【特集】「今から心臓マッサージのやり方を言うので、やってください!」“命の最前線”「消防管制室」で奮闘する『通信指令員』 中には救急車の出動を断らなければいけない場面も…求められる“集中力”と“判断力” SOSに応える24時間に密着

【緊迫の現場を動画で】119番の向こう側 SOSに応える通信指令員 神戸市消防局の消防管制室で命の砦として奮闘する姿に密着!

365日・24時間体制で119番通報を一手に担うのが、『消防管制室』です。一日に約370件寄せられる通報に対応する『通信指令員』に求められるのは、素早く状況を把握する“集中力”と、状況に応じて的確な指示を出す“判断力”。命の最前線で、街の人からのSOSに応える彼らの奮闘を取材しました。

「対応のしかた次第で、患者の様相が変わる」命の最前線・消防管制室で奮闘する45人の通信指令員たち 求められるのは、集中力・判断力・緊張感 「操作ミスは命取り」

ここは、“命の砦”―。365日24時間体制で119番通報に対応し、救急車・消防車に出動の指示をする『消防管制室』です。

(通信指令員・薮内生也さん)

「対応のしかた次第で、その後の患者の様相が全く変わってくるので、『人を助ける』という意味で“最前線”だと思います」

神戸市消防局・消防管制室では、45人の通信指令員が交代で勤務しています。

(通信指令員)

「何と何の交通事故?」

-(通報者)

-「車に、軽乗用車が突っ込んだ」

(通信指令員)

「救急車が向かっている上で、ケガ人の方、意識ありますか?」

-(通報者)

-「大丈夫です」

(通信指令員)

「本人さんに『どこが一番痛い?』と聞いて、すぐに教えてください」

-(通報者)

-「どこ痛いですか?胸?胸です」

-(通報者)

-「ケガはわからないんですけれど、口から泡を吹いて」

(通信指令員・小西美緒さん)

「今おられる場所を、まず教えてほしいです。現場ですか?」

-(通報者)

-「現場です」

(小西さん)

「倒れておられる方は、男性・女性どちらですか?」

-(通報者)

-「男児、男の子」

(小西さん)

「何歳ぐらいですか?」

-(通報者)

-「10歳前後」

(小西さん)

「ケガされています?」

-(通報者)

-「外傷は見えませんが、全く喋れない。おう吐、おう吐おう吐」

(小西さん)

「今、板宿の車(救急車)をそちらに出しましたんで」

通報を受けた指令員は、患者がいる住所がわかり次第、現場に一番近い救急車を向かわせます。さらに、患者の容体を詳しく聞き取り、その情報を救急隊に送ります。

(小西さん)

「119番、神戸消防です」

-(通報者)

-「父親が6時ごろ急に、座っていてゴロンと倒れて」

(小西さん)

「お年は、おいくつの方?」

-(通報者)

-「78歳です」

(小西さん)

「意識ありますか?」

-(通報者・女性)

-「全くないです」

(小西さん)

「呼吸もなさそう?」

-(通報者)

-「呼吸もなしです」

(小西さん)

「今、救急車2台、そちらのほうに向かわせましたので。今から心臓マッサージのやり方を言うので、やってください」

指令員は皆、消防隊や救急隊として現場に立った経験があります。命に危険があると判断したときには、救急車が到着するまでの間、通報者に対して応急手当てをお願いするケースも。

(小西さん)

「あなたの両方の手の付け根あたりを重ねていただいて、患者さんの胸と胸の真ん中に、そのまま押し当ててください。上から垂直に、手は突っ張った状態。深さは5センチ。リズムを言います、1・2・1・2・1・2、まず声を出して30回やってもらっていいですか?どうぞ」

この処置が、患者の予後を大きく左右することも…。

-(通報者)

-「1・2・1・2・1・2」

(小西さん)

「それぐらいのペースで、1・2・1・2!心臓マッサージは止めないように、やっておいてもらってもいいですか?」

-(通報者)

-「はい!」

指令員には、通報内容から患者が置かれた状況を読み取り、素早く判断することが求められます。

(小西さん)

「選手交代します」

常に緊張感と集中力が求められるため、原則1時間から1時間半で交代する決まりです。

(通信指令員・飯田明さん)

「朝5時から作ってきました(笑)」

(小西さん)

「タケノコ入り?」

(飯田さん)

「タケノコとコンニャク入り!」

(小西さん)

「1時間指令台についたら、みんな結構、頭がヘロヘロです」

(飯田さん)

「自分の気持ちを盛り上げてから指令台に座らないと、操作ミスは命取りになるので」

消防管制室への通報は、一日に約370件。中には、救急車の出動を断らなければいけない場合もあります。

(飯田さん)

