サッカーU23日本代表「チーム力」で手にした4大会ぶりのアジア制覇

日本代表 2016年大会以来4大会ぶり2度目の優勝 PHOTO:Getty Images

サッカーU23日本代表がアジア王座に就いた。

5月3日、ドーハで行われたU23アジアカップ決勝でU23ウズベキスタン代表に1-0で競り勝ち、2016年大会以来4大会ぶり2度目の優勝を達成。

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すでに8大会連続での出場を決めていた今夏のパリ・オリンピックには、アジア王者として出場する。

途中出場のMF山田楓喜選手(東京V)が後半アディショナルタイムにゴールを決め、直後に与えたPKのピンチをGK小久保怜央ブライアン選手(ベンフィカ)が阻止して勝利。

小久保選手はこの試合のプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれ、MF藤田譲瑠チマ選手(シントトロイデン)が大会MVPを獲得した。

「23人全員で戦ってきた。決勝も誰がでても、どういう状況でも戦い抜く」

試合前にそう話していた大岩剛監督だったが、厳しい展開となった試合で積み上げてきたチーム力を発揮して勝利を掴んだ。

日本は前半立ち上がりから苦戦した。前線から激しいプレスをかけ、素早い切り替えで攻撃を仕掛けるウズベキスタンに手を焼いて、日本は思うような攻撃を組み立てられない。

MF松木玖生選手(F東京)やMF山本理仁選手(シントトロイデン)らが中盤で動きを押さえられ、ここ2試合連続得点のFW細谷真大選手(柏)までなかなかボールが届かない。

前半唯一の得点機は、28分に山本選手からのマイナスのボールを受けたMF佐藤恵允選手(ブレーメン)が放ったシュートだったが、枠を捉えることはできなかった。

2年前の前回大会準決勝で日本に勝っているウズベキスタンは、フィジカルの強さとスキルを活かしてボールを運び、優勢に試合を進めて日本のゴールに迫った。前半41分にはロングシュートで脅かし、日本はクロスバーに救われた。

日本は我慢強く戦って0-0で前半を終えると、ハーフタイムに「少しだけ中盤の立ち位置を変えながら、プレーエリアを支配しようとした」(大岩監督)と修正。

すると、後半は選手間の距離感や動きが良くなり、チャンスを作れるようになる。後半7分には攻め上がったDF関根大輝選手(柏)からリターンパスを受けた藤田選手がミドルシュートを狙うなど、徐々に相手ゴールに迫る場面が増えた。

後半15分を過ぎてFW荒木遼太郎選手(F東京)とMF平河悠選手(町田)を投入。

その10分後にはMF川崎颯太選手(京都)とMF山田楓喜選手(東京V)を送り出すと、攻撃がさらに活性化する。山田選手は投入直後に平河選手のクロスにヘディングで合わせる場面を作り、後半36分には細谷選手が左クロスに頭で狙ったが、ゴールには至らない。

だが、延長戦突入かと思われた後半アディショナルタイムに入った直後、試合が動いた。

中盤で相手ボールを奪ったDF高井幸大選手(川崎)がヒールで藤田選手に預けると、藤田選手から荒木選手へ縦に速いボールを付け、荒木選手もテンポよく山田選手へパス。

これを受けた山田選手が狙い澄まして得意の左足を振り、ゴールネットに突き刺して均衡を破った。

山田選手は試合後、ベンチから試合を見て「間延びしている。間で受けたら自分が前を向いてシュートを打てる」とイメージできていたと明かし、「決勝の舞台で自分の持ち味を出せた」と胸を張った。

ところが、均衡を破った直後にウズベキスタンが反撃。日本はピンチに見舞われた。

後半アディショナルタイム5分、右サイドからのクロスをFWアリシェル・オディロフ選手が頭で捉え、そのボールがマークについた関根選手の手に当たり、VARの確認でPKの判定となった。

この得点機にウズベキスタンは後半終盤に交代出場したMFウマラリ・ラフモナィエフ選手がキックを務めたが、GK小久保選手が右へ飛んでブロック。得点を許さず、最後まで日本のリードを死守して、チームを勝利に導いた。

試合後、「PKになった瞬間はあまり自信がなかった」と明かした小久保選手だったが、「チームメイトが『ブライアンなら止められる』と声をかけてくれたので、自信を持って自分が来ると信じた方向にプレーできた」と振り返った。

