【福島駅東口再開発】施設全般の方向性を(5月6日)

 福島市のJR福島駅東口駅前再開発事業は規模縮小など計画変更が相次ぎ、事業者は集客の柱に位置付けたホテルの誘致を断念した。連携して事業を進める市は、通年議会6月会議に活用案を諮るとしている。実現可能性を見極め、中心市街地活性化に資する施設全体の方向性を改めて明示するよう求めたい。

 駅前再開発ビルは「権利者」「公共」「住宅」「駐車場」の各棟からなる。再開発組合と市は先の市議会全員協議会で、権利者棟へのホテル誘致を断念したと明らかにした。資材高騰などを背景に、賃料交渉がまとまらなかったという。これにより、権利者棟は当初予定の12階から10階程度に縮小される。権利者棟には飲食店などの入居が計画されているだけに、集客力低下によるテナント誘致への影響が懸念されている。

 全員協議会で木幡浩市長は、福島駅前に民間投資を呼び込む魅力が乏しくなっているとの認識を示した。ホテル誘致の断念は、さらなる規模縮小の呼び水になりかねない。市は再開発事業の成否を左右する正念場と受け止め、対応に当たるべきだ。

 市と組合が先月示した権利者、公共両棟の活用案には、多様な規模の会議・セミナー、物産展の開催、起業や新事業創出の支援施設の開設などが盛り込まれている。JR福島駅西口のコラッセふくしまが既に同様の機能を備えている点を踏まえれば、どのようにすみ分け、相乗効果を高めるかといった視点も求められるだろう。

 音楽ライブや屋内スポーツイベント、演劇利用なども想定されている。対応するには、器材購入の新たな財源確保を迫られる。スポーツイベントなどは、市内の他の施設でも開催できる。県都の玄関口にふさわしい特色ある施設の在り方全般の検討も必要ではないか。

 市の「風格ある県都を目指すまちづくり構想」は、駅東西自由通路の新設を掲げている。自転車での往来が可能な通路ができれば、駅をまたいだ人流は一層活発になる。西口で長年営業してきたイトーヨーカドー福島店がきょう6日閉店する。工期が遅れている東口再開発事業を軌道に乗せるとともに、西口活性化に向けた処方箋の提示も急務と言える。(渡部総一郎)

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