「こけたのは、あなた?」

-(通報者)

-「そうです」

(飯田さん)

「どこも痛くない?」

-(通報者)

-「どこも痛くない」

(飯田さん)

「病院に行く意思はある?」

-(通報者)

-「行く気ない」

(飯田さん)

「行く気ないの…?どうしても病院に行きたくない?」

-(通報者)

-「起こしてもらわないと、仕方ない」

(飯田さん)

「ごめんなさい。起こしてもらうというだけでは、なかなか救急車は出せないんです。近所の方とか…」

-(通報者)

-「なら、よろしい!」

(飯田さん)

「よろしいの?」

-(通報者)

-「はい、もう仕方ない」

救急車を呼ぶべきかどうか、通報者自身が判断できないこともあります。限りある救急車を有効に使い、一人でも多くの命を救うため、神戸市消防局では、医師や看護師にアドバイスを求められる『救急安心センター』の利用を呼びかけています。

「みんなに助けてもらっている―そんな42年間です」通信司令官として20年以上キャリアを積み…消防管制室の“ムードメーカー”、夢は『木のおもちゃ屋さん』

神戸市消防局で指令員として20年以上のキャリアを持つ、薮内生也さん(60)。

(薮内さん)

「はい119番、神戸消防です。救急車ですか?火事ですか?」

時には通報者に適切な処置を指示、時には気が動転している家族を落ち着かせる…正に、この道の『スペシャリスト』です。

(薮内さん)

「具合が悪いのは、あなた本人ですか?」

-(通報者)

-「子どもで、2歳です」

(薮内さん)

「男の子?女の子?」

-(通報者)

-「女の子です」

(薮内さん)

「今、どんな症状でしょうか?」

-(通報者)

-「熱が出て、けいれんしています」

(薮内さん)

「けいれんは何分ぐらい続いています?」

-(通報者)

-「5分ぐらいです」

(薮内さん)

「今も続いています?」

-(通報者)

-「はい」

(薮内さん)

「救急車を今、この時点で出動させました。体を冷やすことを何かしていますか?」

-(通報者)

-「していないです」

(薮内さん)

「大至急、水と氷をビニール袋に入れて、氷のうを作りましょう。タオルを1枚当てて、子どもさんの首筋と脇の下、足の付け根の辺りに2つぐらい置きましょう。電話を切らずに、今やりましょう」

-(通報者)

-「はい!はい!」

(薮内さん)

「けいれん、まだ続いていますか?」

-(通報者)

-「まだ続いています。あっ、今(けいれんが)終わりました」

(薮内さん)

「今、終わりました?もう救急車がマンションの下に着きましたから、そのまま体を冷やしながら待っていてください」

(薮内さん)

「具合が悪いのは、どなたになりますか?」

-(通報者)

-「奥さんが帰ってきたら、風呂場で倒れていて。恐らく亡くなっていると思うんですけど」

(薮内さん)

「倒れているのは、奥さん?」

-(通報者)

-「ご主人です」

(薮内さん)

「顔面は浴槽の中に浸かっていますか?」

-(通報者)

-「浴槽ではなく、外ですね。洗い場の所です」

(薮内さん)

「体を触ってみて、冷たくなったりしていますか?」

-(通報者)

-「もう冷たいですね、体は」

(薮内さん)

「奥さんに代わっていただくことできますか?」

-(通報者)

-「ちょっと待ってください。代われます?」

-(患者の妻)

-「すみません」

(薮内さん)

「救急車を今、出発させています」

-(患者の妻)

-「おっちゃん(夫)冷たいねんで、もう!」

(薮内さん)

「もしもし、奥さん落ち着いて。お話を聞かせてください。何時ごろにお風呂に入られたか、わかります?」

-(患者の妻)

-「私が家を出たのが6時」

(薮内さん)

「朝の6時?」

-(患者の妻)

-「6時20分ぐらいに家を出たんです」

(薮内さん)

「じゃあ、その後やね?」

(消防司令長・池田浩之さん)

「消防生活の半分ぐらいを指令官として過ごされていますので、いろんなことを知っていますし、仕事面だけでなく、“ムードメーカー”といいますか雰囲気を良くしてくれる存在なので、非常に助かっています」

Q.この後は、どうされるんですか?

