地震で損壊の九寨溝風景区、専門家の「治療」で復活 中国四川省

地震で損壊の九寨溝風景区、専門家の「治療」で復活 中国四川省

研究チームを率いて九寨溝で硬質人工景観物(ハードスケープ)修復に用いる土の配合を指導する成都理工大学の裴向軍教授。(2020年撮影、成都=新華社記者/劉坤)

 【新華社成都5月5日】中国四川省アバ・チベット族チャン族自治州九寨溝県で2017年8月8日に発生したマグニチュード(M)7.0の地震では、同県九寨溝風景区の景観も大きなダメージを受けた。約7年がたち、傷だらけだった九寨溝はかつての壮観を取り戻している。その過程では、同省成都理工大学の裴向軍(はい・こうぐん)教授のチームによる、世界自然遺産の保護と修復のための実践的な模索が大きな役割を果たした。

地震で損壊の九寨溝風景区、専門家の「治療」で復活 中国四川省

上:2018年、決壊により水が干上がり、水域が黄色く変化した九寨溝の観光名所、火花海。

下:2023年、修復後の九寨溝の火花海。(組み合わせ写真、成都=新華社記者/劉坤)

 裴氏のチームは地震発生後、九寨溝の被害地域に何度も入り、実地調査や科学的検証を繰り返した。裴氏は「われわれの地質環境修復における第一義は『自然に学ぶ』ことだ。世界自然遺産の保全と修復に用いる材料や手法、技術はすべて生態系や環境に優しいものでなければならない」と語る。

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成都理工大学で、研究開発した光熱駆動による空気製水材料とその応用模型を紹介する裴向軍教授(中央)と研究チームのメンバー。(4月20日撮影、成都=新華社記者/劉坤)

 九寨溝の修復・再建を進める過程では例えば、もち米を原材料とした「もち米モルタル」を堰(せき)作りや郷土植物の修復に活用した。学際的な技術を支えに、生態系に優しい有機材料を加えることで、水中で凝固しない、凍結融解で剥がれ落ちるなどの弱点を克服した。分散的で広範囲にわたる斜面の被災や土壌流出といった問題に対しては「浸透阻止-植生-バイオロジカルソイルクラスト(BSC、土壌微生物によるコロニーシート形成)」という自然に近い修復技術を打ち出し、光や熱で駆動するエコロジー集水材料なども開発、生態系の自己適応・維持能力を向上させた。(記者/劉坤)

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成都理工大学の生態環境学院教育実践基地で、鉢植えを使った鉱山の生態修復実験について議論する裴向軍教授(左から4人目)と研究チームのメンバー。(4月20日撮影、成都=新華社記者/劉坤)

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成都理工大学で、研究チームのメンバーと記念撮影をする裴向軍教授(中央)。(4月20日撮影、成都=新華社記者/劉坤)

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成都理工大学生態環境学院教育実践基地で、退化した芝を利用して育てた植生ブロックを見せる裴向軍教授(中央)と研究チームのメンバー。(4月20日撮影、成都=新華社記者/劉坤)

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成都理工大学生態環境学院教育実践基地で、地下水位変化による植被生態への影響のシミュレーション実験について話し合う裴向軍教授(右から2人目)と研究チームのメンバー。(4月20日撮影、成都=新華社記者/劉坤) 

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成都理工大学生態環境学院教育実践基地で、研究チームが育てた衝撃・洪水防止用軽質植生ブロックを紹介する裴向軍教授。(4月20日撮影、成都=新華社記者/劉坤)

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研究チームを率いて九寨溝の震災後地質災害詳細調査を行う成都理工大学の裴向軍教授(左端)。(2018年撮影、成都=新華社記者/劉坤)

   

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