芸能事務所の倒産、過去5年で最多 SNS台頭で新人発掘も困難に

国内最大級の企業情報データベースを保有する株式会社帝国データバンクが、芸能プロダクションの倒産発生状況について調査・分析を行った結果を公開した。

これによると、2023年の芸能プロダクションの倒産は、過去5年で最多になっている。

VRアイドルグループ・えのぐ所属の事務所などが倒産

帝国データバンクが調査・分析を行ったのは、芸能人やタレントのマネジメントなどを行う芸能プロダクションの、「負債1000万円以上の法的整理による倒産」について。

2023年は合計12件発生しており、2022年(4件)の3倍に増加した。12件の倒産は過去5年間で最多となる。

具体例を挙げると、VRアイドルグループ・えのぐなどが所属していた岩本町芸能社(千代田区)が、2024年3月をもっての廃業を発表。大東駿介さんらが所属していたA.L.C.Atlantis(港区)など有名事務所も破産している。

なお、VRアイドルグループ・えのぐは事務所の廃業発表に伴い、2023年12月31日をもって退所・独立。新たに設立した合同会社(後にえのぐ合同会社と命名)にグループのすべての権利を移し、現在も活動中。

大東駿介さんのBLUE LABEL移籍など、元A.L.C.Atlantis所属タレントも新たな事務所で活動している者は多い。

壇蜜、吉岡里帆の所属事務所も2024年に破産・休業

2024年に入っても芸能プロダクションの苦境は続き、タレントの壇蜜さんが所属するフィット(渋谷区)が破産。

女優の吉岡里帆さんらが所属するエー・チーム(港区)が休業を発表(吉岡里帆さんはフラームへ移籍)するなど、芸能プロダクションの行き詰まりが表面化している。

近年はテレビ局の制作費削減に伴う出演料の減少や、番組の整理・終了といった状況の変化が大きい。さらに、SNSの台頭でYouTuberやインフルエンサーとして活動する個人も増え、芸能プロダクションが従来得意としてきた新人タレントの発掘も難しくなっている。

こうした逆風の中で、所属タレントの独立、創業者の死去・体調不良といった社内事情が加わり、倒産や廃業に至る芸能プロダクションが目立っている。

一方で、芸能プロダクションはファンクラブの運営や出演番組との交渉など、多忙なタレントの活動をマネジメントするだけに留まらず、トラブル対応等の役目もあり、その存在意義は大きい。

プロダクションに所属するメリットをタレントにどうアピールできるか、今あらためて芸能プロ各社の手腕が問われているというのが、帝国データバンクの見立てだ。

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