。“家族”との因縁に縛られた“半冷半燃”の少年…轟焦凍

主人公・緑谷出久こと“デク”が通う雄英高校ヒーロー科にはさまざまな“個性”を持った生徒たちが集まっているが、なかでも壮絶な環境で育ったキャラクターといえば、ヒーロー科でトップレベルの実力者である轟焦凍だろう。

赤と白が左右半分ずつの髪の毛にオッドアイ、左目を中心に広がる火傷の痕が特徴的なイケメンで、当初は口数が非常に少ないクールなキャラクターとして描かれていた。

“炎”と“氷”という相反する力を同時に操る個性「半冷半燃」の持ち主で、その圧倒的な実力から作中屈指の強キャラとして多くの場面で活躍している。

実は彼は、後にNo.1ヒーローの座につく実力者・エンデヴァーの息子で、父から“炎”の力を、そして母・冷から“氷”の個性を引き継いだ、生まれながらのエリートである。

その高い実力も幼少期から叩き込まれた英才教育のたまものなのだが、一方で家族仲はお世辞にも良好とは言いがたい。

エンデヴァーは息子を「No.1ヒーローに育て上げる」ことに固執するあまり、焦凍に対して虐待にも近い苛烈な特訓を強いるようになっていく。家庭内でも父の力は絶大で、妻である冷もその圧力に逆らうことができず、日に日に衰弱していった。

さらに悲劇は続き、精神的に憔悴しきってしまった母・冷は、ふとした瞬間に焦凍に憎き夫の面影を見たことで、衝動的に息子に熱湯を浴びせてしまう。彼の顔の火傷はその際に刻まれたものであり、焦凍はこの出来事によって母を追い詰めた父・エンデヴァーに並々ならぬ敵意を抱くようになっていく。

その上、なんとヴィランの一人・荼毘の正体が、かつて死亡したと思われていた兄・轟燈矢であることまで判明。徹頭徹尾、“家族”の因果に縛られ続けたキャラクターだ。

しかし、過去から続く“呪縛”を乗り越え、彼が真の“ヒーロー”へと成長していく姿は、本作の大きな見どころの一つといえるだろう。

■偏見にも負けずヒーローを目指す心優しい少年…障子目蔵

『ヒロアカ』には生まれ持った個性の影響を受け、通常の人間とは少し異なった形状の肉体を持つキャラクターも多く登場している。なかでもその見た目ゆえに壮絶な過去を持つのが、雄英高校ヒーロー科の生徒の一人・障子目蔵だ。

長い銀髪の前髪に鋭い眼差し、口元を覆ったマスクスタイルがなんとも威圧的な男子生徒だが、最大の特徴はその“腕”。彼の肩からは腕とは別に2対の“触手”が生えており、腕との間に薄い皮膜が張られている。

この“複製腕”こそが彼の個性で、それぞれの触手の先端に肉体の一部を“複製”し、操ることができるのだ。腕や拳を複製してぶん殴る攻撃はもちろん、目や耳といった器官を複製することで索敵能力を高めるなど、かなり幅広い戦術に活用することができる。

独特の“個性”を持つ障子だが、その幼少期はまさに過酷の一言に尽きる。もともと田舎の出身だった彼は、見た目を理由に周囲の人々から怖がられ、偏見にさらされながら育ったのだ。

そんな障子の過去が詳しく描かれるのは原作371話~372話で、このエピソードはアニメ7期で映像化されると思われる。逆境にも負けずヒーローになった彼の生きざまをぜひその目で確かめてみてほしい。

■抱いた憧れを捨てず、大空に羽ばたくプロヒーロー…ホークス

『ヒロアカ』といえばデクとともに切磋琢磨する生徒たちだけでなく、彼らの憧れとなる“プロヒーロー”にも実に個性的な面々が揃っている。なかでもそのキャラクター性とは裏腹に、あまりにも悲惨な過去で読者を驚かせたのが、“ウィングヒーロー”の異名を持つホークスだ。

彼は個性によって背中から生えた“翼”で自由に空を飛び、マイペースにヒーロー活動を行っている自由人だが、意外にも父は連続強盗殺人を起こした“ヴィラン”である。そんな父を偶然にもかくまった母・遠見絵との間に生まれたのが、後にホークスとして活躍する鷹見啓悟だった。

父は指名手配中だったことから街外れのボロ家に隠れ住み、足が付くことを恐れるあまり息子であるホークスにも外出や人と関わることを強く禁じた。たびたび虐待も受けていたホークスだが、父に依存している母はそれを助けてくれるわけもなく、幼い彼はひたすらその苦痛の日々に耐え続ける他なかったのである。

父に束縛され続けたホークスの唯一の救いは、たまたま母に買ってもらったプロヒーロー・エンデヴァーのぬいぐるみだった。そしてその後、父が他ならぬエンデヴァーに捕縛されたことでようやく“呪い”から解き放たれることとなる。

この出来事はホークスにとって憧れであった“ヒーロー”というものを強く実感する出来事として、心に焼き付くこととなる。やがて彼は生まれ持った“個性”を公安に認められたことがきっかけで、訓練を経てプロヒーローとして生まれ変わったのだ。

ヒーローとは対極の存在を父に持ちながら、自身を救ってくれたエンデヴァーと肩を並べる存在に成長してみせた彼の熱意に脱帽してしまうエピソードである。

作中でヒーローを目指す生徒たち同様、幼少期に抱いた“憧れ”を追い求めプロヒーローの座を掴み取った、なんともまっすぐな心根を持つキャラクターだ。

『ヒロアカ』に登場するヒーローたちは人々を救うために日夜奮闘しているが、なかにはときに過酷で、目を背けてしまいそうな痛々しい過去を持つ者も登場している。壮絶な環境を乗り越え成長したヒーローの雄姿は、読者たちの心を強烈に惹きつけて離さない。

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