(薮内さん)

「この後は仮眠をして、0時45分から4時まで、またここで勤務をして。仮眠時間帯に大きな災害がなかったら、その状態で。あったら、大きな音が鳴って起こされて、駆けつけて、やります」

緊張感と集中力が求められる生活も、まもなく終わり。薮内さんは、あと半月ほどで定年退職することが決まっているのです。

木工細工が趣味の薮内さんには、定年後にやりたいことが―。

(薮内さん)

「木のおもちゃ屋さんです。こんな感じ」

(カメラマン)

「おっ、カメラ!すごい」

(薮内さん)

「思いがけないものを作って、思いがけない顔をしているのを見ることが楽しい(笑)」

中学生の時から続けている木工細工が、仕事を忘れられる束の間の時間。腕前は相当なもので、ツーリングができる木製の自転車までも作ってしまうほど。

薮内さんは高校を卒業してすぐ、希望していた消防局に配属。その後、消防隊や救急隊員として様々な現場を経験する中で、阪神・淡路大震災のすさまじい現場もくぐり抜けてきました。

(薮内さん)

「自分の思った通りに人を助けられなかったことが、すごくたくさんあります。心もへこたれるときがありますから、大勢の仲間に助けてもらった。自分は人を助けるけど、みんなに助けてもらっていた―そんな42年間です」

鳴り止まないSOSと真摯に向き合い、命を助ける『消防管制室』 ここは、“命の砦”であり、“命を救う最前線”―

-(通報者)

-「コンビニの前におっちゃんが倒れていて。お酒を飲んでいるのかな。酔っぱらっているのかもわからへんけど、『複雑骨折や』と言って倒れているんです」

(通信指令員)

「お兄さんに、ケガをしているのか確認してもらえますか?」

-(通報者)

-「『複雑骨折や』と言ってます」

(通信指令員)

「もう一回、確認して。酔っぱらっていたら、違うことを言うかもわからないから」

-(通報者)

-「お兄さん、足、大丈夫?今は大丈夫?『大丈夫』と言っています」

(薮内さん)

「はい119番、神戸消防です。救急車ですか?火事ですか?」

この日の夜も、通報のコールが鳴り止むことはありません。

(薮内さん)

「男性・女性、どちらでしょう?」

-(通報者)

-「女性です」

(薮内さん)

「一番、今ツラい症状は何ですか?」

-(通報者)

-「もう意識がボーッとされていまして」

(薮内さん)

「その方、年齢は何歳?」

-(通報者)

-「80歳です」

(薮内さん)

「今、救急車を出動させたんですけど、まず患者さんに呼びかけて、目を開けるか試してください」

-(通報者)

-「目を開けられません」

(薮内さん)

「じゃあ、意識が全くないです。下あごを動かしながら、口を開けたり閉めたりするような、そんな口の動き・あごの動きはありますか?」

-(通報者)

-「あごの動きはありますね」

(薮内さん)

「念のために心臓マッサージをしましょう。心臓が止まりかけのときに、そういう動きがありますから。一回やってみて、嫌がる仕草があれば、やめたらいいです。今、とりあえず30回、やってみてもらえますか?」

-(通報者)

-「1・2・3・4・5・6・7・8…」

(薮内さん)

「どうですか?痛がるような顔つきがありますか?」

-(通報者)

-「それは、ないです」

(薮内さん)

「なかったら続けてください。生きている方にやってもかまいませんから、今は。救急隊が1分で建物の下に着きます。救急隊が横に来るまで、続けておいてください」

(飯田さん)

「今、顔色はどう?」

-(通報者・母親)

-「顔色は赤いです。泡を吹いています」

(飯田さん)

「泡?泡を吹いている⁉泡を吹いているなら、体を横向けにして。救急車が向かっているから」

-(通報者・母親)

-「わかった」

(飯田さん)

「お母さんが慌てたら、お子さんがもっともっと不安になるから」

-(通報者・母親)

-「わかった、わかりました」

(飯田さん)

「足裏をボリボリかいても、嫌がらないね?」

-(通報者・母親)

-「嫌がらないです」

(飯田さん)

「横向けに、もう一回しよう」

-(通報者・母親)

-「横向け、はい…あ、何か言いました」

(飯田さん)

「声が出た?」

-(通報者・母親)

-「はい、出ました」

(飯田さん)

「声が出たね。OK、OK」

-(通報者・母親)

-「あっ、ちょっと嫌がりました」

(飯田さん)

「足を嫌がった?」

-(通報者・母親)

-「少し。左も嫌がった!」

(飯田さん)

「今ね、ちょっとずつだけど良くなっていっている状態だから。どちらにしても、救急隊に診てもらおう」

『消防管制室』―ここは、命を救う最前線。今日も、“助けを求める声”に応え続けています。

(「かんさい情報ネットten.」2024年3月18日放送)

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