小久保選手は今大会初戦の中国戦でも、一人少ない劣勢のなかで好セーブを連発して白星スタートに貢献。

出場した5試合で守護神として安定したプレーを披露して、日本の勝利に貢献した。

「陰で支えてくれた人たちがメンタル的にも自分を支えてくれたので、すごくプレーしやすかった」という小久保選手。「ウズベキスタンとは2年前に負けていたので、チーム全員で『リベンジを果たそう』と話していた。こうして勝利を日本の皆さんに届けられのはすごくうれしい」と笑顔を見せた。

山田選手はゴールについて、「いままでずっと積み上げてきたものが、いままで苦しかった時も諦めずにやってきたことが、こういうところで出た。パリでも自分たちのスタイルを貫いて優勝まで突っ走りたい」と話した。

大会MVPに選ばれた藤田選手は、「MVPは僕だけのものじゃなくて、チームとして成し遂げたもの。チームとして優勝できたことが一番で、自信を持ってパリに行ける」と語る。

U23日本代表キャプテンは、「アジアチャンピオンとしてパリ(五輪に)挑戦できるので、結果にしっかりこだわって、まだ(日本が)成し遂げたことのないメダルや優勝を目指して頑張りたい」と言葉を続け、夏の舞台へ気持ちを新たにしているようだった。

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写真:アフロ

大岩監督は、「非常に難しい試合だった。ウズベキスタンの圧力に押されたが、選手たちが90分の中で攻守にしっかりと責任を果たしてくれた」と安堵の表情を見せた。

試合後の表彰台で、喜ぶ選手たちから促されて優勝トロフィーを受け取った指揮官は、歓喜の輪の中央で高く掲げてタイトル獲得を祝った。

大岩監督は、決勝ゴールを決めた山田選手とPKを止めた小久保選手について「山田が決めることも怜央が止めることも予想はするが、結果として現れた。これは本当に彼ら自身の力」と評価した。

「PKになった瞬間は、怜央が止めると信じていた」と振り返り、「後押ししてくれた、周りでサポートしてくれた人たちのパワーが乗り移ったのでは」と話した。

チームの立ち上げから86人を招集してチーム作りを行い、今大会でも招集した23人でGK山田大樹選手(鹿島)を除いた22人を起用して6試合を戦い抜いた。「誰が出ても戦えるチーム作り」を実践した。

大岩監督にとっては、鹿島を率いていた2018年AFCチャンピオンズリーグ(ACL)優勝以来、2度目のアジア主要タイトル制覇となったが、「私だけ(の力)ではなく、チームが成果を結果に変えた」と述べた。

「アジアで勝つのは非常に難しい」と語り、決勝という舞台ではPKなど想像を超えた展開も起こると考えて臨んだという。その中で手にした優勝に、「勝利は選手だけでなく、スタッフや裏方があってのこと。

そういう組織作りは慎重に進めてきた。優勝はスタッフと選手たちが一体となって、この大会へ向けて全力を尽くした結果だ」と、全員の努力を称えた。

今大会の結果、優勝した日本はパリ・オリンピックの組み分けでD組に入り、7月24日にパラグアイ、27日にマリ、30日にイスラエルと対戦。第1戦、第2戦はボルドー、第3戦はナントにて全てナイターで行われる。夏の暑さを考えると好条件と言える。

なお、準優勝のウズベキスタンはC組でスペイン、エジプト、ドミニカ共和国と同組。

3位決定戦でインドネシアに延長2-1で競り勝ったイラクはB組でアルゼンチン、モロッコ、ウクライナと同組で戦うことになった。

インドネシアは最後の1枠を懸けてアフリカ予選4位のギニアと5月9日にフランスで行われる大陸間プレーオフを戦う。

U23日本代表は今後、7月24日に始まるパリ本大会へ向けて、3か月弱という短い時間で選手の絞り込みや、本大会での対戦相手を睨んだ強化に取り組むことになる。

今大会は23人だったが本大会のチーム編成は18人。オーバーエイジ枠の採用もあり、23歳以下の選手にとっては本大会メンバー入りの競争は激戦必至だ。

アジアタイトル獲得でオリンピック出場権獲得に華を添えたが、本大会へ準備は待ったなしだ。

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