【初めての山小屋経営】光岳小屋の新米女性小屋番に聞く「1年目と2年目」こんなことしてました<後編>

お客さんにはいつもパワーをもらってます(撮影:小宮山花)

今シーズンの営業について。

引き続き、まだまだお話しできることは少ないのですが、予約開始は昨年同様の時期にスタートできるよう準備中です。WEB予約を始めて2年目。より予約をとりやすく、わかりやすくするにはどういう方法があるだろうかと何度もページを見直しています。

昨年は、二重三重予約に本当に悩まされました……。気持ちはわからんでもないけども。

当日到着されないので心配の一報を入れると、「あれ? 今日でしたっけ? キャンセルし忘れてました」となったり。複数日予約して、予約した日がわからなくなっている…… なんてうっかりさんもいらっしゃいました。今週来た人が来週も予約済みだったりして、結局、当日に空きが出ることが多かったです。

天気のこともあるので仕方がないのかもしれませんが、なんとかならないかな〜。

こう言葉にすると、お客さんからヒントをもらうこともある。当日出発前に「予約当日のご案内メール」が届いていたけど、「2、3日前にメールを送るのはどう?」という提案をいただけたり。

なるほど! 今年はやってみよう。

■ウェルカムドリンクを用意したい!

初年度の「こんなことがやりたい!」「喜んで欲しい!」というアイデアのひとつに、「ウェルカムドリンクの提供」があった。

小屋に到着してホッと一息ついてほしいという想いからはじまったこの企画。南アルプスの美味しい水と、静岡川根本町の川根茶にちょっとしたお茶請けを添えて皆さんに楽しんでほしい、と思ったのだ。

暑い時は水出しの緑茶を用意していたけれど、光岳の夏らしい夏はほんの一週間程度で本当に短い。ひんやりしてきたり、寒くなってくると、その日の気温に合わせてホッとするHOTな緑茶や雨の日なんかはハチミツ紅茶なんて、お客さんの様子やタイミングを見て淹れていた。

■小屋に到着してからの過ごし方は人それぞれ。まずは「ようこそ!」とお迎えしたい

到着してすぐに山頂へ向かう方もいる。登山靴を履いたままひと息入れる方もいれば、まずは荷物を整理してから食堂で寛ぐ人もいる。

お茶の提供時間を決めたり、お好きにどうぞのフリードリンク制にすることもできるけど、私は皆さんを「ようこそ!」とお迎えしたい。少々暑苦しいかもしれないが、前のめり気味でお迎えさせて欲しい。ウェルカムドリンクの欲しいタイミングは人それぞれなので、始めてみると思った以上に神経を使った。でも、ホッとひと息入れているよいお顔が見れるのは嬉しく、喜んでくれる笑顔が励みにもなった。私たちの気持ちをお茶を通して伝えることができた。それが自己満足だとしても。

■山も人も十人十色

食堂からの富士山を眺めながら。お茶が沁みます

いろいろと取り組んでみたが、お客さんのためとはいえ、自分たちが楽しくないと続かないものだということがよくわかった。

ある日、「え、これがウェルカムドリンク?」と首を傾げながら飲むお客さんがいて、なんだか、やってきたことを否定されたように感じてしまった。これは私の独りよがりなのだろうか?

そうしたお客さんは全体で見たらごく一部のはずだけれど、まだまだ私は自分に余裕がない。ちっぽけな嫌なことに足を引っ張られて、気持ちをうまく消化できなくなってしまう。

そんな時は小屋から一人で離れ、ハイマツの波に向かって「わああああ〜」と腹から声を出したりした。35歳にもなって、こんなことをしている自分が恥ずかしいのですが……。

せっかくやりたいと決めたことなのに、少々嫌な思いをしたから「やめてやる!」と短気にならず、どうしたらブレずに続けられるか。一番は私たち迎える側が、人に出会えることの面白さや楽しさを感じ続けられないと、良い「ようこそ!」が提供できない。楽しさは伝染するから。

■やっていて良かったと思える瞬間

もちろん嬉しいこともたくさんあった。1年目に来てくれたお客さんが、「久しぶり〜。きたよ〜」とお友達と一緒に遥々また会いに来てくれたり。

こんなに、とてつもなく嬉しさが込み上げるような気持ちってなかなか味わえない。ただでさえ遠い山に、2年連続で来てくれる。年に1回の「元気だった?」の会話が山の上でできるなんてね。

これから山小屋の未来に、どのくらいの心が踊るような出会いが待ち受けているのだろう。今年もワクワクしながらちゃんと胸を張ってお迎えできるように準備を進めるぞ! ウェルカムドリンクも形を変えても提供する!

3年目の営業を直前に控えた今、昨年を振り返りつつ今年の山を思いながら、そんなことを毎日考えている。ちょっとだけ気になるような、小さな出来事でクヨクヨしていても仕方がない。「これはどうだろう?」「あれをしてみたら?」となんでも挑戦してみるのが吉なはずだから、今年も張り切ってやっていくぞ〜。

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