強盗やスリ…海外移住した日本人女性が注意喚起 優しい声がけが落とし穴の場合も

イギリスなどの車道際でスマホを使うのは危険【写真:Moyo】

ゴールデンウィークももう終わり、夏に向けて海外旅行を計画し始めている人もいるでしょう。今年の夏は久々の海外という人も少なくないかもしれません。そんなとき、気をつけたいのが犯罪です。ひょんなことからイギリスに移住、就職し、海外在住歴7年を超えたMoyoさんが、外国暮らしのリアルを綴るこの連載。26回目は、ロンドンやパリで流行している犯罪についてです。

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実録、ロンドン事件簿

宅配でのトラブルを以前の回で書きましたが、ロンドンでは何かしらのトラブルに巻き込まれるのが日常茶飯事です。大小の違いはあれど、誰もがひとつやふたつ、エピソードを持っていると思います。

そして悲しいことに、犯罪に巻き込まれやすいことも同様です。それは以前紹介した統計サイト「CrimeRate UK」でわかるように、犯罪発生率の高さからも明らかです。

しかも、旅行者や短期滞在者など、土地に慣れていない雰囲気が出ていたから犯罪に遭うわけではありません。そうした理由は関係なく(多少は関係するかもしれませんが)、ローカルの人でも、どんなに長く住んでいて海外生活に慣れている日本人でも、被害に遭うときは遭います。

流行するスマホ窃盗

スマートフォンは、とにかく狙われやすいアイテムのひとつ。なかでも人気なのは高額のiPhoneで、周知の事実です。

そんななか、イギリスで一時期流行したのが「モペッド窃盗」。モペッド(オートバイやスクーター)に乗ったギャングがすーっと近寄ってきて、メールや電話をしている人からスマホをもぎ取っていく強盗のことです。

狙われた人は車道ギリギリを歩いていたの? と思うかもしれませんが、どこを歩いていようともおかまいなし。歩道の中央付近をしっかり歩いていても、バイクで乗り上げて、ギリギリのところでスマホを奪っていきます。バス停でバスを待っていたら一瞬で持ち去られてしまい、その場にいた人全員が、何が起きたかわからなかったというケースも。

巻き込まれてけがをする人が出ているのはもちろん、標的を油断させようと酸をかけて大やけどを負わせる悪質な事件も起きました。

当たり前のように行われているスリや盗難

海外旅行で必ずといってもいいほどみなさんが注意するのは、スリではないでしょうか。それは居住者でも同じ。前述のスマホはもちろん、財布などの貴重品やバッグは、とにかくどこにいようとも常に肌身離さず、しっかり持っていることが大切です。私もよくスマホだけをポケットに入れていましたが、ポケットに手を突っ込んでスられていないか確認しながら歩いていました。

ロンドンでは、パブやカフェ、レストランなどのテラス席でお酒を飲んだり、食事したりするのが人気。とくに春夏の、久しぶりに晴れた気持ちのいい日にパブで一杯なんてときは要注意。気がゆるんでテーブルの上にスマホをぽんっと置くと、ちょっと目を離した隙に盗られてしまいます。

ショッピング中もいうまでもありません。友人は、いつものようにスマホをポケットに入れて洋服の買い物をしていたら、気づかないうちにスられてしまいました。しかし、幸いなことに彼女のスマホはかなり古いモデルだったため犯人も転売できないと諦めたのか、まったく関係ない洋服の山の下に隠されていたそうです。

また、ロンドンだけでなく、フランスではパリもスリの温床になっていることで有名です。とくに被害が多くて有名なのは、メトロかもしれません。車内でぴったりとくっついてくる怪しい人物はもちろんですが、ティーンエイジャーなどの集団に囲まれることもあるので気をつけてください。

大きなスーツケースでも油断は禁物。駅で、親切なふりをして犯罪者が近づいてくることも…【写真:Moyo】

親切かと思いきやスリの場合も

狙っているような雰囲気がまったくなくても、甘く見てはいけません。友人はスーツケースを持ってパリを旅行中、早朝のメトロの階段付近で男性から優しい口調で「手伝いましょうか?」と声をかけられたといいます。

ちなみに、パリのメトロはエレベーターやエスカレーターが整備されていないため、大荷物の人は移動が大変になります。親切心から、荷物を一緒に運ぼうと声をかけてくれる人がいるのも確かです。

信頼しそうになりましたが、危機察知能力が働き「結構です」と断った彼女。すると、その男性が無理やりスーツケースをひったくろうとしたそう。とっさにスーツケースを引っ張り返しましたが、今度はなんと、隠し持っていたケチャップをコートにかけてきたのです。

予期しない突然のことで、これには彼女もびっくり。ですが、大きな声を出して攻防したおかげで犯人は逃げ去ったといいます。私はそのあと彼女に会い、コートの被害を目の当たりにしました。気丈に振る舞っていましたが、その恐怖は筆舌に尽くしがたいものです。

このようなケースはまれかもしれませんが、“嘘みたいな本当の話”があふれているのがロンドンやパリの実態です。駅構内の案内でも、日本語をはじめ、さまざまな言語で「スリに気をつけてください」と頻繁に流れています。どんなときも警戒心をゆるめず、自分の身を守るために気をつけてください。

Moyo(モヨ)
新卒採用で日本の出版社に入社するも、心身ともに疲弊し20代後半にノープランで退職。それまでの海外経験は数度の旅行程度だったが、イギリスへ語学留学ののち移住した。そのまま、あれよあれよと7年の月日が経ち、現在はフランスに在住。ライター、エディター、翻訳家、コンサルタントとして活動している。最近ようやくチーズのおいしさに少し目覚める。

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