『アンチヒーロー』吹石一恵が12年前の事件のキーパーソンに? 堀田真由が隠していた秘密

『アンチヒーロー』(TBS系)第4話は不同意性交等罪の事案だった。2023年7月に施行された改正刑法で性犯罪に対する処罰が強化され、同意のない性行為が類型化されるとともに、同意年齢が13歳から16歳に引き上げられ、その他の要件が加わった(以下、第4話のネタバレを含むためご注意ください)。

明墨(長谷川博己)が受任したのは来栖礼二(渡邊圭祐)の不同意性交等事件。来栖が関わった3件のうち、最初の2人について来栖は罪を自白。しかし、唯一、目撃証言のあった絵里(早見あかり)への犯行を来栖は否認した。そこには、警察と被害者の思惑が作用していた。

前話ラストで、明墨は拘置所を訪れた。目的は受刑者との面会。ガラス越しに向き合った志水裕策(緒形直人)は「静かに死にたい」と漏らした。志水は、2012年に起きた会社員一家殺人事件の犯人として有罪判決を受けた。志水は、同僚の糸井とともに会社の金を横領したが、トラブルになって糸井の一家を殺害したとされる。また、事件が起きたのは、明墨が弁護士になる前の検事だった時期と重なる。明墨は、志水の背中越しに「私があなたを必ず無罪にします」と呼びかけた。

清濁併せ吞む本作の主人公は、何を目的にしているのか? 第2話で明墨が手を合わせ、涙を流していた墓石には「REIKO MOMOSE」の名前が刻まれていた。保護犬施設で、紫ノ宮(堀田真由)は明墨の愛犬ミル(ライズ)に似た犬の写真を目にする。ココアと呼ばれるゴールデン・レトリバーの隣で笑っている女性が桃瀬(吹石一恵)だった。

明墨法律事務所にいる3人の弁護士、明墨と赤峰(北村匠海)、紫之宮はパートナーとアソシエイト、あるいはボス弁とイソ弁の関係に見える。赤峰も紫之宮も、仕事上は協力し合って事件解決に当たるところ、互いの腹を探り合うような言動や緊張感が独特だ。独立して個人事業主となる弁護士ならではの関係性ともいえる。将来、法廷で対峙する可能性もあり、仲間でも100%気を許すわけではない。ただし、本作の3人にはそれぞれの事情があった。

第3話で、赤峰が、松永(細田善彦)の事件を再審に持ち込むため明墨の事務所に入り、明墨もそれを承知の上で、赤峰に富田正一郎(田島亮)の事件を担当させたことが明かされた。紫ノ宮も秘密を抱えていた。不同意性交事件で、県警の指揮を執るのは刑事部長の倉田(藤木直人)で、倉田の話が出るたびに、紫ノ宮は気まずそうな表情を浮かべる。父親は警察官であると話していた紫ノ宮だったが……。

なぜ、明墨は宇野(和田聰宏)の弱みを握り、代理人を交代してまで来栖の事件を引き受けたのか。そこでは、志水の事件が鍵を握っているのだが、過去の冤罪の証拠を突き止めるために、明墨が倉田をターゲットにしたのであれば、おそるべき執念ということになる。志水が冤罪であるとして、「開かずの扉」と呼ばれる再審開始決定に持ち込むことは容易ではない。明墨は、虎視眈々と倉田の周辺を探っていたのだろう。紫ノ宮を採用したのも理由があるが、紫ノ宮自身も父の真実を知ろうとしていた。

第2話の舞台挨拶で言及されたように、本作の主要な登場人物には色にちなんだ名前が付けられている。明墨は墨色、赤峰の赤、紫ノ宮の紫、パラリーガルの白木(大島優子)や青山(林泰文)もそうだし、検察の緑川(木村佳乃)、第1話と第2話に登場した緋山(岩田剛典)も当てはまる。桃色の桃瀬は生前、紗耶(近藤華)と近しい関係にあり、桃瀬の死が明墨の動機に影響を及ぼしていると思われる。桃瀬が亡くなったのは2018年で、明墨が検事を辞めたのは5年前である。紫ノ宮の回想で、明墨が倉田宅の玄関先で押し問答していたのは6年前だった。桃瀬と志水のつながりも気になる。引き続き注視したい。

(文=石河コウヘイ)

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