「そのお土産、放棄してください」 国内でも売っているのに…“海外から持ち帰るとヤバい”植物とは?

海外で安く売られている果実「お土産に“ぴったり”」と思いきや…(konatu / PIXTA)

今年のゴールデンウイークは、有給などを利用する人では最長10連休となる。旅行代理店株式会社JTBの発表によれば、海外旅行を予定している人が新型コロナウイルス感染症拡大前の約9割にまで回復したという。

旅行のお土産として、現地ならではのおいしい果実や野菜、スパイス、部屋に飾るおしゃれな観葉植物を購入したいと考えている人もいるのではないだろうか。

しかし、これら「植物」は、国内に持ち込む際に“没収”、“処分”されるケースがあるので注意が必要だ。

年間10万件以上「処分」される植物

実は植物を海外から国内に持ち込む際には、「植物防疫法」に基づき、原則として輸出国の検査証明書および入国時の検査(検疫)が必要になる。

また、マンゴー、リンゴ、かんきつ類などの果実や、殻付きクルミ、トウガラシなどは特定の国・地域からの持ち込みが“禁止”されている。

「病害虫」発生地域と輸入が禁止されている植物の一部(植物防疫所リーフレット「海外から植物を持ち込む場合の植物検疫のお知らせ」より)

植物の国内への持ち込みが規制されるのは、付着の可能性がある「病害虫」を日本に侵入させないためだ。病害虫の侵入を許し、まん延してしまえば、日本の農林業に重大な影響を及ぼす可能性がある。しかし、横浜植物防疫所の白石正美氏によれば、輸入禁止対象の植物が持ち込まれ、空港等で処分されるケースは「年間10万件を超える状況」だという。

「そもそも持ち込みが禁止されている植物があることや、植物に検疫が必要であることをご存じない方も多く、税関での手荷物検査の際に植物の持ち込みをご申告いただき、初めて私たちの(空港内の)検査カウンターに足を運んでもらうというケースが多いです」(白石氏)

輸入禁止植物を持ち込んでしまったら…?

「植物検疫カウンター」では、以下の順番でチェックが行われるという。

①持ち込まれた植物が輸入禁止対象物ではないか
②輸出国が発行した検査証明書はあるか
③病害虫の付着はないか(輸出国とのWチェック)

「検疫の結果、国内への持ち込みができない植物については、その場で放棄いただき、われわれが廃棄処分をしています。きちんと検疫カウンターにきていただいていれば、たとえ輸入禁止の植物をお持ちだったとしても“即罰則”ということはありません」(白石氏)

果実のチェックをする植物防疫官(植物防疫所パンフレット「農業と緑を守るために」より)※画像の一部を加工しています

しかし、規制を知った上で故意に持ち込む・検疫を受けないなど悪質性が認められた場合は、植物防疫法に基づき3年以下の懲役または300万円以下(法人の場合は5000万円以下)の罰金が科せられるため、検疫が必要な植物を国内に持ち込みたい場合には注意が必要だ。

国内で売っている果実だから「大丈夫」?

白石氏は、没収される植物の内訳について、「現場感覚ではマンゴー、パパイアなどの熱帯果実が特に多い」とした上でこう説明する。

「日本にない珍しい植物をお持ちになる方もいらっしゃいますが、よく誤解をされるのは、国内のスーパー(マーケット)等で販売されている熱帯果実についてです。

国内で販売されているからこそ、持ち込んでも問題ないという認識に立たれた方が、お土産等として持ち帰られるケースが多い印象があります。

しかし、国内のスーパーで販売されているものは、特別な消毒措置を取るなど条件を付して貨物ベースで輸入されています。『日本で見たことあるから(持ち込んで)大丈夫』ではない、というのは知っておいていただきたいです」

植物を持ち帰りたい場合…

日本に持ち帰りたい植物があった場合は、植物防疫所のインターネットサイト(https://www.maff.go.jp/pps/j/search/ikuni/index.html)にアクセスしてほしい。国・地域とそこから持ち帰りたい植物名がわかれば、誰でも簡単に規制内容を調べることができる。

試しに今年のゴールデンウイークの人気旅行先1位(JTB調べ)である韓国のページを見ると、現地のなし・りんごは国内への持ち込みが“禁止”になっている。

植物防疫所「旅行者用簡易検索情報」韓国ページより(※画像の一部を加工しています)

そのほかの植物はおおよそ検査証明書が付いていれば、入国時に検査を受けて持ち帰ることができそうだ。また、マツタケであれば、証明書・検疫の必要もなく持ち帰ることができるという(※4月現在)。

万が一、持ち帰りたい植物がサイトに載っていない場合や、不明点がある場合は、「具体的にどんな植物をどこの国から持ち込みたいのか、植物防疫所に問い合わせてほしい」と白石氏。

「まれに『自分で消毒してきた』とおっしゃる方もいますが、検査の方法や消毒の要件などは輸出国と植物の組み合わせで細かく決められ、輸出国による証明が必要となるため、自分でやればいいという訳ではありません。

また、植物防疫所の所管外となりますが、希少種の動植物を守る『ワシントン条約』などの国際的なルールもあります(※)ので、植物を国内に持ち込む際は、その点もご留意いただきたいと思います」

※サボテン、ラン、アロエなど一部の植物はワシントン条約により保護され、税関により持ち込みが制限・禁止されている。悪質な違反ケースでは密輸事案として処罰される。

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