週末で総額2万円超もザラにあるゴルフの料金は適正か? ゴルフ場の収入と支出を調べてみたら意外なことが分かった

イラスト・野村タケオ(撮影:GettyImages)

「ゴルフ場って儲かると思っている人が多いけど、実際は大変なんです」と語るのは、熊本県の中九州カントリークラブ前社長の田中徳市氏。令和4年は3万人の入場者があった同コースだが、当初は月3000人ペースで年間3万6000人の来場を見込んでいた。目標を6000人も下回った原因は、九州地方に長々と居座った雨雲。「線状降水帯が発生することもあって、夏場の悪天候続きが響いた」と振り返る。

天候に左右されるのはゴルフ場の宿命だが、昨今のネット予約も諸刃の剣だという。手軽に予約ができる反面、直前のキャンセルにゴルファー側の抵抗感がなくなった。「キャンセル料までは取れないし、取る方法もない」という声は、多くのゴルフ場支配人から聞かれる。
 
中九州CCに話を戻そう。同コースの場合、約1300人いるメンバーの「年会費はゼロ」。「バブルの頃に、この辺りのゴルフ場は、年会費をタダにした」ため収入は「プレー代が全体の9割」に達するという。残りの1割は「名義書換料や競技料、売店の売り上げ」などとなる。
 
令和4年の総収入は、約2億円だったが、その内訳は完全にプレー代頼みの収益構造になっていたという。
 
「確かに年会費をある程度いただければ赤字にはならなかったかもしれません。ただ一度撤廃したものを復活させるのはややこしい話。プレー代を上げていくしかない状況ではありましたね。ほかのコースもそうでしょうが、値上げそのものについてはゴルファー側も許容してくれる感じはありました」
 
一方で、ゴルフ場の支出にはどんなものがあるのだろう。大きくは3部門に分かれる。人件費、光熱費、そしてコース管理費だ。中九州CCの場合、昨年の総支出は2億2000万円に上った。その中で最も大きな割合を占めるのは、やはり給与なども含めた人件費だ。全体の46%を占める。社員は総勢20人で、あとはアルバイト。
 
人員の内訳は「コース管理で10人。キャディマスター室で4〜5人。フロント業務で3人。内勤が2人です。あとはキャディ、食堂、清掃業務はアルバイトでお願いしている状況です。そういえば先日、別のコースでグリーンを刈っている女性スタッフを見ました。今後はコース管理業務への女性の進出も進むでしょうね」(田中氏)。雇用形態も変わる中で、ご多分に漏れず人材確保にも苦労しているという。
 
人件費に続くのは、実は光熱費。ゴルファーにとってプレー後の入浴は楽しみの一つ。夏場は汗を流すため、冬場は冷え切った体を温めるために必要と感じるゴルファーは多い。しかしロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー価格の高騰はゴルフ場の経営も圧迫する原因になっている。大浴場のボイラーに使用する重油の値段や、クラブハウスの冷暖房費や照明の電気代の値上がりは深刻だという。中九州CCの場合も、支出全体の26%を占める。
 
3番目はコース管理費。ゴルフ場の整備は、ゴルファーの評価に直結するだけに、手を抜けない分野でもある。中九州の場合は全体の10%程度だが、これまで「赤字を出すことは分かっていても、内部留保を切り崩してやってきた。フェアウェイにいい肥料を入れて、乗用カートの乗り入れができるように整備した。これでカートにGPSナビが付けば、もっと良くなると思う。やはりそういう投資をしないと安定し
た集客はできない」(田中氏)という。
 
セルフプレーが多くなり、乗用カートのGPSナビが当たり前になった今、それに対応したナビの導入や、ガソリンカートから電動カートへの切り替えなどが必要になる。電磁誘導から自走式カートへの転換など、コース整備にも直結するコース修繕事業に伴う支出も、収益に直結する課題となる。
 
長期的な整備計画に伴う支出もあるなかで、2000万円の赤字となった中九州CC。ゴルフ場が「楽な商売ではない」ことを、この数字が如実に物語っているのではないだろうか。
 
取材・文/日本ゴルフジャーナリスト協会会長・小川朗
 
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