週休3日「各社員に最適な労働時間で」導入企業の利点はシナジー効果?社長に聞いた【広がるか週休3日(下)】

一部の大手企業だけでなく地方自治体にも広がり始めた選択的週休3日は、静岡県内の多くの企業ではまだ、検討もされていないのが実情だ。企業側が柔軟な働き方を取り入れるメリットとは。

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浜松市でこのほど開かれた合同企業説明会を訪ねた。スタッフや企業の担当者と就職活動中の学生がおおよそ半々で、さながら「売り手市場」を物語っていた。

企業の採用担当者に、選択的週休3日の導入を検討しているか尋ねると、大半が「検討していない」と答えた。

製造販売業の役員男性は「休日を増やすよりも、たくさん働くから手取り(賃金)を増やしてほしいというニーズの方が高い」とみる。自社の社員の8割は男性。「休みも賃金も増やすという“両建て”ができればいいが、どちらかを選択するなら賃金を優先することになる」

年中無休の店舗を運営する販売業の採用担当の男性は「従業員の休みを増やそうとすれば、その間に働いてくれる人を採用しなければいけない。採用コストを考えると、すぐに導入はできない」と話す。

ただ、学生がワークライフバランスを重視する傾向があることも実感しているという。「働き方を時代に合わせていく企業努力は必要。より柔軟な働き方を検討する時は間違いなく来ると思う」と付け加えた。

限られた人材で利益を追求する地場の企業にとって、社員の休日を増やすことへのハードルは高い。一方、説明会に参加した就職活動中の学生は、選択的週休3日に関心を寄せていた。

浜松市の男子大学生(21)は就職先を選ぶとき、「働きがいがあるかどうか」に加えて「年間120日以上の休日があること」を重視しているという。「週休3日には興味がある。そういう企業があったら調べて(話を聞きに)行ってみたい」と話した。

「次々に人材を供給できる時代ではなくなった。週に40時間働けるなら社員、働けないならパート従業員という区分けは無意味」。そう指摘するのは、企業や団体の働き方改革を支援している株式会社週休3日(浜松市中央区)の永井宏明社長。「人それぞれに最適な労働時間がある。ちょうどいい時間で働く方が仕事に集中しやすく、不要なストレスも下がる。結果的に職場の生産性を高める」として、柔軟な働き方を望む人と、それに応じる企業のマッチングにも取り組んでいる。

同社は社員に、週休3日はもちろん、週休4日の勤務も認めている。まだ「4日」を選択する社員はいないが、狙いは「社員の社外での活動と社業のシナジー(相乗)効果」。

週休3日や週休4日なら、社員は会社に在籍したまま、さまざまな挑戦ができる。育児や介護だけでなく、副業や学び直し、ボランティア活動、起業も両立しやすい。「1か0かと二者択一を迫らない。挑戦を諦めてほしくない」

社外での、あらゆる挑戦で培われた能力が、社業に還元されると期待する。「挑戦をいとわない人材は退社したとしても、我々のビジネスパートナーであり続ける」

永井社長によると、人口減少社会では、地域でも家庭でも、1人が何役もこなすことがますます当たり前になっていく。「会社と社員の良い関係の中で、社員の生活に応じて働く時間を可変する仕組みづくりは、会社だけでなく社会全体にプラスになる」と強調する。

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